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『ガンダム』まだだ、たかがア・バオア・クーが落ちただけだ! とはならなかったワケ

マグミクス / 2024年12月31日 23時45分

『ガンダム』まだだ、たかがア・バオア・クーが落ちただけだ! とはならなかったワケ

■「ア・バオア・クー」陥落からジオンが降伏した、必然と偶然

 アニメ『機動戦士ガンダム』の最終決戦は、宇宙要塞「ア・バオア・クー」で「地球連邦」と「ジオン公国」が激突し、ア・バオア・クーを失ったジオンが降伏しました。この時、ジオンには月面都市「グラナダ」と無傷の本国が残っていましたが、それでも負けを認めています。ア・バオア・クーの陥落は、そこまで決定打だったのでしょうか。

 ジオンの本土であるスペースコロニー群「サイド3」は、地球から見ると月を挟んだ反対側にあります。月の裏にグラナダがあり、ジオン本土の近くをア・バオア・クーが巡っている、という位置関係です。大都市グラナダと、一大軍事拠点たる要塞ア・バオア・クー、ふたつの関門がジオンを守っていました。

 グラナダとア・バオア・クーのどちらを攻めるかは、地球連邦も頭を悩ませたようで、最終決戦たる「星一号作戦」が始まるギリギリまで情報は伏せられます。

 ここで、地球連邦はなぜグラナダを攻めなかったのでしょう? それは、戦後のことを考えたからではないでしょうか。

 グラナダは歴史が古い大都市で、『機動戦士Zガンダム』で描写されるように多くの人が住みます。戦火に巻き込まれたなら、多大な犠牲が出たでしょう。戦後も地球圏を統治しなければならない地球連邦としては、そのような事態は避けたいはずです。

 もし地球連邦がグラナダ攻めを強行していたなら、家族や仲間を失った市民が恨みで反連邦運動に加担する可能性があります。現在の世界情勢を見ても分かるとおり、都市に潜むテロリストや不満分子はとても厄介です。戦後の反連邦運動はより過激化したかもしれません。

 なおグラナダを防衛する際は、兄「ギレン・ザビ」が妹「キシリア・ザビ」の指揮下に入ることとなります。普段から仲が悪いふたりですから、さらに揉めたことでしょう。

 ここまでは地球連邦がア・バオア・クーを攻略する必然です。

 もうひとつ、地球連邦には大きな偶然が味方してくれました。ジオン公国の指導者「ザビ家」の崩壊です。これは本編中で丁寧に描かれていたため、改めて説明するまでもないでしょう。実に幸運な偶然です。

 ザビ家の崩壊は、一年戦争の責任を押し付けるのに最良のタイミングでした。「オレたちは悪くない、全部ザビ家がやったんだ!」という言い訳は、ジオン国民と地球連邦のみんなが納得いく落としどころといえます。

 我が世の春を謳歌する独裁者から、戦争犯罪人へ。戦後は、教科書でザビ家の人びとが黒塗りされたり、「名前を言ってはいけないあの人たち」扱いされたり、ギレン著「優性人類生存説」やザビ家グッズの回収や闇取引が行われたり、一年戦争ソシャゲでザビ家の人びとの能力が下げられてガチャを引いたジオン国民が暴れたりと、無数の混乱があったのではないでしょうか。

 ア・バオア・クーで「アムロ」は、その優れたニュータイプ能力により「本当の倒すべき相手はザビ家なんだ」と悟り、ザビ家を討伐しようとしています。いち兵士であるアムロにはスケールが大きすぎて不可能だったものの、歴史の偶然はザビ家の人びとを滅ぼし、世界にひと時の平和が訪れました。

 この後に富野由悠季氏が手掛ける「ガンダム」シリーズでは、優れたニュータイプがいくらあがいても歴史を変えられないさまが描かれ続けます。この観点は『機動戦士ガンダム』の時点ですでに盛り込まれていたといっていいのではないでしょうか。

(箭本進一)

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