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『ガンダム』ニュータイプ「シャリア・ブル」の憂鬱 歯車が違えばシャアの副官に?

マグミクス / 2025年1月18日 7時25分

『ガンダム』ニュータイプ「シャリア・ブル」の憂鬱 歯車が違えばシャアの副官に?

■なぜシャリア・ブルは初陣で敗北を喫したのか。

『機動戦士ガンダム』の登場人物のひとり「シャリア・ブル」は、1話しか登場していないゲストキャラクターですが、人によって印象が変わることがあります。それはなぜでしょうか。

 シャリア・ブルは、第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」の1話だけに登場したキャラクターです。木星エネルギー船団の隊長を務めており、危険な任務にもかかわらず何度も無事に帰還したことから「ニュータイプ」の素養を認められました。

 そのため「ギレン・ザビ」のもとから、「キシリア・ザビ」配下のニュータイプ部隊へと送り込まれます。この際にギレンがキリシアのもとへ送る意図を察し、あえてはぐらかすような言い回しで答えました。

 その洞察力はまさにニュータイプのそれで、その後に「シャア・アズナブル」と出会ったときにも発揮されます。シャアの心の奥底を見透かし、あえてそれを口にせず、諭すような言い回しで気持ちを伝えました。

 そのように、ニュータイプとして高いコミュニケーション能力を持ったシャリア・ブルでしたが、戦闘的な能力にはそれほど長けておらず、愛機となったMA(モビルアーマー)「MAN-03 ブラウ・ブロ」の初戦で、地球連邦軍のニュータイプ「アムロ・レイ」の「RX-78 ガンダム」に敗れています。

 このように1話しか出演機会がなく、それほどの活躍のないまま退場したシャリア・ブルながら、ファンから語られることの少なくないキャラクターです。その最大の理由は、ガンダムシリーズ初の「木星帰り」という設定にあるかもしれません。

 後年のガンダムシリーズでは、この木星帰りという言葉は重要な意味を持つことがありました。「パプテマス・シロッコ」といったラスボス級のキャラクターも同じく木星帰りだからです。

 その点から考えると、シャリア・ブルも同じくらいの実力を持ったキャラクターだといえるかもしれません。しかし、そうならなかったのは実直すぎる性格が原因なのでしょう。もしも、相手との交渉術に長けていたならば、対人関係での危険回避も容易かったかもしれません。木星という危険な場所での危機回避には定評があっても、対人関係でそれを生かせなかったことが敗因に直結したのです。

 このことをいみじくも的確に分かっていたのがシャアでした。シャアはシャリア・ブルのことを「彼はギレン様とキシリア様の間で器用に立ち回れぬ自分を知っていた不幸な男だ」と評しています。もっとも、これをシャアが利用していた節もありました。それは初陣の際、ブラウ・ブロ1機で護衛機もつけずに戦場へ出したからです。

 このシャアらしからぬ浅はかな采配で、シャリア・ブルは初戦で帰らぬ人になったともいえるでしょう。つまりシャアはあえてシャリア・ブルを殺したと考えられます。シャアがシャリア・ブルに対して「私はまた友人が増えたようだ」といっていますが、これは「ガルマ・ザビ」と同じ意味だと考えられるのではないでしょうか。

 どうしてシャアがシャリア・ブルを殺さなければならなかったのか。いくつもの考察がファンのあいだでもあります。筆者が考えたのは、シャリア・ブルが実直な性格ゆえにシャアの野心に理がないと思えば、敵となる可能性があるから、というものです。それをシャアは恐れたのではないでしょうか。これはあくまでも筆者の推測です。

 しかし、TVアニメではこうなってしまったシャアとシャリア・ブルが、別の道を歩んだ世界線もありました。

■富野監督と安彦さんで評価が分かれた理由とは…

 シャリア・ブルが歩む可能性のあった世界線、そのひとつが「トミノメモ」と呼ばれるものになります。トミノメモは富野喜幸(現:富野由悠季)監督が書いた、『ガンダム』が52話だった場合のシノプシスです。全43話に短縮されたことで幻となった部分も多々ありました。このトミノメモは36話までほぼTVアニメと変わりません。

 このトミノメモによると、シャリア・ブルは第40話「シャリア・ブル激進」で登場します。この時に搭乗するMS(モビルスーツ)は「ゲルググ」でした。ただしTVアニメとは違い、ブラウ・ブロの原名で、「ララァ・スンが使うものの前期タイプ」と設定されています。

 ここでの運命はほぼTVアニメ版と変わりませんが、シャリア・ブルがシャアの心にあるザビ家への怨念を察知していることが描かれている点、その初陣で「ワッケイン」の「マゼラン」を撃沈している点が異なりました。

 さらに大きく違うのが富野監督の執筆した小説版です。ギレンによってキシリアの動向を探るというスタート地点は一緒ながら、シャアに殺されることなく副官的なポジションとなり、その右腕となってニュータイプ部隊をまとめました。小説版での乗機は「MS-09R リック・ドム」で、最終戦でブラウ・ブロに乗り換えています。

 小説版では、シャアがシャリア・ブルに出会った時にはララァが戦死していたという点が大きく違っていました。それゆえにシャアは信頼を寄せ、シャリア・ブルも心服していたのでしょう。作中では、シャアがシャリア・ブルの前でマスクを外して素顔を見せていました。

 この小説版がベースになっていることもあり、ゲーム「ギレンの野望」シリーズのキャスバル編で、シャリア・ブルはシャアの副官ポジションとして活躍しています。ある意味でTVアニメ版とは真逆の関係といえるかもしれません。

 こういった富野監督の描いたシャリア・ブル像と真逆の位置にあるのが、漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でしょうか。こちらのシャリア・ブルは過剰なまでにプライドが高い、野心的な人物として描かれていました。

 これは『ORIGIN』を描いているのが安彦良和さんだからかもしれません。『ガンダム』のキャラクターデザインとして有名な安彦さんですが、病気によりTVアニメ版は途中で降板しています。その降板した時期に登場したのがシャリア・ブルでした。

 つまり安彦さんにとってシャリア・ブルには思い入れがないわけです。一説によると、劇場版制作の際に富野監督がシャリア・ブルを登場させるか考えた際、「いらない」といったのが安彦さんだとか。

 その真意はともかく、富野監督と安彦さんの抱くシャリア・ブル像はまったく違うものということは確かでしょう。はたしてシャリア・ブルの実像はどんなものだったのでしょうか。たった1話しか登場していないキャラクターであってもいろいろと考察できる。そこが今なお古びない『ガンダム』の大きな魅力なのかもしれません。

(加々美利治)

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