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大不評『着せ恋』ドラマは本当に駄作? 実はある「良アレンジ」と「誤解」とは

マグミクス / 2024年11月26日 20時35分

大不評『着せ恋』ドラマは本当に駄作? 実はある「良アレンジ」と「誤解」とは

■新菜の性格の違いも肯定したい

 2024年11月現在放送中の、実写ドラマ『その着せ替え人形(ビスクドール)は恋をする』には、開始後から多くの酷評が寄せられています。Filmarksドラマでは5点満点で2.5点、Amazonプライムビデオの視聴ページでも5点で2.0点とレビューサイトでのスコアも低く、SNSでは熱心なファンからのダメ出しもたくさん見受けられました。

 原作マンガもアニメも楽しんだ筆者個人としては、実際にドラマを見てみれば「褒められるポイントもたくさんあるじゃないか!」とお世辞抜きで感心できる、切り取られた場面写真だけで判断してほしくはない内容だと思えました(それで誤解を生んでいるところもあります)。

 ただ、それだけに、後述する「肝心の要素」は確かに厳しいものがあり、批判が出るのも当然だと思ったことも事実です。それらの理由を記していきましょう。

※以下からは実写ドラマ版『その着せ替え人形は恋をする』の、第7話までの内容に触れています。

●「役者は悪くない」という肯定的意見はおおむね一致

 否定派からもある程度出ている称賛ポイントの筆頭は、「喜多川海夢(まりん)」役の永瀬莉子さんの存在感および演技です。原作およびアニメからそのまま飛び出してきたような、ポジティブで明るく、推しキャラ(さらには好きなことを自覚した相手)への愛を全力で語る愛らしさが、声のトーンも含めて素晴らしい再現度でした。

 一方で、野村康太さん演じる「五条新菜(わかな)」は、原作よりも後ろ向きな言動が目立つ演技演出とセリフとなった印象で、賛否を呼んでいます。しかし、個人的には後述する改変も含めてちゃんと受け入れられ、野村さんの朴訥(ぼくとつ)とした印象も見ていくうちに好きになりました。SNSでもこのふたりを筆頭に、おおむね「役者は悪くない」という肯定的意見は一致している印象です。

●新菜のより後ろ向きになった言動も悪くない

 新菜の後ろ向きな言動で特に怒りの声が届いたのは、彼がひな人形の仕事ついて「じいちゃんの後を継げるのが俺しかいないんで、まあ仕方なく」と言う場面です。原作とは正反対ともいえるセリフですが、その後にはその発言はうそで、本当にひな人形が大好きだと、ちゃんと海夢に告白する場面がありました。

 新菜が仲良しだった女の子に好きなひな人形を(しかも原作やドラマと違って周りの子供からの焚き付けもあって)「気持ち悪い」と否定されたトラウマがより伝わるので、個人的にはまったく悪くない改変だったと思えたのです。

●「好きなものをもっと知りたいと思う」心理の良アレンジ

 ドラマ化に際してのアレンジで、「いい」と思ったところは他にもあります。第1話のラストでは、海夢がコスプレをしたいと思っているキャラクターが登場するのは「陵辱系のアダルトゲーム」であり、そのゲームを自室のパソコンで検索して絵と文章を見た新菜は、海夢からの「陵辱系とか大丈夫だよね?」という言葉を思い出して「全然大丈夫じゃない……!」と言うのです。

 さらに海夢からの感謝の言葉が綴られたLINEを見て、新菜は「すみません。やっぱり俺には……」とコスプレ衣装を作るのを断ろうと返信しようとするものの、続いての「雫たん超可愛いから絶対ハマるよー笑」「このゲームなにげに泣けるイベント多いんだよ」「だから愛ゆえの性のシモベって感じ」などと言ったゲームおよびキャラへの愛の言葉を立て続けに見て、「ゲームのことはまったく分からない、でも喜多川さんがどれだけ雫たんが好きなのかはわかった」と思い直して「来週ゲーム貸してください」と頼むのです。

 新菜はかつてひな人形が好きなことを否定されたことがトラウマだったものの、好きなことは好きと言っていいと海夢に教えてもらって、だからこそ海夢の好きなものをもっと知りたいと思うようになった……これは原作およびアニメでももちろん描かれていた心理です。しかし、前述したように新菜がより後ろ向きな言動をしていることも手伝って、しっかりその「気持ちが変わった」ことを感動的に示す、良アレンジの実写版のオリジナルシーンになっていたと思います。

■誤解されている部分と批判されても仕方ない部分

ドラマ『その着せ替え人形は恋をする』2話、物議をかもした採寸シーンの場面カット (C)福田晋一/SQUARE ENIX・ドラマ「その着せ替え人形は恋をする」製作委員会・MBS

●「オタクの部屋になっていない」という誤解

 また、単純に誤解を生んでしまったポイントがあります。「海夢の部屋がぜんぜんオタクの部屋になっていない!」とツッコまれた第1話や第3話で映っていたのは、実はリビングルームであり、その後の第6話ではしっかりアダルトゲームのポスターも貼られた、原作マンガを再現した部屋が登場します。

 そのほか、原作およびアニメでのラブホテルでコスプレをするシーンは、その海夢の部屋で行われるという改変になりましたが、その直後のハプニングも面白かったですし、全体的なテンポも良くする変更としてアリだと思えました。

 また「頭に巻いたメジャーがただ巻いただけで目盛りが合ってない」というツッコミは確かにその通りなのですが、「採寸自体に慣れていなくて、かつ水着姿(この水着の布面積が多いことも批判されていますが)の海夢にドギマギしていたから」というシーンにも見えたので、個人的には許容範囲でした。

●肝心のメイクの出来栄えや細部を突き詰めきれていない問題

 ここまで擁護をしてきましたが、反面どうしても厳しく思えてしまったのが、第3話で海夢がコスプレをしたときの、肝心の「メイク」です。「私……ちゃんと雫たんになれてるかな?」と聞く、とても重要な場面なのですが、実際の映像を素人目に見ても、コスプレ衣装に合ってない、出来栄えがいいとはとうてい思えなかったのです。「演じている永瀬莉子さんは悪くない」とフォローがあった上で、「スタッフがコスプレ衣装のためのメイクをまったく分かってない」などと酷評が寄せられるのも当然だと思えました。

 コスプレのためのノウハウの解説も、テンポのいい編集と見せ方で興味深く見られましたし、第6話でのコスプレ衣装およびメイクはそちらに比べてとても良くなったと思えただけに、ずっとこの、第3話のメイクがノイズとして引きずってしまった印象は、とても残念でした。

 他にも、新菜が住む「五条人形店」の再現度が原作そのままだと称賛される一方で、新菜が初めに使っていたのが年代物のミシンではなくなったり、海夢が新菜の恋心を自覚する場面が電車ではなくなったりと、「そこは変えないで欲しかった……!」と思った部分もやはりあります。予算や制作期間が少なかったという事情もあるかもしれませんが、そうした小道具や舞台などの細部はファンであればあるほど気になるので、もう少しだけでも突き詰めて欲しかったです。

●第7話ではさらなる改変の批判も

 さらには第7話では、アニメ版では未登場だった、塩崎太智さん演じる「姫野あまね」が出てきました。しかし、原作では20歳の大学生だったのが新菜たちの高校の先輩になっているなど、やはり改変が批判を浴びています。

 しかしながら、筆者個人としては前述してきた改変は受け入れられた、または実写ドラマ独自のいいアレンジだと思えた部分もありましたし、その第7話の改変もこれから意義があるものだと分かる可能性もあります。

 原作およびアニメの熱心なファンが多いからこその批判が出てしまうのは致し方ないですが、元の物語やキャラ造形が強固だからこそ、しっかり受け継がれている面白さは、実写ドラマ版にも確かにありました。まずは、SNSでの極端な酷評に惑わされすぎず、見てみてほしいです。

※塩崎太智の「崎」の字は「たつさき」

(ヒナタカ)

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