一時は『ドラゴンボールDAIMA』超えも? 新選組を描く『青のミブロ』が物議をかもす
マグミクス / 2024年11月28日 12時15分
■こんな新撰組はみたことない?
幕末に京都治安維持のために結成された組織「新撰組」は、極めて高い人気を誇るテーマです。1962年に司馬遼太郎先生によって描かれた小説『燃えよ剣』以降、小説、ドラマ、マンガ、アニメなどメディアを問わず数多くの名作が描かれました。そんな「新撰組もの」の最新作といえるのが、現在放送中のアニメ『青のミブロ』です。
ビデオリサーチ社の発表によれば、本作は2024年11月5日時点で『ONE PIECE』や『ドラゴンボールDAIMA』よりも高い視聴率を誇りました。しかし一部の視聴者からは「こんなの新選組じゃない」などの声が上がり物議をかもしています。いったい何が原因なのでしょうか?
●新撰組は大人気グループ
これまでの「新撰組もの」といえば、局長の近藤勇、鬼の副長の土方歳三、結核で夭折した天才美少年剣士、沖田総司の人気が特に高く、3人を中心としたストーリーがほとんどでした。ざっと挙げるだけでも『新選組始末記』『燃えよ剣』『壬生義士伝』『風光る』『PEACE MAKER』などがよく知られています。アニメ化された「週刊少年ジャンプ」の作品として『銀魂』や『るろうに剣心』で新撰組を知った、という方も多いのではないでしょうか。
新撰組の隊員は実在の人物です。しかし戦国武将のようにキャラクター化されたことで、そのパーソナリティや隊員同士の関係性がお約束化しています。あとは、その「お約束」にどのようにアレンジを加えるか、史実をどう解釈するかが「新撰組もの」の魅力だといえるでしょう。
●オリジナル主人公と、あの芹澤鴨が超重要人物に!
最新の「新撰組もの」である『青のミブロ』が、一部の視聴者から受け入れられなかったのは、これまでの定石を覆す大胆なアレンジのせいかもしれません。これまでの「新撰組もの」では、芹澤鴨は酒乱かつ、きわめて粗暴な人物として描かれるケースがほとんどでした。しかし『青のミブロ』では、芹澤を「昔ながらの価値観の侍」として極めて好意的に描いている点が異色です。
史実においては、芹澤は路上で力士を斬ったり、焼き討ちをしたり、宴会で大暴れしたりといった問題を起こしたとされているのですが、これには彼なりの理由がある、という解釈がなされています。
もっとも、彼の素行の悪さに業を煮やした会津藩の意向を受けて、近藤勇らが芹澤を暗殺したことで新撰組は新体制を迎えます。つまり新撰組の局長といえば近藤勇であり、芹澤は近藤が局長になる前の障害に過ぎなかったのです。
『青のミブロ』では「強くて不器用な怖い先輩」である芹澤が、新撰組(浪士組)に入隊したオリジナル主人公である「ちりぬ にお」と複雑な関係を築きます。この描かれ方には掲載誌「週刊少年マガジン」におけるヤンキー文化へのリスペクトを感じる方も多いのではないでしょうか?
『青のミブロ』の新撰組は『東京リベンジャーズ』を思わせる若者集団に似ているのです。SNSの書き込みを見る限り、この点が従来の新撰組ファンを戸惑わせたようです。
●成功と破滅を描く新撰組
新撰組の魅力は多面的ですが、その最大の魅力は栄枯盛衰でしょう。熱に満ちた若い隊士たちの死闘の日々は開国に向けた時代の流れに抗えず、副長の土方は誠の旗を立てて戦い続け、最後は北海道の五稜郭で戦死しました。日本人好みの栄枯盛衰が描かれているようです。
大胆なアレンジが目立つ『青のミブロ』ですが、そのシナリオはしっかり史実や関係性の「お約束」をなぞっています。定番ともいえる近藤、土方、沖田の3人から少し距離をとった「ちりぬ にお」「田中太郎」「斎藤はじめ」を中心とした、新解釈の新撰組が楽しめるでしょう。
アニメ視聴率も高く、本作をきっかけに新撰組にふれる方も増えると思われます。新たな令和の「新撰組」が何を描くのか、今後も期待です。
(レトロ@長谷部 耕平)
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