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「アニメの制作本数多すぎ問題」なぜ? 背景にPlayStation2がもたらした「変化」が

マグミクス / 2024年12月22日 17時50分

「アニメの制作本数多すぎ問題」なぜ? 背景にPlayStation2がもたらした「変化」が

■PlayStation2発売が大きなきっかけに

 国内外での日本アニメの人気を受けて、1995年には年間87本だった制作本数は、現在では年間300本を越える規模にまでふくらんでいます。これほどまでに制作本数が増加したきっかけとして、家庭用ゲーム機「PlayStation2」がもたらした「変化」がありました。

 もちろん、「PlayStation2」が直接の原因になって制作本数が激増したわけではなく、そこに至る背景がありました。1963年に『鉄腕アトム』が日本初の30分テレビアニメシリーズとして放送されて以来、多くのアニメが制作されてきました。1980年代後半までのアニメは玩具や食品のコマーシャル番組として扱われることも多かったのですが、この流れに大きな変化をもたらしたのが、1995年に放送された『新世紀エヴァンゲリオン』です。本編映像が収められたVHSビデオやレーザーディスク(LD)が発売された際には販売店に行列ができ、「アニメそのものが利益を生み出す」という事実が明らかになりました。

 また、『エヴァンゲリオン』で取り入れられた「製作委員会方式」は、複数の企業が共同出資することにより、作品が当たらなかった場合でも経営不振に追い込まれるリスクを軽減できるようになりました。

『エヴァンゲリオン』のムーブメントと製作委員会方式の普及、さらに深夜枠の増加や衛星放送「WOWOW」などによるチャンネル数の拡大は、1990年代半ばから後半にかけてアニメ制作本数の増加をもたらし、95年に87本だった制作数は1999年には149本へと増加しています。

 この流れは2000年にはいったん収束し、109本へと減少しました。しかし翌2001年には167本を数え、その後は一度も3ケタを割ることなく、2006年には279本へと急増しています。

 こうした制作本数急増のきっかけとなったのが、2000年に発売された家庭用ゲーム機「PlayStation2」(以下、PS2)でした。

■「DVDプレイヤーの普及」に大きな貢献

「PS2」発売時に注目されたのは、進化したゲームハードとしての性能だけではありませんでした。当時それほど普及が進んでいなかったDVDプレイヤーの機能も盛り込んでいたのです。「PS2」の初期のモデルはディスクの読み込みに問題を抱えていましたが、それでも各家電メーカーがDVDプレイヤー本体の価格を「PS2」より安くしなければならないほど、大きな影響を及ぼしました。

 結果として、各社から発売されるDVDプレイヤーが廉価となり、一気に普及がすすみました。その結果、アニメビジネスにおいて、「DVDを販売することで収益を高める」という手段が生まれました。現在はDVDの発売が話題になることはあまりありませんが、2000年代前半から2010年代後半の時期は、DVDの販売枚数がアニメの人気を現す指標として、取り上げられることも多かったのです。

 DVD販売による新たな収益源を手に入れたことが、アニメの制作本数を押し上げました。仮に10本中1本しか人気が出なかったとしても、損失を補填し利益を獲得することが可能となったのです。2000年代後半には海外の違法ファンサブ動画(現地のファンが日本のアニメに独自の字幕をつけて公開した動画)に押されるなどの理由で一時勢いを失いましたが、2014年には制作本数が322本と、初めて300本を突破しています。

 現在、アニメの視聴は国内外ともに動画配信サービスへと移行しており、DVDやブルーレイなどのソフトに注目が集まる機会は多くありません。それでも、今のアニメのムーブメントを引きおこした要因として「PS2」が果たした役割は、大きかったと言えるのではないでしょうか。

(早川清一朗)

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