「謎の改変」で燃えた人気アニメ これは「仕方なく」じゃないな

■ちょっとした違いが大違いに

　マンガや小説がTVアニメ化されると、さまざまな事情からストーリー展開や演出が変わってしまうこともあります。原作に追いついてしまいそう、映像化できないような描写がある、といった場合は事情も察せますが、なかには意図が読めない改変で、視聴者だけでなく原作者から苦言を呈された例もありました。

　たとえば、2012年から放送された同題ライトノベル原作の『さくら荘のペットな彼女』（原作：鴨志田一）も改変が問題になった作品です。同作は主人公「神田空太」が、問題児ばかりを集めた学生寮｢さくら荘｣へと追いやられたことから始まる青春ラブコメディーでした。

　原作の場合、多忙で体調を崩した住民のひとり「青山七海」に空太が「おかゆ」を出したのに対し、アニメでは「サムゲタン」が振舞われます。前振りもなく登場した韓国要素に視聴者は違和感を抱き、「謎の韓国推し」「サムゲタンのステマ」などと多くの反発を生みました。

　なかには「サムゲタンの方が色も濃いし、鶏肉が入ってて分かりやすいから、アニメとして分かりやすい表現を求めた結果では？」などと、擁護する声もありましたが、あえてサムゲタンに変更した本当の理由は明かされていません。

　また 2017年に放送された『ようこそ実力主義の教室へ』第1期では、原作のライトベル（作：衣笠彰梧）と時系列を変更したことが賛否を呼びました。同作ではポイント制によって生徒の能力が判断され、高ければ好待遇を受ける一方で、ポイントを失ってしまうと最悪の場合は退学になってしまう、競争にまみれた学園生活が描かれます。

　改変されたシーンのなかで大きく賛否を呼んだのは、「水着回」といわれる第7話でした。水着回の部分は、本来であればその後に放送されたアニメ2期第3話頃に放送される内容でしたが、大幅に前倒しされたのです。

　このエピソードでは人気ヒロイン「軽井沢恵」が活躍するはずが、アニメの時点で彼女と主人公「綾小路清隆」は親しくないため、別のヒロイン「堀北鈴音」が軽井沢恵と同じ立ち位置を演じます。のちに清隆と恵が恋人関係になるためのキッカケといえるエピソードだっただけに、違和感を抱いた原作ファンから疑問の声があがりました。

　そのほか、2016年に放送された人気マンガ『くまみこ』のアニメ版は、原作者の吉元ますめ先生が苦言を呈しています。同作は田舎の村を舞台に、コンプレックスを持つ主人公「雨宿まち」と言葉を話せるヒグマ「クマ井ナツ」の交流を描いた物語です。

　まちは終盤で東北アイドル自慢コンテストに出場するため、憧れの都会へと出かけますが、都会特有の雰囲気に負けて姿を消してしまいます。その際に、まちを探していた彼女の従兄弟で村役場の職員「雨宿良夫」が、まちを生け贄や村おこしの道具扱いしているかのような、無遠慮な発言をするのです。

　結局、勇気を振り絞ったまちはコンテストで特別賞に輝いたものの「石を投げられた」「田舎者って言われた」など被害妄想を抱き、都会の高校への進学を諦めて田舎でナツと生きる道を選びます。

　原作では、まちの被害妄想は夢の出来事で、そもそも最初から都会に行くことを断念していますし、まちを探す途中の良夫のセリフもありません。吉元先生も良夫のセリフに対し、最終回後に公式ブログで苦言を呈していました（現在は削除）。それまでが明るく温かい作品だっただけに、意外すぎる最終回のオチは物議を呼ぶ結果となっています。

（LUIS FIELD）