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『レオ』の惨劇はなぜ起きた? 「ウルトラ」シリーズ史上最大の大虐殺劇から半世紀

マグミクス / 2025年1月10日 7時35分

『レオ』の惨劇はなぜ起きた? 「ウルトラ」シリーズ史上最大の大虐殺劇から半世紀

■「ウルトラ」シリーズ最大の虐殺劇が起きてしまったワケ

 本日1月10日は、『ウルトラマンレオ』第40話「恐怖の円盤生物シリーズ! MAC全滅! 円盤は生物だった!」が1975年に放送された日です。今年で放送から50年となりました。「ウルトラ」シリーズ最大のトラウマ回という声もある、このエピソードはいかにして生まれたのでしょうか。

 当初の『レオ』は、未熟だった「ウルトラマンレオ」が先輩にあたる「ウルトラセブン」から指導を受け、それにより得た技で宇宙人や怪獣と戦うという方向性で始まります。そのため、セブンこと「モロボシ・ダン」から特訓される、レオこと「おゝとり(おおとり)ゲン」の生身の姿が毎回、観られました。

 しかしこのハードな展開は、視聴率の低下からソフト路線へと変更を余儀なくされます。前作『ウルトラマンタロウ』との落差が原因だったと考えたスタッフは、少しずつ明るくコメディタッチな作風へと切り替えました。これにより、第17話から第21話の「見よ! ウルトラ怪奇シリーズ」や、第26話から第32話の「日本名作民話シリーズ!」といったテイストのエピソードが生まれています。

 ところが視聴率とは別の問題が作品に陰を落とすこととなりました。それがオイルショックによる物価の高騰です。

 こういった諸問題から『レオ』は3クール全39話で打ち切りというところまで視野に入りました。そして一説によると、この打ち切り問題の回避に大きな影響を与えたのが「腸捻転」だといわれています。

 1975年春には、在阪局である朝日放送と毎日放送のネットチェンジ、いわゆる「腸捻転解消」が控えていたため、1月から新番組を開始するのは視聴者を混乱させるという意見がありました。このため『レオ』は打ち切りを免れたという証言があります。

 もっとも視聴率の問題はともかく、物価の高騰が制作費を圧迫しました。このことは『レオ』の第4クールに大きな影響を与えます。それが「MAC(宇宙パトロール隊)」や「城南スポーツセンター」の面々といったレギュラー陣の退場劇でした。出演者を減らすことでギャラの節約をはかったわけです。

 つまりウルトラシリーズ最大の殺戮劇には、制作費の節減というとんでもない事情が裏にあったのでした。そして、第40話から最終回までの「恐怖の円盤生物シリーズ!」に登場する「円盤生物」もまた、制作費節減というあだ花から生まれた存在だったのです。

■円盤生物が誕生した「当時らしい」理由

レオの双子の弟「アストラ」(右)は第22話より登場。「S.H.Figuarts アストラ」(BANDAI SPIRITS) (C)円谷プロ

 制作費節減の影響は怪獣の着ぐるみにも及びました。すなわち着ぐるみを製造するよりも、プロップ(操演などに使う造形物)をメインとする方向で予算を節約するという考えです。この方針転換により、円盤生物という存在が生まれました。

 こうした制作側の事情が合わさって怒涛の展開になったのが第40話というわけです。

 この第40話は、MACステーションでは「松木隊員」の誕生日パーティーを隊員全員でお祝いするという展開から始まります。この幸せそうなシーンを一転させたのが、地球侵略のために「ブラックスター」からやってきた円盤生物「シルバーブルーメ」でした。

 シルバーブルーメはMACステーションに取りつくと巨大化し、その触手で全体を覆いつくします。この電光石火の攻撃でMACステーションは無力化され、MAC隊員は搭載された戦闘機「マッキー」での脱出もできないままシルバーブルーメに飲み込まれるという最期を迎えました。

 ダンも生死不明となり、ゲンだけはレオに変身してかろうじて脱出に成功します。しかし、シルバーブルーメは間髪入れずに地上を襲撃しました。これにより、今までゲンの心の支えになっていたスポーツセンターの面々はがれきの中で命を落とすこととなります。

 こうして故郷である獅子座L77星を滅ぼされながらも、地球で新たな仲間を手に入れてひと時の平穏を得ていたゲンは、ふたたびそれを失うという悲劇に見舞われることとなりました。この展開は当時の子供たちを唖然とさせ、いまなお第40話をウルトラシリーズ最大のトラウマ回と評する人がいます。

 もっとも、このハードすぎる展開が『レオ』の第4クールをより印象的にしました。怪奇性のある描写も増え、第2期ウルトラシリーズを締めくくるにふさわしい傑作群を生んだといえるかもしれません。

 ちなみに当初予定では、ウルトラファミリーが大円盤に乗って「ウルトラの国」を巻き込む宇宙戦争を戦い抜く……という案もあったそうです。もっとも、この案でもMACの全滅はありました。つまり役者陣の途中退場は避けられなかったかもしれません。

 この第40話で強者ぶりを発揮したシルバーブルーメは、意外なことに以降のウルトラシリーズで再登場の機会がない怪獣として有名です。その後のウルトラシリーズで何度か再登場は検討されたようですが、やはり初見の印象を超えられないから見送られたのでしょうか。

 今後もしシルバーブルーメが再登場するとしたら、どんな惨劇を見せてくれるのか興味は尽きません。もっとも、ウルトラ戦士にあっけなく倒されるくらいなら、再登場はない方がいいでしょうか。当時の子供だった筆者としては、そのような複雑な思いがあります。

(加々美利治)

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