人気作がとんでもないことになった伝説の「ハリウッド実写版」映画 ここまで違ってりゃ清々しい
マグミクス / 2025年1月13日 17時55分
■いずれも日本語吹き替え版の評価は高い
2025年は『ババンババンバンバンパイア』『岸辺露伴は動かない 懺悔室』『ネムルバカ』など、期待が寄せられているマンガの「実写映画化」作品が多数公開予定となっています。ファンからも納得の実写版が増えてきた今、反面教師的な意味でも「黒歴史」とされた、過去の実写作品に触れてみるのもいいかもしれません。
ここでは、日本の超人気コンテンツがハリウッドで実写化されるも、黒歴史となってしまった映画3選を振り返ります。3つ目は確実に再評価が進んでもいます。
●『DRAGONBALL EVOLUTION』
言わずと知れた世界的人気を誇るマンガ『ドラゴンボール』は、2009年にハリウッドで実写映画化されました。原作者の鳥山明先生による、公開前の「脚本やキャラクター造りは原作者としては『え?』って感じはあります(略)別次元の『新ドラゴンボール』として鑑賞するのが正解かもしれません」のコメントの時点で大いにファンの不安を煽り、実際の本編でも多くの人から酷評が寄せられました。
そもそも「孫悟空」が「いじめられっ子の高校生」という設定からして、原作の豪快で明るい悟空の活躍を求めていたファンの期待を思いっきりへし折ってくれます。他にも「かめはめ波」が「心臓マッサージ」で蘇生をさせる手段となってたり、「ピッコロ大魔王」の「献血」により手下たちが生み出されたり、挨拶がなぜか「ナマステ」だったり、チョウ・ユンファさん演じる「亀仙人」の髪がフサフサだったりと、原作とズレた珍シーンが目白押しで、終盤の「大猿がわりと小さい」というガッカリポイントまでスキがありません。
共同脚本を手掛けたベン・ラムジーさんは、後年のインタビューで「世界中から怒りと憎しみがつづられたメールが届くことに心を折られました」「全力を尽くしてきましたが、結局私は『ドラゴンボール』を失墜させてしまいました」「大金が支払われることに目がくらんでしまいました」「世界にいる『ドラゴンボール』ファンの皆さんへ、心からお詫びします」などと、悲痛なまでの謝罪を告げました。
前述したほぼ警告のようなコメントを出した鳥山明先生も、後年の2013年公開のアニメ映画『ドラゴンボールZ 神と神』のパンフレットにて、「ところで後半のバトルシーンは特に圧巻です!(略)『たぶんダメだろうな』と予想していたら本当にダメだった某国の実写映画と大違いです。さすが日本のアニメーションは優秀なんですね!」と、ぶっちゃけています。
そのように原作者や作り手にとっても黒歴史ではあるものの、序盤のいじめっ子からの攻撃を華麗にかわすアクションや、「ホイポイカプセル」のバイクへの変形ギミックのCGおよび意外な使い方のアイデアなど、評価点もそれなりにあります。上映時間が90分以内でテンポも良いですし、悟空役の山口勝平さんや「ブルマ」役の平野綾さんなど、アニメとは違う豪華声優陣が集結した日本語吹き替え版もおすすめです。
●『北斗の拳』
1995年に東映ビデオとハリウッドの提携作品として世に送り出された映画『北斗の拳』は、言わずもがな散々な評価であり、老舗映画サイト「みんなのシネマレビュー 」の平均点ワーストランキングでは、あの実写版『デビルマン』をも下回る、10点満点中1.27点のスコアを樹立しました。その本編は「ひたすらに眠くなる」ほどの退屈さが、とんでもないことになっています。
冒頭から早くも、「シン」が「リュウケン」をピストルで射殺し、不安でいっぱいになりますが(拳法で闘おうとしてくれよ)、奥行きを感じさせないセットや地味な画作りも観ていてとてもつらいものがあります。そもそもの武論尊先生と原哲夫先生による原作マンガ『北斗の拳』は、1981年の映画『マッドマックス2』から強い影響を受けているのですが、同じく核戦争後の荒廃した世界を表現したはずの両者で、ここまで説得力が違うのかとショックを受けるほどでした。
誰もが絶望するのは、肝心の「北斗百裂拳」のシーンでしょう。「ケンシロウ」役のゲイリー・ダニエルズさんが全力でたくさんの拳を素早く繰り出していることは伝わってくるので、無下にはしたくないと思いつつ、「パタパタ」と小気味良い音が聞こえてくる、血行がじんわり良くなる肩たたきのような北斗百裂拳には、かつてない切なさを覚えました。
その後も見応えはほとんどなく、「ユリア」役の鷲尾いさこさんからの「ケンシィ↑ロ」という呼び方がずっと気になったり、ラストバトルでは全てがどうでも良くなる虚しさが込み上げてきたりと、ある意味では斬新な映画体験ができます。DVDでは冒頭で「この作品は本編が古いため多少お見苦しい箇所がありますのでご了承ください」という旨のテロップが表示されていたのですが、確かにずっとお見苦しかったです。
評価点があるとすれば、やはり日本語吹き替え版で、前述した北斗百裂拳のシーンで神谷明さんによるアニメ版を踏襲された声が追加されている(原語ではほぼ唸っているだけ)ため、それなりに迫力があるように見える(聞こえる)のが救いでした。なお、『北斗の拳』は2024年に生誕40周年を迎えたことを記念し、最新の映像技術で原作の魅力を余すことなく忠実に映像化する新作アニメの制作が発表されているので、そちらに期待したいところです。
●『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』
大人気ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』は、1993年に約50億円の製作費をかけて実写映画化されました。こちらは興行的・批評的に失敗作とされてきましたが、2023年のアニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の超大ヒットにより再注目されています。
Blu-rayソフトへの注文が殺到し、販売サイトでは一時的に欠品になるほど人気を集め、同年9月からは「4Kレストア版」が全国劇場にて順次上映されていたのです。
その内容といえば、「配管工の兄弟がさらわれたプリンセスを助けるため、キノコが生えている世界でジャンプをしつつ、爬虫類系の怪物たちと戦う」という意外にも原作に忠実なものですし、アニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でも、そのメインプロットが踏襲されていると思えるほどでした。
とはいえ、1985年の映画『未来世紀ブラジル』に似た雑多な地下世界のビジュアルや、おなじみのキノコがドロドロとした「粘菌」になっていたりと、期待のあさっての方向の実写化のアプローチが賛否両論を呼ぶのは致し方ないことでしょう。
しかしながら、「ジェットを噴射するジャンプブーツ」や「トランポリン代わりの粘菌」によりマリオが「大ジャンプ」をしたり、「ボム兵」がほぼほぼ原作そのままの姿で登場したりと、真っ当な原作再現のアプローチもあります。原作の丸っこい造形が見る影もない「完全な恐竜」な「ヨッシー」も、複雑で凝った作りもあってか、慣れるととてもかわいらしく見えてくるキャラでした。
マリオを演じたボブ・ホスキンスさんは、本作を「生涯最悪の映画」などと振り返り、クッパ役のデニス・ホッパーさんがセットや小道具と整合性の取れない脚本に激怒するなどの禍根は残したものの、ルイージを演じたジョン・レグイザモさんにとっては本作が初のメジャー大作だったため「僕の人生を変えてくれた」と感謝をしており、後にX(旧:Twitter)ではファンから「私のヒーローだった」声をかけられたこともあったそうです。
こちらも日本語吹き替えの出来がすこぶるよく、マリオ兄弟役の富田耕生さんと辻谷耕史さんが最高のハマりっぷりですし、日高のり子さんが演じるヒロイン・デイジーはかわいらしく、井上和彦さんと千葉繁さんの敵キャラコンビの掛け合いもとても楽しいものでした。改めて見ても、(原作のことを置いておけば)さまざまなギミックのあるファミリー向けの娯楽映画として面白いので、一度は見てみてほしいです。
(ヒナタカ)
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