『赤影』語り継がれる大傑作が若い世代にあまり継承されていないシンプルなワケ
マグミクス / 2025年1月18日 8時25分
■『赤影』の魅力を伝え続けた再放送文化
近年、かつての人気作がリメイクされることが多くなりました。しかし、逆に何度かリメイクされたながらも、最近ではあまり話題にならない作品も少なくありません。そのなかでも個人的に、近年では特撮ヒーロー作品『仮面の忍者 赤影』の話題が少ないことが気になっています。
もともと『赤影』は、1966年に『飛騨の赤影』というタイトルのマンガとして世に出ました。掲載雑誌は「週刊少年サンデー」(小学館)で、忍者マンガの大家である横山光輝先生の手によって週刊連載されています。このため、人気絶好調だった『伊賀の影丸』は連載を終了しました。
実はこれは、横山先生が東映からTV番組の原作を依頼されたことがきっかけだったのです。そして1967年のTV放映を機に、原作マンガの『飛騨の赤影』のタイトルも、TVと同じく『仮面の忍者 赤影』に改められました。
『赤影』はスポンサーである三洋電機がカラーテレビを売るという戦略のもと制作された作品です。そのため、主人公一行が「赤影」「青影」「白影」といったように「色」を強調したキャラクターとなりました。この「色別ヒーロー集団」というコンセプトは、後の集団ヒーロー作品群に大きな影響を与えます。
そして、このカラー作品で制作されたことが『赤影』の知名度を上げる要因となりました。その理由が「再放送」です。当時のTV作品はまだ白黒のものが少なくなく、『赤影』は『マグマ大使』『ウルトラマン』に次ぐ3番目のカラーTV特撮作品でした。
1970年代に入ると白黒作品の再放送は減少しましたが、カラー作品は1980年代になっても全国的に再放送された経緯があります。特に『赤影』は人気作品だったことから再放送の回数も多く、筆者も何度も視聴した経験がありました。
この再放送という形態が『赤影』の人気と知名度を支えた要因です。長く繰り返された再放送でリアルタイム以降に生まれた層にも知れ渡るようになり、幅広い視聴者層を生み出しました。おそらくアラフィフ以上の人は、何度も『赤影』の再放送を観た経験があるのではないでしょうか。
この再放送文化ともいうべき土壌によって、『赤影』は世代を超えたヒーローとなりました。その知名度と人気は、当時の「ウルトラ」シリーズや「ライダー」シリーズと肩を並べるものだったかもしれません。
そして、この知名度と人気の後支えもあって、『赤影』は何度かリメイクされることになります。
■何度もリメイクされた『赤影』だったが
1969年公開の劇場版『飛びだす冒険映画 赤影』は立体映画(3D)としても話題を呼んだ。「仮面の忍者 赤影 THE MOVIE」DVD (東映ビデオ)
『赤影』最初のリメイクは、東映作品ではありません。テレパックの制作になります。しかしJAC(ジャパンアクションクラブ)のメンバーが数多く登場し、当時は話題となっていました。
放映は1985年8月26日。フジテレビの「月曜ドラマランド」枠での単発作品です。この月曜ドラマランド枠ではほかにも、『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』などの実写ドラマも制作されていました。
その翌年、1987年に制作されたのがTVアニメ版『仮面の忍者 赤影』です。製作は東映動画(現在の東映アニメーション)で、放送局は日本テレビ系列となりました。
これに合わせて「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて、原作者の横山先生自身による新作漫画『新・仮面の忍者 赤影』が連載されます。この原作マンガとTVアニメ版は、旧作の第1部である「金目教編」をベースにリメイクされました。
そして、2001年8月11日には実写映画『RED SHADOW 赤影』が劇場公開されます。この作品は「東映創立50周年記念作品」として制作されたもののひとつでした。同時期に制作された記念作品は、『ホタル』、『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』、『千年の恋 ひかる源氏物語』です。
近年ですと、2012年からマンガ『仮面の忍者 赤影 Remains』が、月刊漫画誌「プレイコミック」(秋田書店)で連載され、単行本4巻が発売されていました。描いていたのは神崎将臣先生です。このほかにも『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』に登場する幹部のひとり「ソノシ」の変身体が、赤影をモチーフとしたものでした。
このようにドラマ、アニメ、マンガ、劇場版といったようにさまざまな形でリメイクされてきた『赤影』ですが、最近は以前ほど話題に上ることは少なかったといえるでしょう。そしてアラサーより若い世代への知名度の低さは、アラフィフ以上とは比べ物になりません。どうしてでしょうか。
もちろん古い作品が若い世代に訴求力がないのは当たり前でしょう。『赤影』が幅広い層に受け入れられた最大の要因である再放送も現在はないに等しいといえます。代わりに配信というコンテンツがありますが、興味をひくものがなければ最初から選択肢には入りません。こうした要因が、近年『赤影』の認知度を下げました。
以前、アラサー世代からの話を聞いて納得してしまったのが、赤影は「変身しないヒーロー」という点が興味をひかない部分であると指摘されたことがあります。なるほど1960年代は変身しないヒーローが普通に存在していましたが、近年では「ヒーロー=変身」という思い込みは理解できるかもしれません。
もっとも『赤影』を観た人ならわかってくれると思いますが、『赤影』の魅力はそのような部分にはないのです。怪獣やUFOといった時代劇ではありえない世界観で繰り広げられる活劇が魅力的な作品でした。そして変身できないのではなく、変身する必要のないヒーローだったわけです。
作品というものは定期的に盛り上げていかないと、どうしてもかすんでいくものでしょう。筆者としては大好きな『赤影』がいつまでもみんなの心に残るヒーローであるよう、いつまでも後進の人たちに語り継いでいきたいと思います。
(加々美利治)
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