『ガンダムZZ』と『イデオン』が交錯する異色作！ 年老いたジュドーと"伝説巨神"の謎に迫る外伝

■もし『ガンダム』の宇宙世紀に『イデオン』がいたら……!?

『機動戦士ガンダムZZ』の主人公・ジュドー・アーシタは、木星圏に旅立ったあと、どんな人生を送ったのでしょうか？　その謎に迫る作品が、長谷川裕一さんによるマンガ『機動戦士Vガンダム外伝』です。

　本作には、アニメでは描かれなかったジュドーの意外な姿が描かれているのですが、実はさらに驚きの展開が隠されていました。なんと本作には『ガンダム』と『伝説巨神イデオン』という富野由悠季監督の2大作品が交錯する、夢のようなクロスオーバーストーリーが収録されていたのです。

　それが『機動戦士Vガンダム プロジェクト・エクソダス』に収録された幻のエピソード『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』です。

　物語の舞台はU.C.0091で、アニメ『機動戦士ガンダムZZ』の約2年後にあたります。『ガンダムZZ』の最終話で地球圏を離れ、木星圏で暮らしている『ガンダムZZ』の主人公ジュドーの下に、アムロ・レイが訪ねてくるところから物語は大きく動き出します。

　本作の世界では、ヨシユキ・トミノという小説家がこの宇宙を一度滅ぼしたという「伝説巨神」を描く小説を発表しています。アムロを始めとする地球連邦軍の一部の人間は伝説巨神は実在し、放っておくと新たな戦争の火種になりかねないと考えているようで――。

　巨神をめぐる一連の出来事にはネオ・ジオン軍も深く関わっており、作中にはアニメ『機動戦士Zガンダム』の最終話以来となるシャア・アズナブルも登場します。「もし、アムロととシャアが『Zガンダム』と『逆襲のシャア』の間に再会していたら？」というif展開も、本作をより魅力的なものにしています。

　本書のあとがきでは「5年ほど前に編集者に『ガンダム対イデオン』というコンセプトを提案したらギャグ漫画だと思われてしまった」というエピソードが語られています。しかし、それも時代を考えればやむなしかもしれません。

　このあとがきは『機動戦士Vガンダム外伝』が出版された1995年当時のもので、そこから約5年前の話となると、1990年頃ということになります。当時は、ロボットアニメのクロスオーバー作品でもシリアスなストーリーを描けることを証明したゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズの第1作目すらまだ世に出ていません。

　また、「ガンダムのマンガを描かせてもらえるのはこれが最後かも」という思いから『ガンダム』のディープなネタや、ニュータイプというテーマに対する長谷川さんならではのアプローチが盛り込まれていることも語られています。たとえば、作中ではアムロの部下としてシマ・八丈という女性士官が登場しており、彼女は『機動戦士ガンダム』の没キャラクター、八丈志麻をオマージュしていると思われます。

「『ガンダム』と『イデオン』のクロスオーバー作品」、「『ガンダムZZ』と『逆襲のシャア』をつなぐエピソードのひとつ」、「『ガンダム』のマニアックネタ検定」……さまざまな楽しみ方ができる珠玉の作品、それが『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』なのです。

（蚩尤）