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あまりに異色すぎる『仮面ライダー響鬼』知って納得なその誕生経緯…そらそうなるよ!

マグミクス / 2025年1月30日 7時10分

あまりに異色すぎる『仮面ライダー響鬼』知って納得なその誕生経緯…そらそうなるよ!

■『響鬼』が「仮面ライダー」らしくない理由とは

 本日1月30日は、2005年に平成仮面ライダーシリーズ第5作となる『仮面ライダー響鬼』が放送開始した日です。今年2025年で20周年となりました。デザインや世界観など、それまでとまったく異なる「仮面ライダー」として話題となった作品です。

 誕生から半世紀以上が経過した「仮面ライダー」シリーズでは、いくつか異色といわれる作品がありました。そのひとつが本作です。それを証明するかのように、本作のプロデューサーだった髙寺成紀さんは制作発表の場で、「『響鬼』は平成の『仮面ライダーアマゾン』」と述べていました。この発言の意図は、昭和ライダーのなかでも『アマゾン』が異質な存在だったからでしょう。

 確かに、それまでの平成ライダーだけでなく全仮面ライダーと比較した時にも、本作の異質さは際立っています。「ライダー」でありながら当初はバイクを持たなかった点、必殺技がキックではなく楽器をモチーフとした武器を使う点、複眼ではない点など、従来の仮面ライダー像とは大きく異なる部分をいくつか持っていました。

 これは本作が、もともとは「仮面ライダー」として企画されていなかったことが大きな要因です。当初、スタッフは「仮面ライダー」シリーズ作品ではなく、同じく石ノ森章太郎先生の原作で東映が制作したTV特撮番組『変身忍者 嵐』のリメイクを考えていました。

 こういった経緯で企画がスタートしたところ、スポンサーであるバンダイサイドは、やはり新作は仮面ライダーとするよう要求したそうです。その最大の理由は、コナミがスポンサーだったTV特撮番組『超星神グランセイザー』(2003年)が、好評のためシリーズ化したことにありました。

 それに加えて「タカラ(現タカラトミー)」がスポンサーとなったTV特撮番組『魔弾戦記リュウケンドー』が、2005年春放送予定で動いていたからです。もっとも諸般の事情から『リュウケンドー』は、1年遅れで全撮影がクランクアップした後、2006年にTV放送開始となりました。

 この男児向け特撮番組の三つどもえを警戒したバンダイとしては、安定した人気のある「仮面ライダー」ブランドを封印したくなかったわけです。そうした事情から、本来は「脱・仮面ライダー」となるべき本作は、「仮面ライダー」として再設定されることとなりました。

 このような経緯から、本作は「仮面ライダー」としては異質な作品となったわけです。前述した相違点に加えて、それまでの平成シリーズでは「変身ベルト」だったアイテムを「変身音叉(おんさ)」と呼ばれるアイテムに変更、変身すると着用していた衣服が消失して全裸になるといった本作独自の設定がありました。

 そして「和」を意識した作品世界も独特の空気を生みます。仮面ライダーではなく「鬼」と呼ばれる戦士たち、敵は日本妖怪をモチーフとした「魔化魍(まかもう)」、筆文字のカット挿入といった部分は、これまでのシリーズになかった新鮮なものでした。

 前期オープニングはインストゥルメンタルで、『仮面ライダークウガ』を最後になくなっていたエンディングが復活し、それを唄うのが布施明さんという点も話題を呼びます。

 このように、さまざまな点でこれまでのシリーズにない仮面ライダーを目指した『響鬼』に対し、ファンの評価は大きく二分化されることになりました。

■ファンが二極化した後半の展開とは

響鬼の最強形態「装甲響鬼(アームドひびき)」(画像中)。「仮面ライダー響鬼 Blu-ray BOX 3」(東映ビデオ)

 平成ライダーというと、低年齢層向けでありながらもシリアスさやリアルさを強調した作風で続いてきました。それゆえ時には仮面ライダー同士が衝突し、正義とは何かを視聴者に訴える作風が中心となります。

 ところが本作の仮面ライダーである「鬼」は、温厚で仲間意識も強く、衝突するようなことは基本的にはありません。それまでの平成シリーズと比べるとホームドラマを思わせる明るい作風で、葛藤や心の闇といったマイナス面を持たない大人の戦士の物語でした。そういった揺れる心情は、弟子となる少年と少女に振り分けられています。

 こうした心地いい空間のなかで、主人公である「ヒビキ」の背中に父を重ねる少年「安達明日夢(あだちあすむ)」の成長譚を、ゆるやかながらも着実に描く作品でした。ところが途中で状況が一変します。主導的立場にいた髙寺さんが、二十九之巻をもってプロデューサーを降板したのです。

 代わりに三十之巻以降のプロデューサーとなったのが、劇場版のみの参加予定だった白倉伸一郎さんでした。そして脚本には井上敏樹さんが参加します。『響鬼』以前の平成シリーズを盛り上げたふたりです。

 高寺さんの降板に関して理由は公表されておらず、本人もファンに詫びるコメントは残していますが、あくまでも真相は語らず、これまで沈黙を守っています。それゆえにファンからはさまざまな憶測が立てられました。

 降板理由はひとまず置いておいて、あくまでも『響鬼』という作品から見ていくと、三十之巻以降はそれ以前と比べると違う作品と感じるほど、大きく様変わりすることになります。三十四之巻以降はオープニングを歌詞のある「始まりの君へ」へと変更、同時にEDを廃止することで従来のフォーマットに戻りました。

 そして物語の舞台も、自然あふれる場所から、都会での戦闘が増えることになります。同時に山中でのロケ、CGを使った大型魔化魍の登場が少なくなりました。しかし、もっとも大きく変わった点は明日夢のライバル的存在「桐矢京介」の登場でしょうか。

 京介の登場は、それまでのヒビキと明日夢の関係に大きく影響しました。これにより、それまでゆるやかに進んでいた人間ドラマは急速な動きを見せるようになります。登場人物の対立を軸に物語を動かす平成ライダーの定番展開とでもいえるかもしれません。

 つまり前半の展開で平成ライダーから脱却した『響鬼』は、後半から平成ライダーらしい作風へと切り替わったといえるでしょう。これに関してファンの意見は二分しました。前半の雰囲気のある『響鬼』派と、後半の平成ライダーらしい『響鬼』派です。

 個人的な感性でいうと、筆者は前半の比較的、人間関係のおだやかな『響鬼』が好きでした。しかし、それまでの平成ライダーが人気を博していた点を踏まえると、後半の『響鬼』を待ち望んでいたファン層の気持ちも理解できます。両方合わせて『響鬼』なのでしょう。

 結果的に前半派と後半派とにファンを二分したものの、『響鬼』という作品は名作だったと、筆者は思っています。そして『響鬼』という異色作が早期に誕生したことは、シリーズの幅を広げる礎になったといえるかもしれません。

(加々美利治)

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