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『ガンダム』主人公アムロは本当に「根暗なオタク少年」か? TV版に見た「意外な社交性」

マグミクス / 2025年1月31日 7時10分

『ガンダム』主人公アムロは本当に「根暗なオタク少年」か? TV版に見た「意外な社交性」

■「みんなを守らなきゃ」と自発的に行動

『機動戦士ガンダム』関連書籍の多くで「機械いじりが好きで、内向的な性格のオタク少年」と表されるアムロですが、それは本当なのでしょうか。TV版での描かれ方を改めて見ると、そうは思えない場面も多くあります。

「救援は来ますよ。希望はいつも持っていなくっちゃ」。これは、ネクラとされるアムロのセリフです。このセリフを言う状況(第18話)は次のようなものです。

「指示を無視し、ガンタンクで出撃したアムロの命令違反に対し、上司のブライトは彼をガンダムから降ろすことを考える。ブライトはそのことを副官のミライに相談するが、それを聞いたアムロは、ガンダムで脱走。脱走したアムロは、ブライトを見返すために、ジオンの鉱山基地を単独攻撃する。

 基地の司令官マ・クベは機密を渡さないために、守備兵もろとも基地を爆破。アムロは、敵の情報を得るために、爆破後の基地に入り込むが、そこで負傷したジオン兵の生き残りが、恋人の写真を見ている場面に遭遇する。
 戦傷の痛みのため、写真を取り落としたジオン兵に、アムロは水を汲んできて与え」、そして冒頭に挙げたセリフを言うわけです。

 ここで改めて話の前提を確認しますが、そもそもアムロは民間人であり、望まずして戦いに巻き込まれた15歳の少年です。軍人のブライトらがガンダムを扱えないため、幼なじみのフラウなど、避難民多数を乗せた軍艦・ホワイトベースを守る戦いに志願させられたわけです。

 そして「民間人の自分がなぜ」という疑問を持った状況で、敵軍の英雄である「赤い彗星のシャアに匹敵する男」とブライトに評価され、「それならガンダムを扱える自分がみんなを護らなきゃ」と責任を感じていたものと考えられます。

 アムロの責任感を軸とした行動原理は、危険なオトリ作戦を自ら発案し、その作戦に自分自身が出撃することを申し出る場面(第10話)などでも描かれています。

 そうした状況で「みんなを護るために」最善の手段と考えたガンタンクでの出撃がブライトに「命令違反」とされ、さらに誇りだったガンダムの操縦者も降ろされるとあれば、普通は戦う意義を見失っても無理ないのではないかと思うのです。

 そのような状況にあっても、アムロは「戦いの放棄」や「革新的新兵器・ガンダムを手みやげとした敵軍への投降」を選ばず、単独での基地攻撃を選んだわけです。

 また単にアムロが、ブライトを見返したいなら、基地攻撃だけでもよかったはずです。自爆したとはいえ、敵基地の状況は不明で、残存兵が多数いるかもしれない状況で、敵の秘密を探るために、拳銃一丁だけで、敵基地に潜入までする合理的理由はないと思われます。

 つまりアムロは「ブライトと違うやり方で、みんなを守りたい」と考えていたのでしょう。それは、外に向いた責任感の表れとしか言えません。

 また内向的な性格の少年が、恋人の写真を見ていたとはいえ、未知の敵兵に自分から語りかけ、介抱したりするでしょうか。状況的に敵兵に撃たれても不思議はないし、彼は見て見ぬふりもできたわけですから、それはアムロの勇気であり、優しさの表れでしょう。

 内向的な人間は、野菜売りのおばさんに無礼を働く(味方の)連邦兵に「おばさん! そのお金は兵隊に拾わせるんだ」と、食ってかかったり(第13話)、ラジコンが壊れ困っている子供に「修理してあげるよ」と声をかけたり(第5話)しないと思うのです。

 また第19話では、敵将の愛人・ハモンから、食事を奢られるようとしたさいに「物乞いではないから」と明確な論理で断ってもいます。このように、自分が考えていることを、相手が理解できるように主張しようとするのは、基本的な社交性が備わっている証でしょう。

 アムロを表す言葉は、「正義感と責任感が強く、心優しい少年」ではないかと思うのです。そうした視点でTV版を見返すと、ランバ・ラルの「いい度胸だ。気に入ったぞ」や、ブライトによる「アムロは野生の虎だ」といったセリフが、違って聞こえてきます。

 また、『機動戦士ガンダム』の劇場版は名作ですが、印象深いカットを切り貼りしているために、作品のエッジな部分が強調されているように思えます。これまで劇場版ガンダムしか見たことがない方には、TV版を一見されることをオススメします。

(安藤昌季)

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