興収伸び悩み、賛否バックリの実写『アンダーニンジャ』 賛派の「福田雄一作品のなかではマシ」意見は本当か?
マグミクス / 2025年2月4日 18時45分
■原作のシチュエーションを福田監督流にアレンジしたギャグもある
現在公開中の花沢健吾さんによるマンガを実写映画化した『アンダーニンジャ』の興行収入は、スロースタートといわれており、観た人の感想は「いいところも悪いところもある」両論併記なものが多い印象です。それには複数の理由がありますが、やはり本作が「福田雄一さんの監督作であること」を抜きには語れないでしょう。
●そもそも興行収入が苦戦気味なのは本当?
そもそも『アンダーニンジャ』は、大コケしているわけではありません。初日から3日間で興行収入は約2億2600万円を記録、10日間では4億7000万を超えています。同じく山崎賢人さんの主演作では累計約11億円の『陰陽師0』に近いペースであり、映画のヒットの基準といえる10億円を超える可能性もあります。
とはいえ、福田監督は何しろヒットメイカーであり、『今日から俺は!!劇場版』は累計約53.7億円、『新解釈・三國志』は約40.3億円と、コロナ禍での公開でも大ヒット作を送り出していました。さらに、山崎さん主演のマンガ原作の映画『キングダム』シリーズは4作すべてが50億円超えであるので、それらと比べて数字が伸び悩んでいると感じる方が多いのではないでしょうか。
また、近年の福田監督作の『ブラックナイトパレード』の興行収入は7億円を少し超えたくらい、『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』は現在8億円ほどになっています。もちろん映画のターゲット層における原作の知名度や、作品の規模など、単純比較ができない要素は多数あるとはいえ、「福田監督だからといってヒットしないようになってきた」という印象を抱く人は多いでしょうし、その傾向は確かにあると思います。
※以下からは映画『アンダーニンジャ』および『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』の一部内容に触れています
●忍者アクションやクセ強めなキャラの俳優陣は高評価
そんな福田雄一監督の持ち味のひとつが「TVで観るコント」のような、俳優のアドリブに頼る傾向のあるギャグで、それこそが映画ファンや原作マンガのファンからの酷評が目立ついちばんの理由です。特に直近の『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』は、演者同士だけでなくスタッフまでいじるノリが延々描かれるなどの場面もあり、「豪華キャストの無駄遣い」「身内ノリのつまらない悪ふざけ」「原作ファンは観ない方がいい」などとさんざん叩かれる結果となりました。
しかしながら、今回の『アンダーニンジャ』に限っては「福田監督作のなかではマシ」「ちゃんとしている」など、「福田監督らしさが気になるけど全体的には楽しめた」というニュアンスの感想が多く出ています。
その理由の筆頭は、「アクションが面白い」からです。忍術アクションのそれぞれがアクロバティックで、忍者らしい刀や手裏剣も使う手数の多さ、大胆なカメラワークなどその見せ方も秀逸です。本作のMVPは、『シン・仮面ライダー』でもアクション監督を務めた田渕景也さんでしょう。
さらに、「現代社会にニンジャが潜んでいる」設定および、「加藤」役の間宮祥太朗さん、「鈴木」役の白石麻衣さん、「山田美月」役の山本千尋さん、「蜂谷紫音」役の宮世琉弥さんなど、日常的なシーンでクセ強めなキャラクターにハマった俳優それぞれが、闘いとなればキレキレな動きをするというギャップも楽しめます。敵である「猿田」役の岡山天音さんのサイコパス演技や、「雲隠九郎」役の山崎さんの身のこなしも大きな見どころでした。
原作からの改変も、「講談高校襲撃」のエピソードをメインに据え、そこに向けて一部のシチュエーションやキャラを微妙に変えつつもタイトに要素を積み上げていく構成は、なかなか理にかなっているものと思えます。やや説明不足な点や、マンガを読んでいないと分からない要素も散見されるものの、原作へのリスペクトも十分に感じられました。
■「しつこいギャグ」は『アンダーニンジャ』と合わない?
『アンダーニンジャ』佐藤二朗さん演じる吉田昭和のビジュアル (C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会
●福田監督らしいギャグとの「食い合わせの悪さ」が大問題
一方で、「監督の我が出すぎちゃってる」「多少は福田雄一監督に耐性がある自分でも無理だった」などと、やはり福田監督らしさがノイズという酷評が多いのも事実です。今回はギャグも「しつこさ」「長さ」込みのものが多く、それが意図的にせよテンポを削いでいる、はっきりいうと「邪魔」に感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
たとえば、序盤のムロツヨシさん演じる「大野」と九郎の、ふすまでの「え?」の応酬は原作のシチュエーションを膨らましたもので、これには少し笑ってしまいました。しかし、さっぱり意味も面白さも分からなかったのが、浜辺美波さん演じる「野口彩花」が、九郎に「鼻くそ、顔についてるぞ」と言われ、「どこどこ?」と自分の顔を「ピョコピョコピョコ」と、効果音とともに手でペチペチ叩くギャグです。クライマックスではこれが伏線のように使われるのですが、とても上手い演出だとは思えません。
他の場面でも、キャラが気絶すると「チーン」と鳴ったり、走り去る場面で「ビューン」というSEが聞こえたりもします。言うまでもなく、佐藤二朗さんは「いつもの福田作品の佐藤二朗さん」的なふざけ方ですし、そうしたコントのような演出は個人的には軒並み滑っているように思えました。
また、原作のシチュエーションを福田監督らしいギャグに変えた場面もあります。美人なのに誰も寄りつかない山田が鼻くそを食べる場面は、映画では「指の第二関節まで指を鼻に突っ込んで強引にほじる」という強烈なアレンジをされており、演じている山本千尋さんが気の毒に思ってしまった人もいるのではないでしょうか。
また、『アンダーニンジャ』の原作は青年誌に連載されており、残酷シーンもはっきりと描かれる大人向けの作品です。映画で残酷さをファミリー層に向けにマイルドに調整するのは納得できますし、G(全年齢)指定にしてはギリギリな流血や殺傷シーンをが描いていますが、劇中の「高校生たちが惨殺されている」シビアな状況と、「福田監督の現実ではあり得ないギャグ」は食い合わせが悪いですし、原作の「日常のなかで発露する狂気と隣り合わせのコミュニケーションのギャップによるおかしみ」のコメディ要素とは、終始ピントがずれてしまっていました。
総じて、映画『アンダーニンジャ』は「福田監督らしさ以外でたくさん良いところがある」から、好意的な感想が目立つようになったといえそうです。ただ、やはり「福田監督と原作が合ってない」、はっきり「監督の人選ミス」という結論にたどり着かざるを得ない面もあり、それが大きく評価、そして興行にも少なからず影響していると思います。
とはいえ、笑いのツボは千差万別であり、上記のギャグも楽しめたという人もいるでしょうし、ギャグの割合そのものが少ないため、これまでの福田監督作品が苦手な人でも楽しめる可能性もあります。また、原作からパロディ的なギャグが多かった『銀魂』など、福田監督との相性の良い原作もあるので、その方向で多くの人に受け入れられる作品が生まれることを、わずかながら期待してはいます。
※山崎賢人さんの「崎」は「たつさき」が正式表記
(ヒナタカ)
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