スペシウム光線の映像に驚愕! 円谷特撮の合成技術を支えた「3億円の必殺マシン」とは
マグミクス / 2025年2月9日 9時30分
■黎明期を支えた「魔法の機械」 コレがなければ怪獣ブームはなかった?
1966年放送の特撮ドラマ『ウルトラQ』の「4Kリマスター版」が、2025年2月上旬にNHK BS8Kで放送されました。59年前のフィルム映像が現代の最高画質で蘇り、「巨大怪獣から逃げ惑う小さな人間」という、定番の合成映像などもかなり鮮明でした。
今では驚きもしない合成映像も、当時の視聴者は「この映像はどうやっているのだろう?」と、驚いたでしょう。実は、特撮の神様「円谷英二」氏が、必要不可欠と言ったのが「オプチカルプリンター」というフィルム編集装置でした。この魔法の機械を駆使できたからこそ特撮はブームを築けたと断言してよいでしょう。
「オプチカルプリンター」とは、現像済みの映写フィルムを別のフィルムに光学的に焼き付けるために用いる機械です。ざっくり説明すると、たとえばスタジオ撮影した怪獣が映るフィルムに、目から出る光線の「線」だけの画を別のポジフィルムに作成して、1コマ1コマを重ね、それを合成して1本のフィルムにまとめる……そんなことが可能な機械です。
●時代は映画からテレビへ
1959年には、4つの民放TV局がチャンネルをにぎわせ、一般家庭のTV普及率が上がります。早くから「テレビの時代が来る」と確信していた円谷氏は、1963年、62歳で「円谷特技プロダクション(現・円谷プロダクション)」を設立。そして、運命はさらに激変していきます。
いくつかの特撮専門誌で紹介されている、「オプチカルプリンター」購入にまつわる定説は次のようなものです。
* * *
1964年、すでにTBSとフジテレビでドラマ企画が進行していたことから、円谷氏は、より高度で効率よく特殊技術を提供するために、アメリカ「オックスベリー社」の最新型『オプチカルプリンター・シリーズ1200』の導入が急務と考えました。実は、同機の旧式タイプは国内にもありましたが、他社の所有物なので自由に使えない不便さがあったようです。
その最新型はまだ世界に2台しかなく、値段はなんと約4千万円、現在の価格で3億円以上ともされる高額品でした。渡米した円谷氏は、資金も乏しいのにこれを発注します。1号機は当時の東ドイツが購入していて、2号機は米国国防省に納品予定でしたが、オックスベリー社の社長が「世界の円谷なら」と譲ってくれました。
まず、手付金の500万円は、制作が進行していたフジテレビの特撮ドラマ『WoO(ウー)』から工面しようとしました。ところがドラマは8月に急転直下で頓挫します。機械はすでに船で運搬中なためキャンセルは認められませんでした。円谷氏は大ピンチです。
■コレは何だ? の「Question」
オプチカルプリンターの技術は、『ウルトラマン』のスペシウム光線など、さまざまな表現に活用された。画像は「初代ウルトラマン55周年記念 2021年カレンダー」(TRY-X)
金策に行き詰まったところ、TBSに勤めていた長男・円谷一氏の働きかけで、TBS映画社が備品として購入するという形で落ち着きます。TBSはこの大きな買物が吉を呼ぶことになるのでした。
これにより、「オプチカルプリンター」を使用する企画が早急に検討され、ドラマ『UNBALANCE』の制作が進行します。そして、東京五輪の体操競技で流行語になった「ウルトラC」をヒントに、「これは何?」というQuestionを合わせて『ウルトラQ』へタイトルを変更。さらに物語のミステリー要素に加え「怪獣」の登場を優先することになります。
(ここまでが定説とされる流れです)
* * *
ハイレベルな技術で挑む世界初の特撮テレビシリーズ『ウルトラQ』は、1966年1月に第1話『ゴメスを倒せ!』からスタート。全28話、平均視聴率32.4%という金字塔を打ち立て、日本に「怪獣ブーム」を起こしたのです。
■ウルトラシリーズの必殺技も合成された
『ウルトラQ』の制作費は、通常1話30分150万円のところ、なんと500万円と破格でした。通常のTVドラマで使用する16ミリフィルムではなく、より高額な映画用の35ミリフィルムで撮影し、それを複写してTV用の16ミリフィルムに仕上げるという手の込んだ作業を行いました。これは、円谷氏が「35ミリじゃないと合成のクオリティが出せない」としたからでした。
このようなこだわりが驚異の合成映像を生みます。怪獣ナメゴンの目から飛び出す怪光線(第3話)、8分の1サイズに小さくなる由利子(第17話)、大股で走るケムール人に追いつけないパトカー(第19話)など、お茶の間はTVにクギ付けでした。
「オプチカルプリンター」の威力は、次作の『空想特撮シリーズ・ウルトラマン』でさらに発揮されます。特に怪獣を撃破するスペシウム光線などの必殺技は強烈なインパクトでした。当時、光学作画を担当し「オプチカルプリンター」の担い手だった技術者の飯塚定雄さんによれば、光線などの「光」は基本的に手書きで、スペシウム光線は1秒間で24枚必要だったとか。
ちなみに、高額だった「オプチカルプリンター」はTBS映像所に設置され、外部の使用を許可したことで黒字になったそうです。
(石原久稔)
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