まるで打ち切り?1978年のアニメ『はいからさんが通る』 38年の時を超えて完結
マグミクス / 2020年6月3日 15時10分
■もう、うわさは、聞きましたか
1978年6月3日はTVアニメ『はいからさんが通る』(はいからさん)の放送が開始された日です。「はいからさん」ことお転婆娘の花村紅緒(以下、紅緒)が激動の大正時代を駆け抜ける骨太のスト―リーと、伊集院忍少尉(以下、少尉)との恋愛模様は多くの人をとりこにしました。子供の頃に何度も再放送を見て、最後の展開にはどうにも納得いかなかったライターの早川清一朗さんが思いを語ります。
* * *
筆者がアニメ『はいからさんが通る』を見るようになったのは、たぶん幼い頃に姉とのチャンネル争いに敗れたからだろうと推測しています。それでも大正時代という知らない世界で生きる紅緒お姉さんの明るさと、苦難には全身全霊で立ち向かうパワーに惹かれ、いつしか再放送があると自分からTVの前に陣取るようになっていました。
紅緒以外にも幼なじみの女形役者である藤枝蘭丸や、少尉の部下で馬賊に転向し少尉を探しに来た紅緒と運命的な出会いを果たした鬼島森吾など魅力的なキャラクターが随所に登場し、時にギャグをぶちかまし、時にシリアスに振る舞う姿は本当に生き生きとしていました。
ただ、子供の頃はさっぱり分からなかったのですが、『はいからさん』の時代は大正デモクラシーで提唱された男女平等による職業婦人の登場や、ロシア革命の余波によるシベリア出兵などにより、日本という国が、そして世界が大きく動いた時代であり、紅緒と少尉はまさにそのただなかを駆け抜けていたのです。
作中で少尉はシベリアに出征して消息を絶ち、財産のない伊集院家を支えるため、紅緒は出版社に入社して働き始めます。これらのドラマは、日本が徐々に軍国主義への道を歩み出し、女性がジェンダーから解放されつつあった大正という時代を見事に反映しているのです。
実は大正時代の資料は関東大震災や東京大空襲により多くが消失しており、現在は入手困難とされています。原作者の大和和紀先生やアニメのスタッフの方々が大正を描き上げるには大変な苦労があったのではないかと推測すると共に、史実の間をドラマで埋める、大和和紀先生のクリエイターとしての才能が超一流であったことを示しているのでしょう。
■そしてその目で 確かめましたか
『劇場版はいからさんが通る 前編~紅緒、花の17歳~』 (C)大和和紀・講談社/劇場版「はいからさんが通る」製作委員会
『はいからさん』のアニメを語るうえで、どうしても避けられないのが、唐突な最終回です。再放送を毎回楽しく見ていたのですが、最終回のラストシーンだけはどうしても理解できず、長い間「ああ、打ち切られたんだな」と考えていました。
その誤解が解けたのは3年前。大和和紀先生がインタビューで「放送枠をモスクワオリンピックの中継に取られてしまい、10話分のストーリーを3話に収めなければいけなくなった」ことを明かしてくれたのです。アニメスタッフではない先生の元に「どうしよう」と連絡があったそうですが、どうにもならなかったそうです。あまりにも理不尽な終了理由でした。
製作元の日本アニメーションにとってもこれは痛恨の出来事だったそうで、大和和紀先生に何度か完結編兼リメイクの製作を持ち掛け、ついにTV版終了から38年後となる2017年に劇場版として公開されるに至りました。
TV版では少尉が記憶を失ってロシア貴族として飛行船で戻ってきたところで終わってしまいますが、劇場版では青江編集長と紅緒のエピソードやクライマックスの関東大震災、紅緒の恋の行方についてもきちんと描かれています。もしアニメでの完結を心のどこかで望んでいた方がいたら、ご覧になるべきかと思います。
それにしても驚かされるのが、累計1200万部を売り上げた大作でありながら、原作はわずか8巻で完結していることです。しかも8巻は番外編で実質7巻の前半でクライマックスを迎えています。
現代の連載作と比較すると圧倒的に少ないように見えますが、この記事を書くにあたり単行本を読み返してみたところ、内容の濃さと展開のスピーディーさは圧倒的でした。大和和紀先生の構成の巧みさがこれだけの傑作を生み出していたのです。
良い作品はいつ見ても、いつ読んでも楽しめるものです。 『はいからさんが通る』は、まさにそのような作品なのだと、筆者は確信しています。
(ライター 早川清一朗)
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