『超電磁マシーン ボルテスV』真の主人公は悪い宇宙人? 大人になって「しっくり」
マグミクス / 2020年6月4日 17時10分
![『超電磁マシーン ボルテスV』真の主人公は悪い宇宙人? 大人になって「しっくり」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_29003_0-small.jpg)
■プリンス・ハイネルの存在感
1977年6月4日はTVアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』(以下、ボルテスV)の放送が開始された日です。『超電磁ロボ コン・バトラーV』の後を引き継ぎ放送された本作は、巨大ロボット「ボルテスV」の迫力もさることながら、美形悪役プリンス・ハイネルの出自を巡るストーリーが人気を呼び、繰り返し再放送され当時の子供たちに熱烈な支持を受けました。再放送を見るたびに、「ひょっとして主人公はハイネルじゃないの?」と感じるようになっていったライターの早川清一朗さんが、思いを語ります。
* * *
正直な話をすると、小さい頃の筆者は『コン・バトラーV』と『ボルテスV』の区別がついていませんでした。
かろうじて理解できていたのは、『ボルテスV』は超電磁ヨーヨーではなく超電磁ゴマを使うこと、必殺技が超電磁スピンではなく天空剣であること、そしてチームにひとりだけの女性パイロットが下駄の部分に搭乗している、この3点のみでした。
『ボルテスV』は昭和50年代の夕方に数え切れないほど再放送されており、筆者もいったい何回見たのか記憶にはありません。ただ、最初の頃は「がんばれボルテスV、悪い宇宙人をやっつけろ!」と思っていたはずが、徐々にストーリーが理解できるようになっていくと、俄然、敵であるはずのプリンス・ハイネルの存在が気になりだしたのです。
ハイネルが生まれたボアザン星は地球から14000光年の彼方にあり、生まれつき角があるか、ないかで厳格に身分が定められています。角があるものは貴族、角がないものは労奴として区別されていたため社会に不満が渦巻いていたのです。
ハイネルの父親であるラ・ゴールは皇位継承権を約束されていた高貴な身分だったのですが、実は角を持たずに生まれており、付け角であることを暴露されて失脚、反乱を起こしたのちに地球へと落ち延びたのです。そのとき、まだ赤子のハイネルはボアザン星に残されたままでした。
ハイネルには生まれつき角があったのですが、反乱者の息子として後ろ指を指される立場であり、皇帝への忠誠心を示すために辺境の地である地球攻撃司令官としての任に就くこととなったのです。
しかしそれは、ハイネルをより過酷な状況に追い込む選択でもありました。
■弟たちとの死闘、そして『スパロボ』での救済
『スーパーロボット大戦α』(バンプレスト)
一方、反乱を起こしたラ・ゴールは剛健太郎と名を変え、新たな家族を作り上げていました。3人の息子の名前は健一、大次郎、日吉。剛三兄弟ことボルテスチームのメンバーだったのです。健太郎はボアザン星人の侵略に備えてボルテスVを造り上げたのですが、混乱するボアザン星を放置できず、地球を離れ労奴解放の地下運動に従事するようになりました。
そして地球を侵略しようとするハイネルと、地球を守るために戦う剛三兄弟は、互いの素性を知らぬまま、血で血を洗う死闘を繰り広げることになったのです。
さらにはハイネルの失脚を狙う政敵たちからはスパイを送り込まれ、絶えず暗殺・謀殺の危機にさらされていますが、ごく一部の信をおける側近たちと共に乗り切っていくのです。
とはいえボルテスVを相手に勝利を収めることはできず、最終的には地球攻撃司令官を解任される憂き目にあい、地球にひとり取り残されてしまうのです。 それでも側近たちの献身的な働きによりボアザン星に帰還したハイネルは、労奴たちの反乱による混乱の最中、ボルテスVとの最後の戦いに臨み、相打ちに持ち込みます。
生身となってもまだ戦い続けたハイネルは、目の前の憎きボルテスのパイロット、健一が持つ父親の形見の短剣を見て、実は弟と戦っていたことに気づくのです。 そして最後は爆風から身を挺して健一を守ると、燃え上がる城のなかで「お父さん……」と言い残しながら最後を迎えます。
過酷な運命を背負いながらも戦い続け、最後は弟を救い散っていく。これだけ劇的なキャラクターに人気が出ないはずはありません。放送当時は監督の長浜忠夫氏の元に女性ファンから数多くのファンレターが届いており、同人誌さえ作られていたそうです。今も昔も、熱烈なファンの情熱が行きつく先は同じなのでしょう。
また『スーパーロボット大戦』シリーズにも登場しているハイネルは、『α』シリーズで強力なキャラクターとして参戦し、最終的には剛兄弟から「兄さん」と呼ばれるなど破格の扱いを受けています。
『ボルテスV』の主人公はハイネルだと考えると、本当にしっくりくる。今の筆者は、そのように感じています。
(早川清一朗)
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