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男の子も夢中になった『魔法のスターマジカルエミ』 主人公・舞の「最後の決断」

マグミクス / 2020年6月7日 8時10分

男の子も夢中になった『魔法のスターマジカルエミ』 主人公・舞の「最後の決断」

■スタジオぴえろ 魔法少女シリーズ第3弾

 1985年6月7日はTVアニメ『魔法のスター マジカルエミ』(以下、マジカルエミ)の放送が開始された日です。マジック劇団の家に生まれた不器用な女の子、香月舞(以下、舞)が魔法の力で天才マジシャン「マジカルエミ」に変身して活躍します。小さい頃に姉とのチャンネル争いに敗れて見ていた『マジカルエミ』にハマり、後にLD-BOXを購入したライターの早川清一朗さんが想いを語ります。

* * *

 筆者が小学生の頃、平日の夕方にはさまざまなアニメが放送されており、そのなかには女の子向けの作品もたくさんありました。

 一応男の子なので女子向けにはそんなに興味がなかったのですが、筆者には姉がおり、家にはTVが一台しかなかったので、しばしばチャンネル争いに敗れ一緒に見る羽目に陥っていたのです。再放送が繰り返された『キャンディ・キャンディ』『はいからさんが通る』『花の子ルンルン』などは何回見たのか記憶にありませんが、新作として放送された作品もいくつか見ていました。そのなかのひとつが『マジカルエミ』です。スタジオぴえろ(現:ぴえろ)という制作会社が送り出した、『魔法の天使クリィミーマミ』『魔法の妖精ペルシャ』に続く 「魔法少女シリーズ」第3弾にあたります。

『マジカルエミ』のストーリーは主人公の舞が鏡の妖精トポと出会い、「願いの叶う魔法」をもらって「マジカルエミ」に変身し、魔法を使ったマジックを披露しスターになってアイドルとして活躍するという、1980年代魔法少女作品の王道と呼べるものです。

 日常で起こるトラブルを魔法で解決したり、ステージでマジックを披露したり、舞が恋をしたりと、『マジカルエミ』の世界では魔法こそ存在しているものの、世界をひっくり返す事件のような出来事は基本的には起きません。作品全体を覆う「何かが起きそうで、何も起きない」という空気感と、一人一人が自分の人生を生きようとするキャラクターたちの魅力に惹かれ、いつの間にか放送時間になると毎週必ずTVの前に陣取るようになっていたのです。

■自分の意思で魔法を捨て去る

筆者所有の『マジカルエミ ベストコレクション -蝉時雨-』(徳間ジャパン)

『マジカルエミ』のラスト3話では、完結へ向けて、舞をはじめとするキャラクターたちの心情が丁寧に描かれています。

 マジシャン最高の栄誉・エミリー賞に挑んだ舞と仲間たち。審査員特別奨励賞に輝き感涙する仲間たちのなか、ただひとり舞だけは、魔法の力を使って獲得した大賞に限りない虚しさを感じてしまいます。

 このままでいいのかと迷っていた舞は、希代の天才マジシャン、エミリー・ハウエルの舞台を収めたフィルムをふとしたきっかけで目にします。エミリーも努力で一流となったことを知った舞は練習に励み、下手でも自分の技術で行うほうが面白いことに気づくのです。

 トポに魔法を返すことを決意した舞は、家族や仲間たちと共に、ラストステージに臨みます。このラストの展開の密度の濃さは、1980年代アニメの中でも屈指の出来栄えだと筆者は確信しています。

 本放送終了後、TV映像を15分にオリジナル映像45分を加え、『魔法のスターマジカルエミ 蝉時雨』というOVAが制作されました。この作品は基本的にBGMが使われておらず、日常の世界が日常の音のなかで過ぎ去って行き、人は成長し、そして過ぎた時間はもう戻らないというテーマを持つ、叙述的な作品に仕上がっています。当時から傑作として名高く、一時はかなり高騰したのですが、DVD BOXに収録されて以降は落ち着いたようです。

 そして何より『マジカルエミ』を語るにあたり、忘れてはならないのが舞の声優を務めた小幡洋子(おばた・ようこ)さんです。本作のオープニングテーマ『不思議色ハピネス』で歌手としてデビューされたのですが、とても新人とは思えないレベルの楽曲に仕上がっています。現代でも通じるレベルの名曲です。

『マジカルエミ』の後はロック路線に転向し、1993年に引退。2001年にあるTV番組に城之内早苗さんの同級生として登場した際にはビーズアクセサリーデザイナーとして活動していることが明かされました。現在は何をしているのかは不明ですが、いつか元気な姿を見せてくださることを1ファンとして願っています。

(早川清一朗)

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