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声優たてかべ和也氏追悼 「新ジャイアン役と酒が飲みたい」木村昴氏と涙のエピソード

マグミクス / 2020年6月18日 8時10分

声優たてかべ和也氏追悼 「新ジャイアン役と酒が飲みたい」木村昴氏と涙のエピソード

■声優という職業の存在に気づかせてくれた

 6月18日は、2015年に急性呼吸不全で他界した声優、たてかべ和也氏(以下、たてかべ氏)の命日です。2009年にがんを患って以降は体調が思わしくなく、少しずつ体が弱っていくなかでも亡くなる1か月前までアフレコに参加し、最後まで現役を貫き通しました。テレビ朝日版『ドラえもん』でジャイアンこと剛田武(初代)や『ヤッターマン』のトンズラーなど多数の印象的な役を演じるとともに、多くの若手の才能を見出し一流の声優へと導き続けたたてかべ氏を、ライターの早川清一朗さんが追悼します。

* * *

『ドラえもん』のジャイアンと『ヤッターマン』のトンズラーは同じ人が演じていること
に気付づいたとき、初めて声優という職業を意識した覚えがあります。両番組にはのび太とドロンジョ様を演じた小原乃梨子さんもレギュラー出演しているのですが、たてかべ氏を先に認識したのは、当時の筆者はまだ漢字があまり読めなかったからなのでしょう。

 たてかべ氏は他にも『ど根性ガエル』(第一作)のゴリライモなど、どこか憎めないタイプの力持ちやガキ大将を多く演じましたが、基本的にオーディションではなく「たてかべ氏にはこういう役が似合う」と推薦で決められたものがほとんどだったそうです。

 さまざまな事務所や劇団を経て、たてかべ氏は自らの事務所「オフィス央」を立ち上げます。その際、当時DJやレポーターとして活動していた、現在ではブラッド・ピットの吹き替えなどで知られる堀内賢雄氏を見出し、手塩にかけて育て始めます。後にオフィス央が声優事務所「ぷろだくしょんバオバブ」と合併したのちもその師弟関係は変わらず、堀内氏が独立して「ケンユウオフィス」を立ち上げた際には合わせて移籍し、取締役を務めました。

■事務所の垣根を越えて若手声優を見出した

2008年の『ヤッターマン』第2作でもトンズラー役は続投 画像はDVD1(松竹)

 たてかべ氏を慕っていた後輩は堀内氏だけではありません。たてかべ氏は事務所の垣根を越えて若手に優しく接し、現場を斡旋したりオーディションを紹介したりするなど、声優界の名伯楽として知られた存在だったのです。

 その代表的な例が、『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけ役で知られる矢島晶子さんです。たてかべ氏は舞台俳優だった矢島さんをスカウトし、『アイドル伝説えり子』でのデビューが決まった矢島さんにマイクワークの練習の場を与えるなど、さまざまな取り計らいをしています。また、『クレヨンしんちゃん』のオーディションを斡旋したのもたてかべ氏で、見事にしんのすけ役を射止めた矢島さんは、26年3か月もの間「しんちゃん」を務めあげました。

 近年では大河ドラマ『真田丸』などにも出演し、活躍の幅を広げている声優・俳優の高木渉氏も、たてかべ氏がくれたチャンスをつかみ、飛躍を遂げた人物のひとりです。1回だけの予定で『ミスター味っ子』の収録現場の見学に行った高木氏に、たてかべ氏はこれから毎週来るように伝え、結果高木氏は1年半も見学を続けて端役でのデビューをつかみ取りました。

 他にも後輩を想うたてかべ氏のエピソードは数多くありますが、『ドラえもん』のジャイアン役を継いだ木村昴氏に対しては、特に思い入れが強かったそうです。2005年に長年務めあげたジャイアン役を降板したたてかべ氏は、後を継ぐ声優と酒を飲みたいと願っていたのですが、当時の木村氏はまだ14歳でした。

 その後、たてかべ氏は文化祭や体育祭の折、たびたび木村氏の元を訪れていたことが語られています。あるときなどは、たてかべ氏の姿が見えないので木村氏が探しに行ったところ、生徒を集めジャイアンのようにリサイタルを開いていたこともあったそうです。

 そうして木村氏が20歳を迎えた年に、ようやくふたりでお酒を飲む機会が訪れました。このとき既にたてかべ氏の体はだいぶ弱っており、飲酒は止められていたそうですが、念願を叶えるために、迷わず「今日は飲んじゃおう」と飲みに行き、杯を重ねています。

 それから約1年後に、たてかべ氏は亡くなりました。葬式は堀内氏が喪主となり、盛大に執り行われました。生前共演した役者や関係者が多数訪れ別れを惜しむなか、弔辞を読んだのは、スネ夫役で長年共演した肝付兼太氏。このとき肝付氏が発した「ジャイアンのくせになぜ先に逝っちゃうんだよ」という悲痛な声が心に突き刺さります。

 あれから5年が経ちましたが、たてかべ氏が残した人という財産は今もしっかりと受け継がれ、根を下ろしています。

 たてかべ氏は、「財を遺すは下 事業を遺すは中 人を遺すは上なり」との言葉のように、上の人生を歩まれた方でした。改めてご冥福を祈りたいと思います。

(早川清一朗)

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