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石田敦子『三つ目がわらう』 手塚治虫作品が意欲的なアレンジで生まれ変わる

マグミクス / 2020年6月28日 17時40分

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■人間の普遍的な感情を描く、ふたりの漫画家の共演

 2020年6月16日(火)、アニメーター、漫画家として活動する石田敦子先生によるマンガ『三つ目がわらう』が発売されました。手塚治虫先生の生誕90周年を記念して、日本や欧米の人気作家が名作のトリビュートマンガを描く『テヅコミ』作品のひとつです。原作は『三つ目がとおる』。

 何万年も前に、日本へやってきた「三つ目族」の末裔である主人公・写楽保介は、超人的な頭脳と超能力を持つ三つ目を持ちます。普段はバンソーコでその能力を封じられていますが、彼が望むのは一族の再興。ですが、それを親友の少女・和登千代子に妨害される毎日。そんな毎日のなか、ふたりはさまざまなかたちで遭遇する謎を解き明かしていきます。……と、ここまでが手塚治虫先生原作『三つ目がとおる』のあらすじ。石田敦子先生は『三つ目がわらう』にて、原作をより怪奇的な物語へと変貌させていくのです。
 
 大きなバンソーコがトレードマークで、見た目も精神年齢も幼い写楽。彼の幼なじみで、いじめの標的にされる写楽を助ける和登。ある日写楽は、いじめっ子たちからバンソーコをはがされてしまいます。第三の目が開き現れたのは、人の悪意を喰って生きるもうひとりの写楽。クラスメートの悪意、廃病院に残された怨念、ネット上の誰かが残した暴言。それらに残された悪意を吸って、写楽は邪悪にほほえみながら、その悪意を残した人のもとへ返していきます。

 軽い気持ちで残した悪意を、持ち主のもとへ返してやる。原作以上にダークヒーロー的で、おのれの欲求に純粋な写楽は、色気のある不気味さを感じさせます。和登が彼に思いを寄せる気持ちや、そこに隠された真実。5話構成のスピード感と、謎が謎を呼ぶ展開が、後味のいい読後感を残してくれます。

 同作には手塚治虫先生の読み切り作品である『るんは風の中』を翻案した『初恋は風の中』、『ばるぼら』を翻案した『ばるぼラ』の2作品も収録。いずれも人の悪意、幸せのかたち、欲望への執着の怖さといった、人が抱える普遍的な感情をテーマにしています。「自分が主人公ならどうしただろう」と自分を振り返ったり、あのときの主人公の感情を想像してみたり。ふたりの漫画家が作った余韻に、たっぷり浸れる作品です。

 本書には、ストーリーの終わりごとに原作のストーリーや主要人物の概要も掲載されています。石田先生がどのように、これらの作品に手を加えたのかも一緒に、楽しみながら読んでみてください。

(サトートモロー)

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