いきなり大人の展開!子供には早すぎた『マクロス』の後継番組『超時空世紀オーガス』
マグミクス / 2020年7月3日 12時10分
■『マクロス』の後番組
1983年7月3日は、『超時空世紀オーガス』(以下、オーガス)の放送が開始された日です。超ヒット作『超時空要塞マクロス』(以下、マクロス)の後継番組として大きな期待を寄せられました。「オーガス」の独特なデザインや『マクロス』の「バルキリー」を上回る四段変形、作中に織り込まれた膨大なSF設定など前衛的な要素が多い意欲作でしたが、子供が作品内容を理解するのは難しく、ヒットには至りませんでした。『マクロス』が終わり『オーガス』を楽しみにしていたものの、話がよく分からずにオープニングとエンディングしか記憶できなかったライターの早川清一朗さんが回想します。
* * *
筆者がまだ小学生だった頃、TVはロボットアニメにあふれていました。膨大な作品群の中で時代を変化させるほどの力を持っていた作品はそう多くはありませんが、そのなかのひとつが『マクロス』だったのです。友達との遊びの予定を断って、日曜の昼に無理やり見ていた『マクロス』も無事に終了し、次の番組『オーガス』が始まると知った筆者は、『マクロス』を超える何かを見ることができるかもしれないと、とても楽しみにしていました。
そうして始まった『オーガス』でしたが、主人公機「オーガス」のデザインは、小学生には少し難しいものだったと感じました。前作の「バルキリー」と比較するとずんぐりむっくりしており、このデザインをカッコイイと思えるようになるまでには、筆者自身が十分な経験を積む時間が必要だったのです。
デザインを担当したのは超が付く一流デザイナーの宮武一貴氏でしたが、『オーガス』の製作時期は『聖戦士ダンバイン』や『マクロス』の劇場版の作業も重なり多忙を極めるなかでも「主人公陣営の機体は曲線」「敵方は直線」と意欲的にデザインの切り分けを試みていました。しかしながらおもちゃの売れ行きは芳しくなく、スポンサーのタカトクトイスが倒産の憂き目を見る遠因となってしまったのは返す返す残念です。当時の子供たちには、まだオーガスは早すぎたのでしょう。
■1話から大人の展開!
『超時空世紀オーガス』サウンドトラック(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
早すぎると言えば、ストーリーも子供にはだいぶ早すぎるものでした。1話で主人公である桂木桂は恋人のひとり、ティナ・ヘンダーソンとの逢瀬に及んでいます。このとき実は子供ができており、後に敵のエースパイロット、アテナとして登場するのですが、リアルタイム視聴時には気づいていなかったと思います。
また、時空振動弾の発動により桂がとばされてしまった場所は複数の並行世界が存在している混乱した世界というのも、まだ知識が足りない小学生時代の筆者には、理解が追い付かない設定でした。
特に『オーガス』の放送時間は日曜日の午後という特殊な時間帯であり、家族と出かけたり友達と遊びに行ったりすると、なかなかアニメを見ることはできませんでした。当時は家庭用録画機材があまり普及していなかったため、一度見逃すとストーリーを追えなかったのです。作中で語られる膨大な設定も切れ切れに明かされる形となってしまい、いつしか「このアニメ、分からない」と無理に時間を作って見るのは諦め、たまに雨の日に見るくらいになっていきました。
このように子供時代の『オーガス』の印象はそれほど強いものではありませんでしたが、それでもケーシー・ランキン氏が歌い上げるオープニング『漂流~スカイハリケーン~』とエンディングの『心はジプシー』は記憶に残り続け、今でもたまにカラオケで歌うことがあります。
そしてそれから10数年後、たまたま『オーガス』を見返すことになった筆者は、世界を形作る膨大な量のSF知識と、それぞれの立場で苦悩するキャラクターたちの群像劇がストーリーに良く練り込まれた作品であったことに気づき、驚かされたのです。特に少女型人造人間であるモームのかわいらしさと切ない最後には、心を打たれました。
設定を理解するのに十分な知識を持ち、続けてストーリーを追えるようになったからこそ真価を発揮する作品、それが『オーガス』なのでしょう。もし当時見ていて消化不良を感じていた方がいたら、ぜひ、見返してみることをお勧めします。大人になった今であれば、この作品が持つ奥深さに気づけるのではないかと思えるのです。
(早川清一朗)
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