苦労の連続だった初代『ロボコン』 制作現場で生まれた画期的な「発明」とは
マグミクス / 2020年7月22日 19時10分
■「ロ~ボコン、0点!」
1974年から77年にかけて放送された特撮テレビドラマ『がんばれ!!ロボコン』(以下、ロボコン)シリーズの最新作、『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』の上映が7月31日にスタートします。1999年にもリメイク版『燃えろ!!ロボコン』が放送されるなど45年以上にもわたって愛されるシリーズとなっています。
しかし当初、ロボットのコメディという前例がない特撮番組を実現させるまでにはさまざまな苦労がありました。制作陣の苦労など全く知らず、小さいころに『ロボコン』を見て楽しんでいたライターの早川清一朗さんが語ります。
* * *
『ロボコン』と聞いて真っ先に思い出すのが、ガンツ先生の「ロ~ボコン、0点!」という台詞です。小さいころにはテストの点が悪かったクラスメイトを「だ~れだれ、XX点!」とガンツ先生の真似をしてからかっていた記憶もあります。さすがに昔の話なのでもう名前も覚えておりませんが、この場を借りて当時のクラスメイトに謝罪します。どうもすみませんでした。
さて、『ロボコン』はロボット学校に通っているG級ロボットのロボコンが、A級ロボットを目指して、持ち前のロボ根性で奮闘する物語です。放送話数は118話と、現代のように特撮番組の放送は最大でも1年間と決められている状況下では、おそらく二度と『ロボコン』を超える話数の作品は登場しないであろう偉大な記録です。
ただ、この時代は特撮と言えばヒーローが主流の時代であり、ロボットによるコメディ番組の実現にこぎつけるまでには、並々ならぬ苦労があったそうです。
本作をプロデュースしたのは、『仮面ライダー』シリーズを立ち上げた平山亨氏と、後に多くのスーパー戦隊シリーズをプロデュースした鈴木武幸氏です。特に鈴木氏にとって本作は特撮番組のデビュー作であり、著書「スーパーヒーロー 夢を追い続ける男」でも多くの苦労話を語ってくださっています。
■特撮に息づく、ロボコン発祥の技術
最新作『がんばれいわ!!ロボコン』では新しい「ロビンちゃん」(土屋希乃)も登場。トルネード婆々(清水ミチコ)とともに、中華料理屋での騒動に巻き込まれていく
『ロボコン』では、着ぐるみにロボットとしての質感を出すためFRPという強化プラスチックを使用しているのですが、出来上がった着ぐるみは立つことすらままならないほど重く、重量に耐えつつ演技ができる人を探すこととなりました。視界も悪く、重量もある着ぐるみの中に入りながら、子供たちの動きについていくのは、大変な苦労があったことと思います。
さらには『ロボコン』は怒ると耳から煙が出るのですが、これは当然ながらCGではなく実際に火薬を使用しています。もし量を間違えたら頭が爆発してしまうため、慎重にテストを重ねて無事撮影に成功したそうです。
そして、特撮史上画期的な発明となったのが、目を使っての表情演出でした。ロボコンはアクションや台詞で感情を出すことはできますが、表情が動かないためどうしても不自然になってしまっていたのだそうです。そこで怒ったり泣いたりしている目のパターンをいくつか作って撮影し、よりはっきりとした感情を表現できるように工夫がされていました。
これと近い手法は現代でも使われており、今年2020年に放送されている特撮番組『ウルトラマンZ』に登場する対怪獣用ロボット「セブンガー」は、まぶた(?)の角度でトロンとした目やシャキンとした目を演出し、活動停止状態の場合は目にバッテン印を入れるなど、機体の状況が表情として理解できるようになっています。ロボコンで生み出された手法は、特撮の世界に延々と息づいているのです。
そして何と言っても、『ロボコン』に欠かすことができない、ロビンちゃんの存在です。ロボコンとは対照的に、優美で可憐なバレリーナ星のお姫様を演じたのは、後に女優・歌手として活躍される島田歌穂さんです。当時、バレエが踊れてお芝居ができ、なおかつめちゃくちゃ可愛い女の子を探すのはかなりの苦労があったそうで、撮影期日が迫るなか、鈴木プロデューサーもキャラクターの変更を考えるほど追い詰められていたと著書で語っています。
さまざまな苦労を経て完成した『ロボコン』は、子供たちの熱烈な支持を受け、発売したおもちゃも大ヒットするなど、特撮番組の世界に大きな足跡を残しました。果たして最新作『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』ではどのようなロボコンが見れるのか楽しみではありますが、どうやら汁なしタンタンメンが恋をしているようなので、きっとものすごく異次元感のあるストーリーが楽しめそうだと、今からワクワクしています。
●参考文献「スーパーヒーロー 夢を追い続ける男」 著:鈴木武幸 講談社
※映画『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』7月31日金曜日全国公開予定。
(C)石森プロ・東映
(早川清一朗)
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