『ジュラシック』以外にも! マイケル・クライトン原作の近未来映画4選
マグミクス / 2020年7月24日 17時10分
■多才だったマイケル・クライトン氏
恐竜好きには見逃せない、映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018年)が「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)で地上波初放映されます。シリーズ第1弾となったスティーブン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』(1993年)は、CGで再現された恐竜たちのリアルさが話題を呼び、メガヒットを記録。『炎の王国』はシリーズ第5弾となる最新作です。2020年7月24日(金)21時より、放送枠を30分拡大してのオンエアとなります。
最新の遺伝子技術によって蘇った恐竜たちが大暴れする、人気シリーズ「ジュラシック・パーク」。琥珀に閉じ込められていた太古の蚊から、恐竜たちのDNAを抜き出すという秀逸なアイデアを思いついたのが、米国の人気作家マイケル・クライトン氏でした。クライトン氏は2008年に66歳で亡くなっていますが、実に多彩な作品を残しています。
天才児だったクライトン氏は、ハーバード大学で英文学、考古学、さらに医学を学びました。医学生としての体験をもとに執筆した小説『五人のカルテ』は、人気医療ドラマ『ER 緊急救命室』の原案となっています。数多くの小説がベストセラーになった他、映画監督、脚本家、プロデューサーとしても才能を発揮しています。
■ユル・ブリンナーが怖い『ウエストワールド』
クライトン氏が映画監督として脚光を浴びたのが、SF映画『ウエストワールド』(1973年)でした。舞台となるのは、大人向けのアミューズメントパークです。パーク内は、西部開拓時代、中世のヨーロッパ、帝政ローマ時代に分かれており、それぞれ最新テクノロジーを駆使した人間そっくりなロボットたちが出迎えます。入場者はロボットたちを相手に、その時代の暮らしを楽しむことができるのです。
ところがパーク内のコンピューターに誤作動が生じ、ロボットたちが暴走を始めます。なかでも恐ろしいのが、黒づくめのガンマン(ユル・ブリンナー)です。それまで入場者にやられ放題だったガンマンは、次々と人間に襲い掛かります。最新設備が自慢のパーク内で事故が起き、大パニックに陥るという展開は、のちの『ジュラシック・パーク』にも生かされることになります。
ユル・ブリンナーといえば、西部劇の名作『荒野の七人』(1960年)ではリーダー格のクリスを演じるなど、「正義の味方」のイメージが強かっただけに、殺人ロボットに変貌した姿は強烈なインパクトがありました。1978年に「ゴールデン洋画劇場」(フジテレビ系)で放映され、日本の子供たちは震え上がりました。米国人にとっても忘れられない作品となっており、2016年から連続ドラマ化され、Amazonプライム・ビデオで現在配信中です。
■未知なる病原体との闘い『アンドロメダ…』
名匠ロバート・ワイズ監督が、マイケル・クライトン原作小説をベースに映画化したのがSFバイオサスペンス『アンドロメダ…』(1971年)です。米国の田舎町に人工衛星が落下し、町民たちは謎の奇病によって命を落とします。救助隊も次々と倒れていきます。
緊急事態として呼び出された科学者たちが調べると、地球上には存在しない未知の病原体が原因だと判明します。一方、米軍はこの病原体を吹き飛ばすために、核爆弾を使用することを決めます。科学者たちが病原体への対処法を突き止めるか、核爆弾の使用が先かという時間との闘いとなるのです。目には見えない小さな微生物によって、人類は存亡の危機に立たされるのでした。
派手なアクションシーンは少ないため、SF映画としては地味に感じた『アンドロメダ…』ですが、新型コロナウイルスによって医療崩壊や都市封鎖が現実のものとなった現在では、クライトン氏はとても先見の明があったことが分かります。
■ロボット犯罪に立ち向かう『未来警察』
トム・セレック主演、マイケル・クライトン脚本・監督作『未来警察』(1984年)も、時代を先取りした内容でした。近未来、ロボットたちは日常生活を送る上で欠かせない存在となっており、主人公のラムゼイ警部補(トム・セレック)はロボットが起こすトラブルを処理する専門班に配属されています。
ロックバンド「KISS」のジーン・シモンズが悪役を演じた、B級アクションっぽい仕上がりでしたが、小型の無人偵察機や追尾機能付きのロケットランチャーなどのハイテクツールが登場。また、ロボット犯罪に対処する警官が主人公という設定は、オリジナルビデオアニメ『機動警察パトレイバー』(1988年~1989年)に先駆けた作品でした。
■逆セクハラを題材にした『ディスクロージャー』
最後に紹介するのはSFではありませんが、やはり時代を先取りした作品です。マイケル・ダグラス主演作『ディスクロージャー』(1994年)は、「パワハラ」「セクハラ」をテーマにしています。しかも、男性社員が女性上司に追い詰められる「逆セクハラ」を扱っています。
ハイテク企業に勤める部長のトム(マイケル・ダグラス)の前に、かつての恋人メレディス(デミ・ムーア)が副社長となって現れます。就業時間を過ぎ、副社長室に呼ばれたトムは、メレディスに誘惑されます。既婚者であるトムは、寸前のところで振り切りますが、トムの態度にメレディスは激怒。翌日から、さまざまな嫌がらせに遭うはめになります。
セクシーな女性上司に迫られるなんてうらやましい、と思えるのは最初だけ。トムは職場だけでなく、家庭でも居場所を失い、『ジュラシック・パーク』ばりの恐怖を感じることになるのです。
幅広い教養と鋭い着眼点で、これからの人間社会に起きうることをクライトン氏は次々と予見してみせました。『ジュラシック・ワールド/炎の王国』をきっかけに、ぜひクライトン氏の多彩な作品を楽しんでみてください。
(長野辰次)
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