2021年にアニメ化『すばらしきこのせかい』 渋谷を描いたアクションRPGの魅力
マグミクス / 2020年7月27日 12時10分
■東京・渋谷を再現した世界観
”寝食を惜しんでプレイに励んだゲーム”というものは、何年経っても記憶から消えることはないと筆者は感じています。それが複数人で盛り上がったのならなおのこと、親しい間柄における宴席の肴にすることも珍しくありません。本稿でご紹介するニンテンドーDS(以下、DS)用ソフト『すばらしきこのせかい』(以下、すばせか)もまた、筆者が友人たちと徹夜の末にエンディングまで駆け抜けた今なお印象深い1本です。
本作は2007年7月27日にスクウェア・エニックスより発売されたRPG。開発にはキャラデザインを担った野村哲也氏をはじめ、同社が手掛ける「ファイナルファンタジー」シリーズ、および「キングダムハーツ」(以下、KH)シリーズのスタッフが関わっており、一部の登場キャラクターは「KH」の関連タイトルへゲスト出演も果たしています。
筆者が本作を手にとったのは中学1年生の夏ごろ。ゲーム雑誌に掲載されていた「美咲 四季(以下、シキ)」(CV:鉢嶺杏奈)のキャラクターイラストがたまたま目に入り、「こんなにかわいいヒロインが活躍するなら、きっとゲームも面白いに違いない!」という、ある種の下心に駆られて購入に至りました。そしてその期待は、予想を遥かに上回る形で”良い方向に”裏切られることになります。
『すばせか』の主人公「桜庭 音操(以下、ネク)」(CV:内山昂輝)は、現実世界にそっくりの奇妙な空間「UG」(アンダーグランド)にて目覚めた15歳の少年。周囲を見渡すと現在地は渋谷であると判明しますが、人々の想いが自身の脳内へと流れ込む不可思議な感覚に襲われます。自分は目覚める前にどこで何をしていたのか。記憶も曖昧なまま、ネクはUG内の渋谷を舞台に繰り広げられる不可解な”死神のゲーム”に巻き込まれていきます。
本作の特徴として挙げられるのは、東京都・渋谷の雰囲気を丁寧に再現している点。冒頭のイベントにて映し出される「スクランブル交差点」をはじめ、待ち合わせ場所でおなじみ「忠犬ハチ公像」に「モヤイ像」、「渋谷PARCO」や「タワーレコード」といった各種ショップ、さらに作中の重要ダンジョンとして描かれた「渋谷川」などなど、有名スポットがデフォルメ化された上で幾つも登場していたのです。当時の筆者はゲーム内の光景を通して現実の渋谷に思いを馳せつつ、死神のゲーム主催者から課せられたミッション達成に奔走。当初の願い通り、シキを筆頭としたキャラクターたちとの交流に勤しんでいました。
■『すばせか』の独自性を高めたバトルとサウンド
サウンドトラック『すばらしきこのせかい Crossover~Tribute』(スクウェア・エニックス)
物語の紡がれ方や現実を模倣した世界観と並び、「ストライドクロスバトル」と呼ばれる戦闘システムも独自性が高かったように思われます。これはDSのアイデンティティと言うべき、上下2枚のスクリーンをふんだんに活用したギミックで、敵との戦闘時にタッチペンと十字キーを使って相手にダメージを与えるというもの。敵をタッチペンでなぞったり、マイクに音声を向けたりすると攻撃が発動するなど、下画面はDSの機能を頼りにバトルが進行しました。一方の上画面も同様の敵が出現しますが、こちらは画面のコマンド表記に従って十字キーを入力するとダメージが発生する仕組み。つまり、バトル毎に左手(十字キー)と右手(タッチペン)で異なる操作が求められたのです。
こうした戦闘周りも含めて、本編を否応なく盛り上げたサウンドも注目に値するポイント。ゲーム中にかかる30以上の楽曲の半数はボーカル付きとなっており、戦闘時にバックで流れる「Twister」も例外ではなく、両手をせわしなく働かせるプレイヤーの心境をスタイリッシュに盛り上げてくれました。ちなみに2012年にリリースされたiOS向けアプリ『すばらしきこのせかい -Solo Remix-』(2014年よりAndroid向け配信開始)では、容量の関係からDS版に入らなかったBGMのフルバージョンを合わせ、合計60近くの楽曲を収録。DS版以上にボリュームの増したサウンド面が、物語の臨場感を高めるのに大きく貢献していました。
これまでDSの名作RPGとして、やや隠れ目ながらも多くのユーザーに愛されてきた『すばせか』。本作は発売から13年経った2020年現在、テレビアニメ化の発表を受けて再び話題を集めています。死神のゲームに潜む謎とキャラクター間の人間ドラマはどのように描かれるのか。戦闘シーンの描写は作画でどう捉え直されるのか。筆者が心を奪われたシキは果たして生き生きと動いてくれるのか。2021年の放送開始(予定)が今から待ちきれません。
(龍田優貴)
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