「わりきれない」数字の真実『科学冒険隊タンサー5』 地球には3794の謎がある?
マグミクス / 2020年7月27日 18時10分
■10割る3だと割り切れない
1979年7月27日は、『科学冒険隊タンサー5』(以下、タンサー5)の放送が開始された日です。ストーリー部分はアニメーション、メカのシーンは特撮と、『恐竜冒険隊ボーンフリー』や『恐竜大戦争アイゼンボーグ』といった、当時しばしば製作されたアニメと特撮を融合させた作品です。子供の頃に喜んで見ていたはずが、その後まったく触れる機会もなく、20数年後にあるきっかけで不意に記憶が蘇った経験を持つライターの早川清一朗さんが回想します。
* * *
最近ではまったく見かける機会はありませんが、筆者が子供の頃にはアニメーションと特撮を融合させた作品はしばしば放送されていました。しかし1980年代半ばにはまったく見かけなくなり、筆者の環境ではそれほど頻繁に再放送されることもなく、いつしか記憶の底に埋もれていきました。
筆者に『タンサー5』の記憶が蘇ったのは確か社会人になってからのことでした。当時、有志によって開催されていたアニソンのイントロクイズ大会に出場して惨敗した筆者は、次回に備え当時の友人と共に特訓に励んでいました。そんなある日、特訓中に友人が「これ分かりますか?」と言って流したのが、『タンサー5』のエンディング「わりきれなくて」だったのです。
「9割る 3だと割り切れる~ 10割る3だと割り切れない~」というユニークな歌詞を異様に良い声で朗々と歌い上げるこの曲は、すっかり忘れていたはずなのに、聞いた瞬間に「あ、これ『タンサー5』だ!」と記憶の底から蘇ってきたのです。
この曲のボーカルはビリー山口氏。一時は上條恒彦氏の変名とされていましたがこれは誤りで、実際には多くのミュージカルで音楽監督を務めるなど幅広い活動で日本音楽界を盛り上げてきた重鎮、山口琇也氏の変名のようです。本作ではオープニングの「タンサー5のテーマ」も担当しており、子供たちに向けて極めてハイレベルな歌唱力を披露してくれています。その印象的な歌声は、最後に聞いてから20年以上が経過しても、はっきりと脳裏に刻み込まれていたのです。
■地球には3794の謎がある
『恐竜探険隊ボーンフリー』画像はDVD-BOX(東宝)
さて、肝心の『タンサー5』の概要ですが、世界各地の古代遺跡で発生した異常事態を解決するために5人の男女と支援メカで編成された「科学冒険隊タンサー5」が、異変の原因を解決するために過去に飛ぶ物語です。(※記事終盤に登場キャラクターに関するネタバレを含みます)
主人公たちは通常海上基地「アクアベース」で待機しており、異常が起こると大型飛行メカ「ビッグタンサー」で調査に向かいます。状況を確認すると、次は「タイムタンサー」に乗り込み以上の原因が発生している年代に飛び、飛行メカ「スカイタンサー」、地上地下両用車両「ランドタンサー」、海中探査用メカ「アクアタンサー」で調査を行うのです。
オープニングの冒頭では『ルパン三世』の次元大介役でおなじみの小林清志氏による「地球には3794の謎がある」とナレーションが入るのですが、作中では特に3794という数字に言及されることはありませんでした。監督の四辻たかお氏が後にインタビューで語ったところによると、ナレーションをお願いするときにその場で考えて書いた数字だそうで、その後ポスターでは3792に変更されています。この変更理由も四辻氏は特に覚えていないとのことで、当時の勢いと切迫した製作状況が伺えます。
『タンサー5』は日本サンライズ(現:サンライズ)が初めてゴールデンタイムで製作したアニメです。当時は『機動戦士ガンダム』ほか合計5本の作品を並行して製作していたため、四辻氏も「会社のキャパシティを越えて作っているから人がいなかった」と苦労を語っています。
それでも作品のサブタイトルを見れば「アトランティス」「ストーンヘンジ」「ネス湖」など、当時の子供が目を輝かせるような単語がずらりと並んでいます。長らく幻の作品と呼ばれてきた本作ですが、今では「バンダイチャンネル」「dアニメストア」にて配信されており、かつての有志を見ることができるようになっているのはありがたいことです。もし、昔『タンサー5』を見ていた方がいましたら、ぜひ見てみると良いでしょう。きっと子供の頃の世界の謎にワクワクしていた自分に出会えるはずです。
ただ1点、29話でメインキャラのひとりであるユメトが殉職しているのですが、残念ながらこの話で脚本を務めた四辻監督も死なせた理由を覚えてはいないそうです。ユメトの死は、おそらく『タンサー5』永遠の謎として語り継がれていくのでしょう。
(早川清一朗)
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