まさか“永遠の17歳”が荒々しい声を!? 格闘ゲーム『ラストブロンクス』

マグミクス / 2020年8月1日 18時10分

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■玉石混交だった対戦格闘ゲーム

 1997年8月1日はセガサターン版『ラストブロンクス』が発売された日です。ストリートギャング同士の抗争という独特な設定のタイトルで、プレイヤーキャラクターが実在する武器を使用して戦う3Dタイプの対戦型格闘ゲームです。当時としては珍しく、人気声優陣がキャラクターのボイスを担当しており、意外な方が珍しいタイプのキャラクターの声を吹き込んでいます。ある声優さんのボイス聴きたさに『ラストブロンクス』を購入したライターの早川清一朗さんが当時を回想します。

* * *

 筆者が初めて『ラストブロンクス』に触れたのは、1996年のゲームセンターでした(アーケード版タイトルは『ラストブロンクス -東京番外地-』)。当時は対戦格闘ゲームが大きなムーブメントを巻き起こしており、『ストリートファイター』や『サムライスピリッツ』、『キングオブファイターズ』『バーチャファイター』『餓狼伝説』など様々なタイトルがシリーズ化され、しのぎを削っていました。しかし当時の対戦格闘ゲームの世界は現代からは考えられないほど多数のタイトルが発売されており、ほとんど顧みられないような作品もあれば独特の個性を発揮していた印象深い作品もあり、まさに玉石混交の様相を呈していたのです。

 当時の筆者はゲームセンターにずらりと対戦台が並んでいるような流行りの対戦格闘ゲームをプレイしつつも、新作として一台だけ入荷されるタイプのゲームも好んで遊んでしていました。『ラストブロンクス』もそのようにして触れたタイトルだったのです。

 このタイトルを遊んだ時に真っ先に気付いたのが、キャラクターのボイスを、知っている声優さんがやっていたことでした。「お、これは矢尾一樹さんだ」「これは塩沢兼人さんだな」「このキャラは玄田哲章さんだ」と、次々と声優を言い当てる筆者を当時の友人たちはどう思っていたのか定かではありませんが、きっとダメ人間だと思っていたことでしょう。

 そうして大半のキャラクターの声を判別し終えたのですが、豊饒梛(以下、ナギ)だけはどうしてもわからなかったのです。いえ、正確に言えば聞いたことのある声でした。しかしあまりにもイメージが違いすぎ、「え、まさかなあ……」と確信が持てなかったのです。

 しかし、そのまさかが正解でした。

 ナギの声優は井上喜久子さんだったのです。

■井上喜久子さんの声聴きたさにセガサターン版を買った

著:藤島康介『ああっ女神さまっ』Kindle版第1巻(講談社)

 井上喜久子さんと言えばデビュー当時から今に至るまで、もう随分長い間17歳のままお年を召されることなく高い人気を獲得し続けている声優です。1996年の時点でも『らんま1/2』の天道かすみや『ああっ女神さまっ』のベルダンディーなど複数の当たり役を演じており、強い存在感を放っていました。

 ただ、井上さんと言えば柔らかい物腰のお姉さん系のイメージが強かったのですが、『ラストブロンクス』で演じていたナギは、サイと呼ばれる琉球古武術の武器を使う、レディース「怒愚魔(ドグマ)」のリーダーという設定のキャラでした。

 あの井上さんが「はっ!」「失せろ」「もう少し遊んであげてもいいわよ」など、荒っぽい口調メインのキャラクターのボイスを当てていることに、当時の筆者はかなりの衝撃を受けたことを覚えています。それ以上に、自分が井上さんの声を聞き分けられなかったことも、修行不足を思い知らされました。
 
 それからしばらくの間、筆者はナギ使いとしてゲームセンターで『ラストブロンクス』をプレイしていたのですが、キャラクター間のダイヤグラムバランスが偏っていたこともあり、筆者の周囲ではあまり流行らず直に姿を消してしまいました。対戦格闘ゲームがたくさん出ていた時代、見切りを付けられるのも早かったのです。

 そうして1997年8月、無事に発売されたセガサターン版を購入した筆者は、思う存分やり込み、そして井上さんのボイスをひたすらに脳に刻み続けました。

 格闘ゲームタイトルとしては珍しいタイプの武器の使用やアタックキャンセル、相手の懐への潜り込みなど、さまざまな試みが取り入れられていましたが、やはり『バーチャファイター2』の壁は厚く、それほど流行はしませんでした。それでも25年近くが経った今でも、井上さんの荒々しい声と共に、『ラストブロンクス』は筆者にとって思い出深いタイトルとなっています。

(ライター 早川清一朗)

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