TVアニメからファミコンの流れ『六三四の剣』 クソゲーか?と様子を見ると…
マグミクス / 2020年8月8日 19時10分
■ファミコン初の対戦モード実装タイトル
1986年8月8日は、タイトーからファミコン用ソフト『六三四の剣 ただいま修行中』が発売された日です。村上もとか先生が「週刊少年サンデー」に連載し、TVアニメ化もされたマンガ『六三四の剣』を原作としているアクションゲームです。ファミコンで初めて対人戦を主眼においたモードが実装されたタイトルで、駆け引きの面白さを味合わせてくれました。剣道をやっていた友達が購入したので借りてプレイした経験を持つライターの早川清一朗さんが、当時を回想します。
* * *
『六三四の剣』というマンガをご存じでしょうか。後に『JIN-仁-』など多数の大ヒット作を世に送り出した村上もとか先生が1981年から1985年にかけて「週刊少年サンデー」で連載した剣道マンガで、1985年から86年にかけてTVアニメ化もされています。
この物語は剣道一家に生まれた主人公の夏木六三四が剣道を通じて成長していく正統派のスポーツ青春作品です。父親の壮絶な死や東堂修羅をはじめとするライバルたちとの熱い戦い、ヒロインたちとの不器用な恋愛模様など、「これぞ少年マンガ」と言える要素がぎっしりと詰め込まれています。いま読んでも間違いなく楽しめる傑作なので、未読の方はぜひ読んでみることをお勧めします。きっと後悔することはないでしょう。
さて、『六三四の剣』がTVアニメ化されていた時期は、ちょうどファミコン人気が沸騰していた時期とも重なっています。こうなれば、ファミコンでゲーム化されるのも世の必然と言えるものでしたが、ひとつ懸念がありました。それはアニメ作品がゲーム化された場合、クソゲーである確率が高かったことです。
筆者自身も大好きなアニメのキャラクターが登場するゲームをプレイしてみて、「なんかすごくつまらない」という経験をすでに何度もしていました。結局このときはさんざん迷った揚げ句『ワルキューレの冒険』を購入し、『六三四の剣』は見送ることにした記憶があります。
しかしこのとき筆者にはある計算がありました。筆者のクラスメイトには剣道をやっている人間が何人かいたので、きっと誰かが買う、そう判断したのです。
そしてその読みは見事的中することになりました。
■結構熱かった対戦モード
ある友人が『六三四の剣 ただいま修行中』を購入したと聞いた筆者はしばらく待ち、飽きるころを見計らって上手く借りることに成功しました。
1人プレイでのゲーム内容は、まず横スクロールアクションのマップをさまざまなアイテムを集めながらクリアする必要がありました。その後、全国大会編という対CPU戦モードに移行し、剣道の試合を勝ち進むとクリアという形式になっていました。
最初の横スクロールアクションが、結構なクセもので、そこら中に穴が開いているのですが、落ちると即死というシビアなものでした。このあたりはいかにもファミコンのアクションゲームという感じですが、道中に落ちているアイテムをどれだけ集められるかが全国大会編に大きく関わってくるのです。特に竹刀をたくさん集めておかないと、全国大会編で必殺技を出せなくなるので、かなり頑張って集めていた記憶があります。
全国大会編では原作やアニメに登場したライバルたちとの勝ち抜き戦が行われるのですが、これがかなり難しく、下段の竹刀アイテムを使い切ったらもうお手上げでした。しかも途中で負けると1回戦からやりなおしでアイテムの補充もなかったので、あきらめてリセットボタンを押していた記憶があります。この記事を書くためにゲームの内容を調べ直し、2周目があると知って心底驚きました。当時、クリアできた人はいたのでしょうか。
『六三四の剣 ただいま修行中』の神髄は、やはり対人戦にあったのだと思います。『バルーンファイト』や『マリオブラザーズ』などでお互いのつぶし合いをしたことはありましたが、完全に「人対人」を意識したファミコンのゲームは、確かにこのタイトルが初めてだったように思えます。
登場キャラクターもそれぞれの個性に合わせた必殺技を持っており、一緒に何度も対戦を繰り返して楽しんでいた記憶があります。特に筆者が気に入っていたキャラクターは武者先輩で、当たろうが当たるまいがかまわずマシンガン突きを繰り出しては、友人とふたりで大笑いしていました。いったい何が面白くて大笑いしていたのかは今となっては思い出せませんが、遠い日の大切な記憶として、今も大事に心に留め置いています。
(早川清一朗)
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