「ファミコンウォーズが出るぞ!」ゲーム映像を一切使わずインパクトを残したCM
マグミクス / 2020年8月12日 9時10分
■強烈なインパクトのTVCM
1988年8月12日は、任天堂から『ファミコンウォーズ』が発売された日です。「ファミコンウォーズが出るぞ!」というフレーズを連呼するTVコマーシャルで強い印象を残した作品ですが、ウォー・シミュレーションゲームとしても兵器の細かい仕様などマニアックな部分を排除し、分かりやすくプレイしやすい良作として親しまれました。当時、TVコマーシャルをリアルタイムで見た経験を持つライターの早川清一朗さんが記憶を回想します。
* * *
「ファミコンウォーズが出るぞ!」
突然TVから流れてきた声に、いったい何事かと驚いたのをよく覚えています。そのとき画面のなかでは銃を手にしたアメリカの軍人たちがトレーニングをしながら、
「かあちゃんたちには内緒だぞ!」「かあちゃんたちには内緒だぞ!」
「こいつはどえらいシミュレーション!」「こいつはどえらいシミュレーション!」
「のめりこめ!」「のめりこめ!」
と叫び続けていました。これほど強烈なゲームのCMは、30年以上が経った今なお、他に見たことがありません。しかもこの記事を書くにあたり改めて内容をチェックしてみたところ、ゲームの画像が1枚も使われていないのです。当然内容も説明されていません。ただインパクトだけが強烈で、しかも狙いが見事に成功していたCMでした。なお、発売後のCMでは、「ファミコンウォーズが出るぞ!」が「ファミコンウォーズが出たぞ!」に差し替えられています。
そして当時は気付いてはいませんでしたが、CMの内容は映画『フルメタル・ジャケット』のパロディだったのです。最後に少しぽっちゃりした兵隊がヘロヘロになりながら付いていこうとしているのを、横で教官が罵倒しているので間違いないでしょう。『フルメタル・ジャケット』のほほえみデブことレナードと、ハートマン教官の構図そっくりです。
このCMの特に面白かった点は、セリフのなかに「かあちゃんたちには内緒だぞ!」という言葉があったところでしょうか。1988年と言えばファミコンブームが頂点を極めていた時期であり、筆者もファミコンのやりすぎで母親に何度も怒られ、ACアダプターを隠されたことがあります。母ちゃんたちに苦しめられるファミコン少年たちの心には、特に刺さる言葉だったのではないでしょうか。
■ウォー・シミュレーション未体験者に最適なゲーム性
さてこの時期、ウォー・シミュレーションゲームは主にボードゲームやパソコンゲームで遊ばれているジャンルでした。特にパソコンではシステムソフトの『大戦略』という名作がすでに登場しており、年長の方々に大人気だったと聞いています。
しかしながら、ファミコンでゲームにハマった小中学生にとって、ウォー・シミュレーションゲームは未体験に近いジャンルでした。厳密に言えばディスクシステムで発売された『SDガンダムワールド ガチャポン戦士 スクランブルウォーズ』が多くの子供たちにとって初めてのウォー・シミュレーションだったとは思いますが、このタイトルはあくまでも「ガンダム」のゲームであり、駒として使用するユニットもガンダムのなかに登場する、親しみのあるものでした。
その点、『ファミコンウォーズ』は詳細な設定を重視する傾向にあるウォー・シミュレーションでは異例ともいえる、ユニットの簡略化を行っていました。たとえば戦車なら戦車、自走砲なら自走砲という具合にです。これが他のゲームであれば、機種ごとに細かく仕様を設けるところでしょうが、ここをざっくりと排除したことにより、ユニットの種類や役割がとても分かりやすくなっていたのです。
また、戦闘の結果にランダム性がほとんどなく、あるユニットにどのユニットをぶつけたら、どれだけの戦果が上がるのか、損害が出るのか計算しやすくなっていました。ユニット同士の相性もはっきりしており、いうなれば、フィールドマップを使って行う緻密なじゃんけん大会のようなゲームとなっていたのです。
筆者は『ファミコンウォーズ』を買ってもらえなかったのでしばしば友人宅で対戦させてもらいましたが、大抵の場合、やりこんでいる友人には歯が立たず、悔しい思いをさせられていたのを思い出します。あのときは、ゲームを攻略するのではなく、人と戦う面白さを味わっていたのだと気づいたのはごく最近のことです。
人の考えた陣形や戦術を、自分の考えで撃破する。この概念を教えてくれたのが、『ファミコンウォーズ』でした。おそらく、同じような経験を持つ方は多いのではないでしょうか。
(ライター 早川清一朗)
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