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朝ドラ『エール』で注目の古関裕而氏が作曲、『モスラの歌』の背景にあった戦争体験

マグミクス / 2020年8月14日 18時10分

朝ドラ『エール』で注目の古関裕而氏が作曲、『モスラの歌』の背景にあった戦争体験

■生涯に5000曲を作曲、「六甲おろし」や甲子園大会の歌も

 作曲家・古関裕而氏とその妻・金子さんをモデルにした、NHK連続テレビ小説『エール』が放送中です。古関氏は早稲田大学の応援歌「紺碧の空」や、阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」など、多くの人に親しまれている曲を数多く作曲しました。生涯に5000曲以上もの曲を手掛けたと言われています。

 夏の甲子園大会歌「栄冠は君に輝く」も、古関氏の作曲です。また、スポーツ関連の応援歌だけでなく、1952年~1954年にオンエアされたNHKラジオドラマ『君の名は』の主題歌、さらには生放送中の伴奏も担当するなど、ドラマの分野でも大活躍しています。

 日本初の長編アニメとして知られている『桃太郎 海の神兵』(1944年)の音楽も、古関氏が手掛けています。動物たちが「あいうえおの歌」を歌うシーンはミュージカルタッチになっており、若き日の漫画家・手塚治虫氏は大変な感銘を受けたそうです。

■エキゾチックなメロディ「モスラの歌」

 古関氏が手掛けた映画音楽で、今なお多くのファンに記憶されているのが、怪獣映画『モスラ』(1961年)で歌われる「モスラの歌」です。非常にエキゾチックなメロディで、ザ・ピーナッツがデュエットする「モスラヤ モスラ ドゥンガン カヤクサン インドゥムゥ」という不思議な歌詞は、一度耳にすると忘れることができません。

 この歌詞は脚本家の関沢新一氏、本多猪四郎監督、田中友幸プロデューサーの共作によるもの。インファント島の守り神であるモスラに祈りを捧げる日本語の歌詞を、インドネシアからの留学生にインドネシア語に翻訳してもらったそうです。「モスラよ 永遠の生命 モスラよ(中略)我らを守れ 平和を守れ 平和こそは永遠につづく 繁栄の道」という内容です。決して、デタラメな言葉を口にしているわけではありません。

 ザ・ピーナッツが扮した小美人は、インファント島の調査隊の前に現われ、高い金属音を発します。人間には聞き取れない小美人のこの声は、古関氏がハモンドオルガンを演奏して表現したものです。古関氏は『モスラ』の演出面にも深く関わっていたことが、うかがえます。

■「モスラの歌」を生み出した南方体験

2003年の映画『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』でも、劇中で「モスラの歌」が歌われている。画像は同作DVD(東宝)

 東宝の怪獣映画というと、伊福部昭氏が作曲した『ゴジラ』(1954年)のテーマ曲も有名です。『ゴジラ』のテーマ曲が非常に重々しい印象を与えるのに対し、古関氏が作曲した「モスラの歌」はとてもファンタジックで、どこか温かみを感じさせます。とても対照的です。

 巨大な蛾の怪獣であるモスラの出身地・インファント島は、南方にある孤島という設定です。古関氏は福島出身ですが、人気作曲家だったことから戦時中はたびたび戦地への慰問を要請され、中国、台湾、シンガポール、ミャンマー、マレーシア、タイ、ベトナムなどを回っています。「露営の歌」などの国威発揚歌も作曲した古関氏は、自分が作った歌に見送られながら多くの兵隊たちが出征し、戦場で散っていったことに深い自責の念を覚えたそうです。古関氏自身も戦争末期に徴兵されています。

 小美人が歌う「モスラの歌」には、日本人が南方に抱く楽園のイメージと同時に、平和への願いが込められています。作詞を担当した関沢氏、本多監督も戦地からの帰還兵でした。古関氏らの戦争体験が投影された歌だと言えそうです。

■『モスラ』が後世に与えた影響

 古関氏が作曲した「モスラの歌」は、その後も続編『モスラ対ゴジラ』(1964年)などに受け継がれていきます。『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)では、10代のころの長澤まさみさん、大塚ちひろさんが小美人に扮し、「モスラの歌」を歌っているのにも注目です。

 東映動画(現・東映アニメーション)に勤めていたアニメーション作家・宮崎駿監督も、『モスラ』を劇場で観て、強い影響を受けています。宮崎監督のオリジナル監督作『風の谷のナウシカ』(1984年)に登場する王蟲(オーム)は、モスラの幼虫によく似ています。また、モスラが守るインファント島は、核実験による放射能汚染から免れたという設定になっていました。エコロジーの大切さを問う『風の谷のナウシカ』と繋がるものを感じさせます。

 現在、ドラマ『エール』はこれまでの放送分の再放送となっていますが、新作エピソードでは古関夫妻をモデルにした古山裕一(窪田正孝)と妻の音(二階堂ふみ)が戦争体験を経て、傷ついた人びとの心を音楽の力で勇気づけようと、新しい時代の音楽に向き合うことになるようです。映画『モスラ』の舞台裏が、どのように描かれるのか楽しみです。

(長野辰次)

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