今から『マクロス』を見るなら? 世界観をつかめる、おすすめ作品3選
マグミクス / 2020年8月15日 9時10分
■世代を超えた人気「マクロス」シリーズのおすすめ作
1982年に放送が開始された『超時空要塞マクロス』は先鋭的なメカデザインと圧倒的な戦闘演出、アイドルの歌、男女の三角関係を中心としたドラマ性といった要素を見事に融和させた作品として大人気となり、多くの派生作品を生み出しました。
また、TVアニメ『マクロスF』のオープニング主題歌「ライオン」はさまざまなアニソンランキングで上位にランクイン。また、『マクロスΔ』の劇中ユニット「ワルキューレ」によるシングル「未来はオンナのためにある」(2020年5月リリース)は「マクロス」シリーズ初、オリコン週間ランキングで1位を獲得するという快挙を成し遂げました。曲を耳にする機会はあってもアニメは見たことがない方へ、比較的短時間で「マクロス」の世界観をつかめるおすすめの作品を3作、ライターの早川清一朗さんが紹介します。
* * *
●『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984年)
TVアニメ『超時空要塞マクロス』の人気を受けて製作された劇場作品。TV版の1話から27話までのストーリーを再構成し、戦うことしか知らない男性型宇宙人「ゼントラーディ」と女性型宇宙人「メルトランディ」との果てしない戦いに巻き込まれた「SDF-1マクロス」とその乗組員たちが、アイドル歌手リン・ミンメイの歌を拠り所にして戦い、最後は地球人、ゼントラーディ、メルトランディが和解するまでを描いた物語です。後のシリーズ作品中では「2031年に公開された、史実を元にした歴史映画」という位置づけになっています。
劇場版製作にあたり、新規に異なる星の言語を作り上げてキャラクターにしゃべらせ、意味は字幕で表示するという前衛的な演出方法が話題となりました。設定においてもこの時作られた「プロトカルチャー(先史銀河文明)」という概念はマクロスシリーズ全体を通して重要なファクターとして扱われる重要なものとなりました。
TVではばらつきが大きかった作画のクオリティは美樹本晴彦氏、平野俊弘氏、板野一郎氏ら当代一流のクリエーターたちが中心となって統一を図り、絵の密度はさらに向上。現代の水準から見ても、若さと才能と情熱が生み出した作画の緻密さと迫力には鬼気迫るものを感じさせます。
また、リン・ミンメイ役の飯島真理さんが歌い上げた主題歌「愛・おぼえていますか」は「ザ・トップテン」「ザ・ベストテン」といった当時の人気歌番組でもランクインするほどの人気を誇った名曲です。
●『マクロスプラス』(1994~95年)
『マクロスプラス』画像はDVD Vol.3(バンダイビジュアル)
『マクロスプラス』は1994年から95年にかけて、全4話が製作されたOVA作品です。1995年には再構成されよりクオリティを高めた劇場版『マクロスプラス MOVIE EDITION』も公開されています。
初代『マクロス』から30年後、統合宇宙軍の次期主力戦闘機の採用コンベンションにおいて、多くのテストパイロットを破壊してきた「じゃじゃ馬」こと新型可変戦闘機「YF-19」を担当するイサム・ダイソンと、そのライバルで「YF-21」を担当するガルド・ゴア・ボーマン、かつての親友同士が出会ったことから、彼らの止まった時間が動き始めます。
さらにふたりの幼なじみであるミュン・ファン・ローン(CV:深見梨加/歌:新居昭乃)と彼女が操るヴァーチャルアイドルのシャロン・アップル(CV:兵藤まこ)、そして密かに開発された無人戦闘機ゴースト「X-9」が絡み合う重厚なストーリーは、かつて初代『マクロス』に熱中した世代から支持を受けました。
本作の見どころは、なんといっても20世紀最高峰と言える手描きアニメーションによる戦闘シーンです。特に終盤、イサムとガルドとの対決シーンに注ぎ込まれた熱量はすさまじいものがあります。
重力に軋む人体や機体、飛び交うミサイル、「YF-19」と「YF-21」の戦闘機動の迫力は、アニメでこれを超える作品は今なお存在しないと断言できるほどハイクオリティです。
そしてイサム役を演じた山崎たくみ氏、ガルド役を演じた故・石塚運昇氏による迫真の演技も、このシーンを1990年代きっての名作に仕立て上げてくれています。戦いの最中にふたりが繰り広げるバカバカしくも切ない会話の数々は、必聴です。
●『劇場版 マクロスF』(2009年、2011年)
『劇場版 マクロスF虚空歌姫 ~イツワリノウタヒメ~』 (C)2009 ビックウエスト/劇場版マクロスF製作委員会
2008年に放送されたTVアニメ『マクロスF』を2本の劇場版映画として再構成した作品。人気歌手シェリル・ノーム(CV:遠藤綾/歌:May’n)とパイロットを目指す元女形の少年である早乙女アルト(CV:中村悠一)、そして歌手を夢見る少女ランカ・リー(CV:中島愛)の三角関係と、昆虫型宇宙生物バジュラとの戦いが描かれます。
前編の『虚空歌姫 ~イツワリノウタヒメ~』(2009年公開)は当初、TV版の総集編プラスアルファ程度とされていながら、ふたを開ければ大半のシーンで新規作画・新規撮影が行われており、アフレコに至ってはすべて新規録音、新曲のライブシーンが追加されるなど、ほぼ新作と言っていい内容となっていました。また、ストーリーもTV版とは異なりますので、もしTV版は見たけど劇場版は見ていないという方にもおすすめします。
後編の『恋離飛翼 ~サヨナラノツバサ~』(2011年公開)は完全な新作として製作され、TV版とは異なるオリジナルのエンディングへと突き進んでいきます。シェリル、アルト、ランカ、それぞれが下す決断と、その結果はぜひ、一度ご覧になっていただきたいと思います。
(早川清一朗)
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