山村響＆二ノ宮ゆいが語る、アニメ『ピーター・グリル』の面白さと声優の仕事（後編）

■声優として演じることの大変さや難しさ

　2020年7月から放送・配信され、セクシーとギャグの要素が満載のアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』で、メインヒロインのひとりであるリサ・アルパカスを演じる山村響さんと、ルヴェリア・サンクトゥスを演じる二ノ宮ゆいさんは、それぞれアーティストとしても活躍中。優れた楽曲を発表し、ライブも行っています。

　二ノ宮ゆいさんがニノミヤユイ名義で歌うファーストシングル『つらぬいて憂鬱』は、『ピーター・グリルと賢者の時間』のオープニングテーマ曲に採用されています。インタビュー前編に引き続き、作品の魅力や、声優というお仕事の喜びや苦労について語ってもらいました。

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──声優として演技をすることの大変さや難しさは、どういったところにあるとお考えですか？

山村響さん（以下、敬称略）　どんなキャラクターであっても、他にはない、そのキャラクターならではの人生を背負っています。それが反映されてセリフとなった想いを、掘り下げて考えたり想像したりして、声だけで表現していかなければならない。そこが声優の難しさでもありますし、楽しさでもあると思っています。

二ノ宮ゆいさん（以下、敬称略）　やらせていただくほどに分からないことが増えていきますし、1年目より2年目の方が突き当たる壁は高くて大きいと感じています。ここまで想像力を求められる仕事とは最初は思ってもみませんでしたし、先輩方の演技を見ては、自分の勉強不足を日々痛感しています。先は見えないですけど、終わりがない道だからこそ、楽しみながら前に進まなきゃですね。

──二ノ宮さんは、お若くしてこの世界に飛び込んで来られたわけですが、怖くはなかったですか？

二ノ宮　最初は勢いに任せてましたから、「平気平気！」って自分で思ってたんです。デビューからしばらくすると、皆さんからの反響が聞こえてくるようになって、そこで初めて、人前に立つお仕事をさせていただくのがどういうことか、本当に理解した感じです。今ではどんなお仕事でも、始まる前は結構緊張しています。

──音楽活動についてもお話を伺いたいと思います。二ノ宮さんがニノミヤユイ名義で歌われている「つらぬいて憂鬱」は、『ピーター・グリルと賢者の時間』のオープニングテーマ曲でもあります。曲の魅力や聴きどころは、どういった点にあるのでしょうか？

二ノ宮　とてもキャッチーな曲と素晴らしいMVを作っていただけましたので、ぜひたくさんの方に聴いてもらえればと思います。私としては、歌詞にも注目してもらえると嬉しいです。弱い自分から変われないというテーマは、アニメの内容に意外と合ってるんじゃないかと思います。ピーターは毎回誘惑に抵抗しようとしますけど、毎回負けちゃいますから（笑）。

──山村さんの音楽は、アニメからは少し離れた、ひとりの女性が日々の暮らしの中で抱く様々な想いのようなものを表現しているように思います。

山村　声優が歌うのはアニソンなんだというイメージもあるかもしれませんが、無理にカテゴライズする必要はないと、私自身は考えています。聴く人の日常に寄り添うような音楽を、ずっと作りたいなと思って作ってきました。ですので、そんなふうに聴いていただけているのでしたら、本当に嬉しいですね。

■声優とアーティスト、取り組み方の違いは？

山村響さんのシングルCD『Suki』ネットショップサービス「BOOTH」で限定販売されるほか、各種配信サービスで視聴可能

──声優としてマイクの前に立たれている時と、アーティストとしてマイクの前に立たれている時で、取り組み方や気持ちに違いはありますか？

山村　声優としてやらせて頂く仕事の場合、原作者の先生や監督をはじめスタッフの皆さんが思い描く地図のようなものがありますから、その地図を頼りに歩調を合わせて進んで行きつつ、自らがパズルのピースになって空白を埋めていくことを、いつも意識しています。

　音楽の場合は、その地図を自分自身で描いたうえで、さまざまな方に共に歩いていただけるようお願いをするわけですから、そこのスタンスの違いはあると思います。

──例えば自分発信の音楽を披露するライブステージでは、アニメの収録とは違って、隣を見ても仲間の声優がいたりはしません。収録以上の重圧がかかるのではないですか？

二ノ宮　私は声優としてマイクの前に立つ時の方が、プレッシャーを感じるかもしれません。原作がある場合はその原作に対して、ある程度、作者の先生の中にもファンの皆さんの中にも、出来上がったイメージがあります。そこに自分が合わせにいくわけですから、どの程度までギャップを埋められているか、かなり不安は覚えます。音楽のように、自分自身の中に正解を持って取り組める方が、自信を持ってやれるのかもしれません。

山村　私は、ゆいちゃんとは真逆かも（笑）。声優の仕事の場合、マイクの前で演じた結果に対して、OKと言ってもらえるじゃないですか。もちろん、役を任せていただいた責任感に基づいて、自分なりにできることを精いっぱいやった結果ではありますが、「今ので正解だよ」と誰かに言ってもらえるのは、やっぱり安心感はあります。自分自身のなかに正解を見つけ出すのに、時間がかかるタイプなのかもしれないですね。悩み続けたままだと、関わって下さる人まで揺らいでしまいますし。

アニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』オープニングテーマ、ニノミヤユイさんが歌う『つらぬいて憂鬱』シングルCD（ランティス）

──これからの夢や目標を教えてください。

山村　夢や目標とは違うかもしれませんが、無理をして不自然にならないというか、自分自身に対して嘘のない表現を、少しずつでも形にしていけたらと考えています。思ってもいないことや、そんなつもりがないことを発信すると、やっぱり後から苦しくなりますから。

二ノ宮　私は声優としてもアーティストとしてもキャリアが短いですし、自信が持てないことも、まだまだたくさんあります。まずはそこをクリアして、自分がこう表現したいと思うものを、自信を持って皆さんにお届けできるようになりたいです。

■まっすぐな登場人物たちの「カオスな展開」見届けて

主人公が婚約者・ルヴェリアと本当に結ばれる日はくるのか…？『ピーター・グリルと賢者の時間』より

──最後に、『ピーター・グリルと賢者の時間』をご覧になっている視聴者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

山村　ピグリットちゃんも登場し、これからはヒロイン同士のバトルも繰り広げられると思います。他にも濃いキャラクターが登場して、ますます目が離せない展開になっていきます。絵に対する監督のこだわりも、要注目ポイントです。ぜひ、一度だけでなく、何度も繰り返しお楽しみください。もちろん、初めてご覧になる方も大歓迎ですよ。

二ノ宮　まっすぐな登場人物たちが、まっすぐに目標を達成しようとするあまり、ますますカオスで面白くなってきます。これからも、頭を空っぽにしながら大笑いしていただけるはずです。

　ルヴェリアがピーターのことを、恋人として心から想っていると、わかるシーンも出てきます。カオスを楽しみつつ、ルヴェリアの抱く恋心にも、目を向けていただけたら嬉しいです。

※アニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』は、TOKYO MX／とちぎテレビなどで、毎週金曜日深夜25時35分から放送／配信中です。

(C)檜山大輔／双葉社・「ピーター・グリルと賢者の時間」製作委員会

（取材／構成：香椎 葉平）