「スーパーカーブーム」を駆け抜けたTVアニメたち。子供たちが歓迎した作品は…?
マグミクス / 2020年9月12日 18時20分
■スーパーカーブームで男の子を熱狂させたものとは?
かつて日本中の男の子を熱狂させたスーパーカーブーム。そのきっかけは「週刊少年ジャンプ」に1975年から連載されていたマンガ『サーキットの狼』と言われています。このマンガの人気がどれくらいかと言うと、アニメにならなかったのが不思議なほどの勢いだったのです。
カバヤで販売された「エフワンガム」というオマケ付きガムのCMキャラクターになり、日東からは劇中に登場したバージョンのスーパーカーのプラモデルが発売されています。しかも、このシリーズは好評で長期に渡って展開し、最終的にはF1までラインナップされています。
そんな『サーキットの狼』をきっかけにスーパーカーの魅力に取り付かれた男の子たちは、実際のスーパーカー目当てにさまざまな場所へカメラを持ち込んで撮影を始めます。これが当時、社会現象としてニュースなどで取り上げられ、大人たちもその熱狂ぶりに気づきます。
この時期にヒット商品となったのが、スーパーカー消しゴムです。おもに20円ガチャで1個出るもの。消しゴムといっても実際に鉛筆の線は消せなかったのですが、学校に持ち込むための口実としては有効。ただし、アッという間に先生から「持ち込み禁止」と言われましたが(笑)。
このスーパーカー消しゴムを使った遊び方は、ボールペンのノック機構を利用して飛ばし、レースをしたり、相撲のように相手に当てて机から落としたりと、さまざまでした。
さらに、スーパーカーの魅力のひとつと言えば、可動式のリトラクタブル・ヘッドライト。それを再現した玩具、プラモデルは数多く販売されて人気でしたが、実際の自転車に装備されて販売されたものもあったのです。私、買ってもらえましたから(笑)。
そして、この時期に制作されたのが東京12チャンネル(現在のテレビ東京)で1977年7月4日から放送開始した「対決!スーパーカークイズ」です。スーパーカーに関するクイズだけでなく、番組後半では実際のスーパーカーによるレースもあって、男の子たちには満足できる内容だったのです。
この番組の人気は、現在でも当時の男の子たちがスーパーカーの話題をすると必ず出てくるほど。実話です(笑)。
こうなると次は子供向けアニメとなるのですが、制作されたものは男の子たちの予想とは違ったものでした。
■子供たちがスーパーカーアニメに求めていたものとは?
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スーパーカーブームの時に制作された、スーパーカーアニメは以下の5作品です。
『マシンハヤブサ』(全21話)1976年4月2日
『アローエンブレム グランプリの鷹』(全44話)1977年9月22日
『超スーパーカー ガッタイガー』(全21話)1977年10月4日
『とびだせ!マシーン飛竜』(全21話)1977年10月5日
『激走!!ルーベンカイザー』(全17話)1977年10月10日
ほとんどが1977年秋に集中しています。この年の秋に放送開始されたアニメは15本ですから、4作品というのはもはや一大ジャンル。ただし『マシンハヤブサ』は企画期間を考えると微妙にブームに合わせた可能性は低く、時期が重なっただけかもしれません。
それでは1977年秋に制作されたスーパーカージャンルのアニメに注目してみましょう。
ほとんどが半年ほどで終了しています。この頃のアニメは基本的に半年放送で制作されているので、特に人気がなくて打ち切り……というわけではありません。『グランプリの鷹』は、逆に人気があったから延長されたのです。
しかしながら延長されなかった作品と、『グランプリの鷹』との差は何だったのでしょうか? それは、スーパーカーとしてのリアリティーです。
当時の男の子たちは実際に街を走るスーパーカーに憧れていたのです。大人たちが考えた、スゴい科学力を持った、実際にはあり得ないスーパーカーには興味を持てない。そういうスーパーカー的な車は、ロボットアニメなどで見られたわけですから。
『グランプリの鷹』では、実際のスーパーカーであるランボルギーニカウンタックによく似たカトリ・スーパーロマンというスーパーカーが活躍しています。また、物語途中から主人公の轟鷹也は、そのカウンタックを愛車にしています。
さらに、主役メカであるF1マシン、トドロキスペシャルは8輪ですが、その存在理由にキチンとしたメカ考証が成されていて、実車のような説得力があったのです。このような実車のように思える設定考証が、他の作品とは大きく異なるところです。
余談ですが、『ルーベンカイザー』もリアルなデザインが魅力的でしたが、裏番組が人気のアニメ作品『ルパン三世』(第2作)ということで、あまり評判にならなかったと言えます。
この後、スーパーカーブームはやがて終息していきます。しかしながら1978年3月にはマツダ・サバンナRX-7と、童夢-零(ドウムゼロ)という、スーパーカーの象徴ともいえるリトラクタブル・ヘッドライトを備えた国産車が姿を現し、ブーム末期に華を供えています。
(加々美利治)
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