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『テネット』が日本でも大ヒット。いま見返したい「タイムリープの傑作」5選

マグミクス / 2020年9月27日 13時50分

『テネット』が日本でも大ヒット。いま見返したい「タイムリープの傑作」5選

■斬新なアイデアでファンを魅了した「時間旅行」映画

 クリストファー・ノーラン監督のSFサスペンス映画『TENET テネット』(以下、テネット)が大ヒットしています。世界興収で2億5000万ドルを突破し、日本でも2020年9月18日から公開され、IMAXシアターを中心に好スタートを切っています。

 名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)が人類滅亡の危機に立ち向かう『テネット』は、未来では時間を逆行できるシステムが開発された……という設定になっています。一方向にしか流れないエントロピーを逆流させることで、時間を逆行させるという発想です。ノーベル物理学賞を受賞したキップ・ソーン博士が科学監修として参加しています。

 現実では不可能とされてきた時間旅行ですが、映画の世界ではこれまでに実にさまざまな方法で時空を飛び越えてきました。ユニークなタイムリープを描いたSF映画5本を紹介します。

■自己暗示で時流をさかのぼる――『ある日どこかで』

 最初に取り上げるのは、タイムリープものの古典『ある日どこかで』(1980年)。『スーパーマン』(1978年)で人気を博したクリストファー・リーヴ主演の恋愛ストーリーです。『007 死ぬのは奴らだ』(1973年)でボンドガールに扮したジェーン・シーモアが、ヒロインを演じています。

 脚本家のリチャード(クリストファー・リーヴ)は、往年の舞台女優エリーズ(ジェーン・シーモア)の写真にひと目惚れしてしまい、エリーズが活躍した1912年へ時間旅行することを決意します。その方法とは、なんと自己暗示でした。当時の衣装を身につけたリチャードは、強く念じることで若き日のエリーズがいた時代へさかのぼることになります。

 時空を超えた愛で結ばれるリチャードとエリーズですが、とても些細なことでリチャードの自己暗示はとけてしまいます。公開時はヒットしなかったものの、その後名画座などで繰り返し上映され、今も愛され続けている名作です。

■無線機から懐かしい声――『オーロラの彼方へ』

 人間をタイムリープさせることは難しいけれど、音声だけなら可能かもしれない。そう思わせるのが、『オーロラの彼方へ』(2000年)です。1999年のNYで暮らす刑事ジョン(ジェームズ・カヴィーゼル)が、父親の遺品のアマチュア無線機から懐かしい声を聴いたことから物語は始まります。

 無線機から聴こえてきた声は、若くして亡くなった父親のフランク(デニス・クエイド)でした。太陽フレアの異常によって時空に歪みが生じ、父親が生きていた1969年と音声だけがつながったのです。

 生きることに疲れていたジョンが、若いころの父親とのやりとりで励まされるシーンに、思わず目頭が熱くなります。声だけタイムリープするという発想は、作家・乙一氏の短編小説『Calling You』や新海誠監督の劇場アニメ『君の名は。』(2016年)に影響を与えたといわれています。

■少年期の日記を読む――『バタフライ・エフェクト』

『バタフライ・エフェクト』DVD(ジェネオン エンタテインメント)

 過去を変えることで未来が思いもよらぬものに変わってしまうことを描いたのは、『バタフライ・エフェクト』(2004年)。大学生のエヴァン(アーシュトン・カッチャー)は少年時代の日記を読むことで、その当時に戻ることができる特殊体質です。少年時代のある出来事がトラウマとなっているエヴァンは、その時代に戻ってトラウマの原因を回避しようとしますが、その度にエヴァンとは別の人が不幸になってしまいます。

 ブラジルの蝶々が羽ばたいただけで、テキサスでは竜巻が起きるかもしれない。そんな「バタフライ効果」をモチーフにした作品です。初恋の女の子・ケイリー(エイミー・スマート)を守るために、エヴァンはつらい決断を下すことになります。大林宣彦監督の『時をかける少女』(1983年)もそうですが、タイムリープと悲恋ものはとても相性がいいようです。

■新しい言語を学ぶ――『メッセージ』

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』(2016年)も、「時間」を扱ったSF作品です。巨大な宇宙船が地球に飛来し、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)が交渉役に選ばれます。宇宙人の言語体系は地球人とはまったく違うため、ルイーズは大苦戦。防護服を脱ぎ、身振り手振りを交えて、少しずつ宇宙人の言語を学んでいきます。

 文明の進んだ宇宙人は言語だけでなく、時間の概念も地球人とは異なりました。時間は過去から未来へと進むのではなく、過去も未来も同一的なものとして宇宙人は認識していたのです。彼らの言語を理解することで、ルイーズ自身も時空を自在に行き来することができるようになります。新しい言語を学ぶということは、その国の文化はもちろん、死生観も理解することにつながるという、深遠なメッセージが込められた作品でした。

■気がついたら川中島へ――『戦国自衛隊』

 最後に紹介するのは、ド派手な和製タイムリープものです。『戦国自衛隊』(1979年)は演習中の自衛隊の小隊が「時震」によって、戦国武将たちが群雄割拠した時代にタイムスリップしてしまうというトンデモストーリーです。

 伊庭三尉(千葉真一)率いる部隊が迷い込んだのは、16世紀の日本でした。伊庭たちは、のちの上杉謙信となる長尾景虎(夏八木勲)と手を組み、天下統一を目指すことになります。その時代の異物である伊庭たちを、歴史は目には見えない修復力で消し去ろうとしますが、戦うことに生きがいを見いだした伊庭は歴史に抗います。アクション俳優として売り出し中だった真田広之さん、新人時代の薬師丸ひろ子さんらも出演しており、理屈抜きで楽しめる娯楽作品となっています。

 数々の伏線が張られたタイムリープものは、しっかりと脚本が練られた作品が多いことが特徴です。だからこそ何度も繰り返し観たくなる……タイムリープをモチーフにした映画には、そんな魅力が込められています。

(長野辰次)

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