伝説レスラーたちは腹ペコだった! プロレス漫画『列伝』が語り継ぐ昭和のメッセージ
マグミクス / 2020年9月27日 19時20分
■ストーリーの要所に登場、「血のしたたるステーキ」
『はじめ人間ギャートルズ(作:園山俊二)』の“マンモスの肉”や『いなかっぺ大将(作:川崎のぼる)』に登場した“山盛りごはん”など、マンガ・アニメに登場した“心に残る思い出のメシ”や“トラウマ・メシ”は、人それぞれによって数多くあると思います。
なかでもプロレスマニアにとって忘れられないメニューが、1980年から1983年まで週刊少年サンデーで連載された『プロレススーパースター列伝(作:梶原一騎 画:原田久仁信)』に登場した“血のしたたるステーキ”ではないでしょうか?
80年代にグルメ・マンガの金字塔といえる『美味しんぼ(作:雁屋哲 画:花咲アキラ)』や『ミスター味っ子(作:寺沢大介)』などが登場し、読者の食欲を刺激する作品が多く生み出されましたが、やはり、プロレスマニアにとってはいつの時代もステーキこそが最高峰のごちそうであり、美食のチャンピオンです。
単行本第2巻に掲載された『首折り魔! スタン・ハンセン』編では、ドリーとテリーのザ・ファンクスが試合前に満腹になるのを避けるため、飼い犬に余ったステーキを食べさせるシーンがあるのですが、これもやたらと美味しそうに描かれています。この場面を見て修行時代のスタン・ハンセンよろしく「犬になりてぇ」と思うほどに食欲をソソられたアラフィフ世代の方もきっと多いことでしょう。
で、そのステーキ。やはり『列伝』の劇中では必ずと言っていいほどストーリーの要所要所に登場するのですが、単行本第1巻「地獄突きがいく! ザ・ブッチャー」編でも、「ステーキ」というワードが物語のひとつの核となっています。
まず原作者の梶原一騎氏に「2時間もしみじみと波乱の半生を語った」のは、六本木のステーキハウス。そして、その「ザ・ブッチャー」編でのステーキにまつわる名シーンといえば、シカゴで行われた“生きず男”ディック・ザ・ブルーザーとの試合も忘れられない一戦です。
この時、ブッチャーはプロモーターの権利を持つ“ザ・シーク”と仲間割れしたおかげで試合を干され、「ろくすっぽメシも食ってねぇ」という状況だったのですが、そんなタイミングでブルーザーが「おれをフォールしたヤツにはこの千ドルをくれてやらぁ!」 とTV中継で全レスラーを挑発。ブッチャーが挑戦することになるのですが、試合の最中、「ステーキ……血のしたたる!! ステーキ!」「千ドル……ステーキ!」と叫びながら闘う様は、列伝屈指の名場面といえるでしょう。
■貧乏メシ「涙のしょっぱい味つけのパンと牛乳」の意味は?
『プロレススーパースター列伝』第2巻(グループ・ゼロ)。「首折り魔!スタン・ハンセン」編で、パンと牛乳ばかりで過ごした無名時代のハンセンが描かれる
見事、ブルーザーに勝利したブッチャーの「ステーキ」にかける執念には脱帽です。またそんなシーンがあったからこそ、単行本最終巻「狂乱の貴公子! リック・フレアー編」で流血戦を繰り広げた後、「お互いだいぶ派手に血を流したから栄養を補給しねぇとな」と、フレアーにステーキをおごった(ケチで有名な)ブッチャーの行為は最大限の“おもてなし”として強く印象に残ったのかもしれません。
またあくまで推測ですが、ブッチャーの凶器といえばフォークが有名。ともすればそれも並みならぬ「ステーキへの執念」がカタチとなって表れたものかもしれません。
そんな“列伝メシ”の頂点として描かれる“ステーキ”の対極に位置する若手の貧乏メシの象徴として、同作品には“スパゲティーとコーラ”や“涙のしょっぱい味つけのパンと牛乳”などのキラー・メニューが存在します。
そこに「極上の肉を喰らいたくば努力せよ」という、梶センセによる昭和の熱いメッセージが込められていることは間違いありません。劇中でも、ドリーさんが若手レスラーたちに対して「やつらは自分の努力と腕でステーキを食える身分にならんとな」という本心として語られています。
ドリーさんは極上のワインと血のしたたるステーキ、(ジャンボ)ツルタはスパゲティーにコーラ……という食事風景も、決してパワハラではなく弟子たちに対する“親心”であり“愛”なのです(シークとブッチャーの場合はパワハラです)。
新型コロナウイルス感染拡大によって経済的にダメージを受けた飲食業界の再活性化につなげる目的の「Go To Eatキャンペーン」が 2020年9月から順次始まりますが、今はおりしも“食欲の秋”。マスク着用(マスカラスやデストロイヤーのソレではなく)で感染予防対策をし、ステーキを食べに出かけた際には、梶センセが残した「食」に対するメッセージをいま一度思い起こしたいものです。
(渡辺まこと)
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