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ズコー!の原点『忍者ハットリくん』40周年間近 アニメに残された昭和の景色

マグミクス / 2020年9月28日 11時50分

ズコー!の原点『忍者ハットリくん』40周年間近 アニメに残された昭和の景色

■日常の一部だった藤子不二雄作品

 1981年9月28日は、TVアニメ『忍者ハットリくん』(以下、ハットリくん)の放送が開始された日です。藤子不二雄(故・藤本弘氏と安孫子素雄氏のコンビ解消後は藤子不二雄A名義)氏のマンガを原作とした作品で、1987年12月まで放送され、全694話+スペシャル版11話というロングラン作品となりました。海外でも人気が高く、2012年にはインドで新作が作られ、のちに日本でも放送されました。小学生から中学生の頃にかけて本作を見ていたライターの早川清一朗さんが、当時を回想します。

* * *

『ハットリくん』が2021年で40周年を迎えるという事実に、時の過ぎ去る早さを感じます。筆者が住んでいた地域ではまず月曜から土曜日の18:50から19:00までの10分枠で放送され、日曜日は朝の9:30からの30分枠。その後は月曜日の30分枠だったり藤子不二雄ワイドという藤子不二雄作品だけの1時間枠のなかで放送されたり、また10分枠に戻ったりと、目まぐるしく放送形態を変えながらも、ずっと放送され続けていた印象が強いタイトルです。

『ハットリくん』は伊賀の里で修業を積んだハットリカンゾウくんが、ひょんなことから東京の三輪家に居候することになり、後を追ってきた弟のシンゾウくんや忍者犬の獅子丸、ライバルのケムマキケムゾウと繰り広げるドタバタコメディでした。しかし子供たちにとっては、忍者という存在を知るための絶好の教材であったようにも思えます。

 少なくとも筆者が伊賀や甲賀といった忍者に紐づく地名や言葉を最初に知ったのは、『ハットリくん』でした。水の上を歩いているシーンで使われた水ぐもや、ケムマキとの戦いなどさまざまな場面で使われた手裏剣も、やはりハットリくんが教えてくれました。確か当時、釘を使って手裏剣を作ろうとして、周囲の大人に止められた記憶があります。もし本当に作っていたら誰かをケガさせていたかもしれないので、今となっては大変にありがたい話ですが、当時はかなりむくれていたような気がします。

■『ハットリくん』は文化の伝道者

 風呂敷を両手両足で持って空を飛ぶ「忍法ムササビの術」も、当時はなんども真似をしていました。とはいえ風呂敷はなかったので手近な布で代用し、「ムササビの術!」と叫んでジャンプして、すぐ着地する程度のことでしたが、けっこう本気でチャレンジしていた記憶があります。

 とはいえ一番真似したのはキャラクターがずっこけたときに使う「ズコー」でしょう。これはリアルでも誰かのギャグが滑ったときのリアクションとしてとても使いやすく、今でも同世代だけが集まっているときにはたまに披露することがあります。当時は現代のようにアニメの数は多くはなく、娯楽も少なかったので、『ハットリくん』のようなロングラン作品は子供たちの共通言語となっていたからこそできる芸当なのでしょう。

 そして『ハットリくん』は世界にも輸出され、日本の文化や忍者の存在を伝える文化の伝道者として貴重な存在となりました。特にインドでは人気が爆発し、2012年には完全新作が制作されると発表され、2017年までに4期104話(1話2エピソード)が放送されています。日本を離れてこれだけの話数が作られるほど『ハットリくん』の持つ面白さは世界共通のものとして受け入れられたのです。

 新作は日本でも逆輸入の形で放送され、ハットリカンゾウはオリジナルの声優である堀絢子(ほり じゅんこ)氏が声をあててくれました。獅子丸もやはりオリジナルの緒方賢一氏が担当してくれており、懐かしい声が未だに健在であることに、往年のファンは喜びを露わにしていました。もちろん、筆者もその内のひとりです。残念ながら他のキャラクターの声優は変更されていますが、本放送から30年以上経過しているのでいたしかたないところでしょう。

 21世紀になっても活躍を続ける『ハットリくん』ですが、Amazonプライム・ビデオでレンタルされていたので見返したところ、内容そのものよりも、作中に登場する昭和の風景に目が釘付けになりました。今ではほとんど失われてしまった文化や情景は、古いアニメのなかに保存されていたのです。現代の生活に少し疲れて過去を懐かしみたくなったとき、『ハットリくん』を始めとする昭和のアニメや特撮番組が、その手助けをしてくれるのではないでしょうか。

(早川清一朗)

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