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短い歴史だった「ニンテンドウパワー」 背後にあった中古カセット問題

マグミクス / 2020年9月30日 9時10分

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■一度だけ利用した「ニンテンドウパワー」

 1997年9月30日は、ローソンで「ニンテンドウパワー」のサービスが開始された日です。ニンテンドウパワーはフラッシュメモリカセット(以下、SFメモリカセット)にスーパーファミコンやゲームボーイのタイトルを書き込む仕組みで、マルチメディア端末機「Loppi(ロッピー)」のサービスのひとつとして展開されていました。当初は旧作のみだったタイトルも新作が発売されるなど健闘しましたが、2002年にはローソンでのサービスが終了。2007年には任天堂での書き込みサービスも終了し、その短い歴史を終えました。サービス当初は「プレイステーション」や「セガサターン」、アーケードに夢中で気にも留めず、最後の最後、一度だけ利用した経験を持つライターの早川清一朗さんが当時を回想します。

* * *

 ニンテンドウパワーのサービスが始まった当初、筆者は見向きもしませんでした。1997年はプレイステーションでゲームの歴史を塗り替えた名作『ファイナルファンタジーVII』が発売された年で、1994年から続いていた次世代機戦争に、ほぼ決着がついた年だったのです。しかもこの時期スーパーファミコンのカセットは極端な値崩れを起こしており、遊びたければそちらを買えば済むこと。わざわざ3980円のSFメモリカセットを買う必要性を感じなかったのです。ただ、スーパーファミコンのソフトのなかにはデータが飛びやすいものがあったので、そういったタイトルをプレイする際にはニンテンドウパワーが有利だったようです。

 しかし、1996年には「NINTENDO64」を投入して遅ればせながら次世代機戦争に参戦していた任天堂が、なぜニンテンドウパワーを開始したのか。その大きな理由となっていたのが、まさに中古のカセット問題だったのです。

 ファミコンやスーパーファミコンが主流だった時代、飽きたカセットは中古品を扱うファミコンショップに売るのが当たり前でした。

 大きく流れが変わったのは1994年。ソニー・コンピュータエンタテイメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)がプレイステーションを発売する際に「中古品売買禁止」を強制したことから中古問題は急展開を迎えます。中古品を扱うフランチャイズや個人店舗とゲームメーカーとの間で対立が始まり、徐々にエスカレート。中古品を扱う店には新作を卸さないなどの圧力が公然と行われ、1998年には「違法中古ゲームソフト撲滅キャンペーン」が開始されるなど、中古ゲームソフトの扱いは非常にセンシティブな問題となっていたのです。

■ローソンとの提携

 また、任天堂はすでに普及し、まだパワーがあるスーパーファミコンを、流通業者があまり重視していなかった点を不満に感じていたようです。そこでコンビニの店舗数で当時2位を誇り、強力な流通網を持つローソンと手を組んで、ニンテンドウパワーを開始することになりました。特にニンテンドウパワーは書き込みサービスのため在庫がいらないという利点があったことも、ローソン側としては重要だったようです。セブン-イレブンと手を組んだデジキューブが倒産した要因のひとつに在庫問題があったことからも、在庫管理の重要性が伺えます。

 当初は39タイトルから始まったニンテンドウパワーは12月にはさらに62タイトルが追加され、あっさりと100タイトルを突破します。1999年には新作となる『ファイアーエムブレム トラキア776』の書き換えが開始され、このときは筆者の友人のなかにもニンテンドウパワーを利用した人間が複数現れました。

 2000年にはゲームボーイの書き換えサービスも開始され、これは子供たちの間でそこそこ利用されていたようです。とはいえニンテンドウパワーはデジキューブと比較するとあまり大々的な宣伝がなされておらず、ゲーム好きのなかでもあまり存在を認識されていなかったように思えます。結局筆者がニンテンドウパワーを利用したのは『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』だけで、そのときの店員さんが、明らかに慣れていない手つきでおっかなびっくり機械を操作していたのをよく覚えています。あまり、利用されていたサービスではなかったのでしょう。

 中古問題も2001年には高等裁判所で「中古ゲームソフトの売買は合法」と判例が下され、最高裁がゲームメーカーの上告を棄却したことにより決着がつきます。

 こうしてニンテンドウパワーは2002年8月31日にローソンでのサービスを終了。2007年には任天堂での書き換えサービスも終了し、その役割を終えました。

 配信がメインとなった今では、書き換えサービスが生まれることはおそらくありません。筆者は「ソフトベンダーTAKERU」「ディスクシステム」などの終焉を見届けてきましたが、おそらくニンテンドウパワーが最後のひとつでしょう。もう、お店のなかで書き換えを待つ間のワクワクした時間を感じることはないのが、少しだけ寂しく思えるのです。

(ライター 早川清一朗)

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