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『ふしぎなメルモ』放送から49年。「スカートめくり」の時代に<性と生命>の神秘描く

マグミクス / 2020年10月1日 19時40分

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■憧れの変身アイテム、赤と青のキャンディー

「メルモちゃん、メルモちゃん、メルモちゃん~が持ってる
あ~かいキャンディー、あ~おいキャンディー、しってるかい♪」

 当時の多くの子供たちがこのように口ずさんだテーマソングで始まる『ふしぎなメルモ』は、今から49年前、1971年10月から翌年72年3月までTBS系列で放送されたテレビアニメです。原作は“マンガの神様”と呼ばれた手塚治虫氏で、氏自らアニメ制作に深く関わった意欲作でした。

 主人公のメルモちゃんは、小学3年生の女の子。ある日突然、交通事故でお母さんを亡くし、幼いふたりの弟と生きていかなければならなくなりました。そんなメルモちゃんを心配して、お母さんが天国から届けてくれたのが、赤色と青色のミラクルキャンディーです。青いキャンディーを1粒食べれば10歳年をとり、赤なら10歳若返るという不思議なキャンディー。当時、テレビの前の子供たちは「こんなキャンディーが私にも届いたらいいのに……」と憧れたものでした。

 メルモちゃんはこのキャンディーを使って、年頃の女性になったりお婆さんになったり、さらには生物の進化をさかのぼって動物にまで姿を変えながら、さまざまなトラブルを乗り越えていきます。ちなみに“メルモ”という名前は、メタモルフォーゼ(Metamorphose=変身)のスペルから命名されたのだそうです。

 一話一話のエピソードもバラエティに富んでおり、学校内の話はもちろん、動物たちの悩みを解決してあげたり、若返りのヒミツを狙われて誘拐されたりと、子供たちをハラハラドキドキさせる冒険譚が満載でした。

■神秘の世界を通じて、子供たちを大人へと成長させた

原作マンガ『ふしぎなメルモ』手塚治虫文庫全集(講談社)

『ふしぎなメルモ』は子供向けのアニメでしたが、そのテーマは〈性と命〉でした。放送当時は小中学校でスカートめくりが大流行して社会問題となり、性教育の必要性が叫ばれていた時代。医学博士でもあった手塚治虫氏は、子供たちが大好きなアニメを通して性を学ばせようとしたのです。

 青いキャンディーを食べて大人の女性の身体になり、膨らむ胸に戸惑うメルモちゃん。赤いキャンディーを食べて赤ちゃんへ、時には受精卵にまで戻るメルモちゃん。赤ちゃんに母乳をあげようとしても、妊娠してホルモンが作られなければ母乳は出ないと知るメルモちゃん。

 メルモちゃんが見ること感じることを通して、子供たちも自然と性に触れていきました。学校で教わる性教育は、堅苦しく気恥ずかしいものですが、メルモちゃんのアニメは、物語の中でいつのまにか、神秘の世界を教えてくれたのです。そして男の子と女の子に、違う性を持つ者としてお互いを思いやる心も育んでくれました。

 手塚治虫氏は当初、性教育アニメということで、先生や父兄からかなりの反発があるものと思っていたそうです。「放送禁止」を言い渡されることも覚悟していたと言いますが、いざ始まってみると大人たちにも評判が良く、思ったよりも性教育への理解があるのだと拍子抜けするほどだったそうです。大人にとっても自分の口からは教えにくいことをわかりやすく教えてくれる、有難いアニメだったのかもしれません。

 小学3年生だったメルモちゃんは、やがて成長して本当に大人の女性となり、最終回ではメルモちゃん自身の出産シーンまで描かれています。見ている側と同年代の主人公が大人になってからの世界を描くというのも、当時のアニメとしては珍しい展開でした。

  そしてラストではメルモちゃんに、嬉しくもちょっぴり切ないサプライズが……!『ふしぎなメルモ』は、子供たちの心を大人にしてくれた、記憶に残る異色のアニメだったのです。

※アニメ『ふしぎなメルモ』は、dアニメストア、バンダイチャンネルなどの配信サイトで視聴可能です。

(古屋啓子)

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