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『機甲界ガリアン』真の主人公は“宿敵” 武器ギミックは『ダイの大冒険』に影響を?

マグミクス / 2020年10月5日 17時10分

『機甲界ガリアン』真の主人公は“宿敵” 武器ギミックは『ダイの大冒険』に影響を?

■『ガリアン』はふたりの男の物語

 1984年10月5日は、TVアニメ『機甲界ガリアン』(以下、ガリアン)の放送が開始された日です。『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』などを手掛けた高橋良輔監督の作品で、中世ヨーロッパ風の世界にSF要素が取り入れられたロボットアニメです。主人公であるジョジョの宿敵マーダルの存在感が際立っている作品であり、高橋監督も「マーダルが真の主人公」と公言するほどです。また、剣の刃を分割して鞭のように扱う「ガリアン・ソード」は、後に多くの作品に取り入れられた画期的な発明となりました。放送当時は見る機会に恵まれず、後にLD-BOXで視聴した早川清一朗さんが、『ガリアン』を語ります。

* * *

『機甲界ガリアン』は、亡国の王子ジョルディ・ボーダー(以下、ジョジョ)が赤い機甲兵「ガリアン」と出会い、征服王マーダルに戦いを挑む物語です。

『ガリアン』のストーリーを簡単に書くとこうなるのですが、実際に全25話を見終えた筆者は、この物語の主人公はジョジョではなく、マーダルとジョジョの守役であるアズベスのふたりであると感じました。

 実際、LDのブックレットに記載されているインタビューで高橋監督は「真の主人公はマーダルでしたね」と語っています。マーダルはかつて高度な文明を持つ惑星ランプレートで科学者として生きていた人物で、現体制に革命を試みて失敗し、『ガリアン』の主な舞台である惑星アーストに逃れてきました。そしてかつてアーストで栄えた第一次文明人の遺産である機甲兵を掘り出し、軍団を組織してアースト全土を征服したのです。征服という行為の是非はともかくとして、裸一貫から己の意志と能力で成り上がった力強さは、主人公としての資質を備えたキャラクターと言えるでしょう。

 そしてマーダルに対し、作品中で対立軸となるキャラクターがアズベスです。アーストの辺境国家、ボーダー王国の重臣だったアズベスは、マーダル軍に国を征服された際、王から生まれたばかりのジョジョを託されて逃げ延びます。その後はジョジョを孫として育て上げ、「ガリアン」との出会いをきっかけに、マーダルに反旗を翻すのです。アズベスは未熟な少年であるジョジョをよく支え、時に助言を与え、時に剣を振るって敵を打ち倒し、劣勢にある反マーダル軍の柱石として圧倒的な存在感を放っていました。

■OP、武器ギミック…『ガリアン』が後世のアニメに遺したもの

 結局、アズベスは18話でマーダルを討ち果たそうと単身で切り込むも果たせず、炎のなかで最期を遂げてしまいます。アズベスの死の後、中世ファンタジー風の世界観だった『ガリアン』は一気にSFの世界へと姿を変え、怒涛のように最終回へ向け突き進み、そのなかでマーダルの目的が惑星ランプレートを始めとする、沈滞した銀河高度文明に喝を入れることだと判明します。

 アーストから空間転移を行いランプレートへと帰還したマーダルは、ランプレートを破壊し、無気力なランプレート人の覚醒を促します。最終的にはジョジョたちの手によりマーダルの野望は砕かれるのですが、革命を起こして敗れ、力を蓄え故郷に凱旋し、志半ばで夢潰えた堂々たる生きざまは、ひとりの男の人生として至高の物であるように思えるのです。『ガリアン』という作品の存在意義はマーダルというキャラクターを産み落としたことにあるのではないかと、筆者は考えています。

 もちろん、『ガリアン』で語るものは、マーダル以外にも存在しています。特に「ガリアン」が手にする「ガリアン・ソード」は、創作物の歴史を語る上で決して外すことはできません。高橋監督が自転車のチェーンを見て発想したこの剣は、剣の刃を分割し、連結してムチのように敵に巻き付いて切り裂きます。このギミックがアニメやマンガ、映画に与えた影響は極めて大きく、「蛇腹剣」などと呼ばれ、多くの作品に登場するようになります。2度目のアニメ化がスタートした『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』のヒュンケルが持つ鎧の魔剣や、映画『パシフィック・リム』でジプシー・デンジャーが装備しているチェーンソードなど、例を挙げればキリがありません。ロボットアニメの世界で斬新な発想を次々と形にしていた高橋監督が世界に遺した、大いなる財産と言えるのではないでしょうか。

 そしてオープニングテーマの「ガリアン・ワールド -Run For Your Life-」とエンディングテーマの「星の1秒」は、劇場版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』の主題歌「哀・戦士」を手掛けた井上大輔氏が作曲・編曲を担当した名曲です。演奏と歌唱を担当した「EUROX」は『銀河漂流バイファム』の主題歌で少年たちに衝撃を与えた「TAO」のメンバーだった関根安里氏、岡野治雄氏、野澤竜郎氏が中心となって結成したロックバンドで、後に解散しますが再結成され、2009年のOVA『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』で主題歌を担当しています。

 その他にも4足歩行の人馬兵プロマキスが稼働時に排出する脚部のバックファイヤーの迫力など、『ガリアン』は他のロボットアニメでは見ることができない魅力を持つ作品です。オープニングとエンディング、そして18話だけでも十分価値がある作品なので、もし機会があればぜひ見てください。

(早川清一朗)

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