『鬼滅の刃』上映目前の一挙放送! 炭治郎たちが生きた、たった15年の“大正“時代

マグミクス / 2020年10月9日 8時10分

写真

■『鬼滅の刃』が大ブームとなった理由と作品の時代背景を探る

「全集中! 水の呼吸!!」

 吾峠呼世晴氏の人気マンガを原作にしたTVアニメーション『鬼滅の刃』は、令和のエンタメ界を代表する大ヒット作となっています。劇場アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開も、2020年10月16日(金)ともうすぐ。「土曜プレミアム」(フジテレビ系)では10月10日(土)と10月17日(土)の2週にわたって、TVアニメシリーズの人気エピソードを放映します。

 ジャポニズムテイストたっぷりなダークファンタジー『鬼滅の刃』は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて原作マンガが2016年から連載スタートし、2020年5月で完結。単行本は現在22巻まで発売されており、シリーズ累計1億部突破という大ベストセラーとなっています。2019年にTOKYO MXなどで放映されたTVアニメシリーズ(全26話)が人気に火を点けたかっこうです。

 大正時代を舞台にした少年の鬼退治の物語は、若い世代を中心に幅広い層に熱く支持されています。大ブームとなった人気の秘密と作品の時代背景を探ってみましょう。

■妹を守るために強くなる兄・炭治郎

 時は大正。山で炭をつくる少年・竈門炭治郎(CV:花江夏樹)が主人公です。炭治郎が村へ出掛けている間に、家族は鬼に殺されてしまいます。唯一生き残った妹の禰豆子(CV:鬼頭明里)も鬼の血を浴びたために、鬼になりつつありました。炭治郎は医者に診せようと、禰豆子を背負って村へと急ぎます。

 普通なら鬼になった禰豆子に炭治郎は食い殺されているところでしたが、炭治郎の「鬼になんかなるな、がんばれ」という叫びに禰豆子は反応します。鬼になりながらも禰豆子は涙を流し、炭治郎を襲うことを自制します。その日以来、炭治郎も禰豆子を人間に戻すために、あらゆる方法を探し歩くことになるのです。

 鬼が人を食い殺すシーンをはじめ、ゾンビ映画ばりの過激なスプラッター描写の多い『鬼滅の刃』ですが、それ以上にお互いのことを思いやる炭治郎と禰豆子との兄妹愛がとても健気に映し出されます。禰豆子を守るために、炭治郎は強くなることを決意します。

 SNSが盛んなIT時代となり、人間関係が表面的なものになりつつある現代社会だからこそ、炭治郎と禰豆子との強い信頼関係が多くのファンの心をわしづかみにしたようです。また、新型コロナウイルス感染症の影響で自宅待機やリモートワークが増え、ソーシャルディスタンスを保つことが一般化しています。濃厚な人づきあいが難しくなっている社会状況も、ヒットを後押ししたのではないでしょうか。

■致命的な短所が、最大の長所にもなる主人公

 10月10日の「土曜プレミアム」では、TVアニメシリーズ『鬼滅の刃』の第1話から第5話までが一挙放映されます。炭治郎は禰豆子を治すために、「鬼殺隊」に入ることになります。鬼殺隊は鬼を殲滅することを目的にした組織ですが、鬼に関する情報を収集することで、禰豆子を人間に戻す治療方法も見つかるかもしれないと考えたのです。

 かつて鬼殺隊で活躍した鱗滝左近次(CV:大塚芳忠)のもとで、炭治郎は修業を積みます。鬼を倒すための剣術を学ぶだけでなく、古くから伝わる呼吸方法を身につけることで、肉体的にも精神的にも強くなっていくところがユニークです。トラブルに遭遇したときには、思わず「全集中ッ!!」と炭治郎を真似したくなります。

 鬼殺隊に入るための命がけの試験である「最終選別」で、多くの人を食べて巨大化した異形の鬼・手鬼(CV:子安武人)と炭治郎は戦うことになります。強い敵との実戦を経験することで、炭治郎の格闘能力は研ぎ澄まされていきます。また、倒した鬼に対して、優しい思いやりを見せるのも炭治郎の特徴です。炭治郎の優しさは短所でもあり、同時に長所にもなっていくのです。

 生か死かギリギリの戦いの連続のなかで、炭治郎は同じ鬼殺隊士となる我妻善逸(CV:下野紘)、嘴平伊之助(CV:松岡禎丞)との友情を深めていきます。「週刊少年ジャンプ」の三大原則と呼ばれる「努力・友情・勝利」がうまく配合された、とても現代的な伝奇アクションだと言えるでしょう。

■芥川龍之介や泉鏡花らが活躍した時代

 大正時代という時代設定も、『鬼滅の刃』をより魅力的なものにしています。平成に育った若い世代には、大正時代はとても新鮮に感じられるのではないでしょうか。わずか15年しかなかったこの時代は、「大正デモクラシー」と呼ばれる自由民権運動が高まる一方、1914年(大正3年)には第一次世界大戦が勃発し、日本も参戦。以降、日本は列強国の仲間入りを果たします。スペイン風邪によって、たくさんの命が亡くなったのもこの時代でした。さらに1923年(大正12年)には関東大地震が起き、1925年(大正14年)には治安維持法が制定されることになります。

 文学の世界では、芥川龍之介が『羅生門』を発表したのが1915年です。生きるためには、悪人にもなるという人間の心の闇を描いた短編小説でした。泉鏡花は竜神伝説を題材にした戯曲『夜叉ヶ池』を1913年(大正2年)に、宮沢賢治はブラックな味わいの児童文学『注文の多い料理店』を1924年(大正13年)に執筆しています。『甲賀忍法帖』『魔界転生』などの伝奇小説で知られる山田風太郎が生まれたのは、1922年(大正11年)です。そんな時代に、鬼殺隊は鬼たちと戦っていたのです。

 年末に最終巻となる23巻の発売が予定されている原作マンガのうち、TVアニメシリーズは1~6巻、劇場アニメは7~8巻を映像化しています。まだまだ『鬼滅』ブームは続くことになりそうです。この機会に、大正カルチャーにどっぷりハマってみるのはどうでしょうか。

(長野辰次)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング