コンボイが死んだ!? 視聴者はポカーン…『トランスフォーマー』主役交代の真相
マグミクス / 2020年10月9日 18時50分
■突然、知らされたコンボイの死
1986年の夏も終わろうかという時期、そのニュースは前触れもなく、突然、流れてきました。
「コンボイが死んだ!」
アニメと玩具で好評だった『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』(以下、トランスフォーマー)の主役であるコンボイ司令の死亡が、突然に伝えられたのです。
当時、『トランスフォーマー』の人気は絶頂期で、児童誌「テレビマガジン」で表紙と巻頭カラーを飾ることが多く、玩具屋ではコーナーが常設されるなど、各方面で高い関心がありました。
寝耳に水とはまさにこのこと。本来なら、番組内で死んだ場面が描かれてから発表されるのが普通。それでも衝撃の出来事なのに、いきなり雑誌やチラシで知らされたのですから、おどろきよりも何が起こったのかわからず、ポカーン……というのがほとんどの人たちの反応だったと思います。
何せ、コンボイはアニメの中では何度も死にかけ、バラバラになっても生きていたのですから。「どうして今?」というのが当時の大多数の感想でした。
そんな時、「コンボイが死んだ!」というCMが流れ始めます。ボロボロになったコンボイが運ばれていき、それを見守る民衆からはコンボイコールがおくられ、「2005年コンボイ死す」というナレーションがかぶさります。そして、子供が泣きながら「コンボイ!」と叫ぶ実写映像。それまでの玩具をそのまま使っていたCMとは一線を画すものでした。ある意味、最初に作られた「実写版」トランスフォーマーです。
さらに当時人気のあった「トランスフォーマー電話」でも、各キャラがこの出来事についてコメントしていました。
「トランスフォーマー電話」というのは、電話をかけると各キャラの音声がランダムで流れるというもので、当時のコンテンツ展開のひとつでした。そこでは、各キャラクターがあることを伝えていました。
コンボイが死んだ時、謎の言葉を残した。その言葉は「ロディマス」。
普通なら、死ぬ時に残すのはダイイング・メッセージ。ということは、「ロディマス」こそコンボイを殺した犯人のはず。当時、少年探偵団並みの推理力でそう思った子供がいたと、後に聞いたことがあります。
もちろん、そう聞いた私は腹をかかえて大爆笑しました。なぜなら……あの時代を経験した人ならオチはわかりますよね(笑)。
■新シリーズ開始早々、視聴者は「置いてけぼり」に
「コンボイの死」をめぐる騒動の焦点となった、ロディマスコンボイ(画像:タカラトミー)
この「コンボイが死んだ」というのは、トランスフォーマーが新シリーズに入る前の、一大キャンペーンでした。主役交代をよりセンセーショナルにアピールするため、そして、新主人公であるロディマスコンボイの知名度を上げるために企画されたものだったのです。
そんなわけで、『トランスフォーマー』は新シリーズ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー2010』(以下2010)へとバトンタッチします。
しかし、今度は『2010』を見てポカーンとする人が続出します。
コンボイが死んだ理由も明かされないまま話が進んでいくのです。さらに、メガトロンはどうなったの? ガルバトロンは要塞参謀じゃないの? ユニクロンって誰? クインテッサ星人って何者よ? ……といった疑問が次々わき出てきます。
普通なら旧シリーズが終わる時、または新シリーズが始まる時に物語があるか、説明くらいするものなのですが、一切そういった配慮はありません。
そのまま、視聴者は置いてきぼりで物語は進みます。早い段階で生き返ったコンボイが出てくるエピソードがあるのですが、普通のアニメなら回想シーンが入って謎が明かされると思いきや、まったくそんなこともなく、コンボイは2度目の最期を迎えます。
この不親切な展開には、キチンとした理由がありました。本来ならば、『トランスフォーマー』と『2010』の間に入るはずの劇場版『トランスフォーマー ザ・ムービー』(以下ザ・ムービー)で、全て語られていたのです。
しかし、諸般の事情から『ザ・ムービー』の上映は日本では延期となり、我々日本人はコンボイが死んだ理由を知らないまま『2010』へと突入したというわけです。現在のようにネットで外国の事情をダイレクトに知ることはできず、当時は噂やデマが混じった情報を自分で精査するしかなかったのです。
そんななか、一部のファンの間では、誰かが入手できた『ザ・ムービー』のビデオをダビングして拡散するといったことが行われていました。同作は後にソフト化されていますが、その度肝を抜くような映像と音楽に魅了されたのは今でも覚えています。個人的には、今でも劇場版ロボットアニメの最高峰と思っています。
まだネット社会が確立する前だからこそ起こった一大騒動。令和となった現代ではあり得ない出来事でしょうね。
(加々美利治)
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