『相棒19』を観る前に…! 東映特撮『ロボット刑事』、仲間と家族との絆を感じさせたドラマ
マグミクス / 2020年10月11日 9時10分
■両者の個性が違うほど盛り上がる「バディもの」
水谷豊さんが主演する刑事ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)の新シリーズが、2020年10月14日(水)からスタートします。東映制作の「相棒」シリーズは2000年から2時間ドラマとして始まり、20周年を迎えました。
水谷さん演じる変わり者の刑事・杉下右京の相棒役を、これまで亀山薫(寺脇康文)、神戸尊(及川光博)、甲斐享(成宮寛貴)が務めてきました。現在の相棒は、4代目となる冠城亘(反町隆史)です。新シリーズの初回で、杉下刑事と冠城刑事はバーチャルリアリティーの世界に隠された謎に挑むことになります。
性格のまるで違うキャラクターが協力しあって難事件を解決する面白さが、バディ(相棒)ものにはあります。両者の個性が際立っているほど、より面白さは増していきます。そんなバディものの先駆的作品となった特撮ドラマを振り返ります。
■いぶし銀刑事と「高性能ロボット」という顔合わせ
米国では1975年から放送がスタートしたTVドラマ『刑事スタスキー&ハッチ』、日本でも1979年から放送が始まった『噂の刑事トミーとマツ』(TBS系)など、凸凹コンビが捜査に挑む刑事ものは大変人気がありました。そんな人気刑事ドラマに先駆ける形で1973年にオンエアされたのが、特撮ドラマ『ロボット刑事』(フジテレビ系)です。制作は『相棒』と同じ東映でした。
石ノ森章太郎原作の『ロボット刑事』は、かなり異色の刑事ドラマでした。ベテラン刑事の芝大造(高品格)は特別科学捜査室に配属されることに。そして、新しい相棒はなんと人型ロボットのK(CV:仲村秀生)でした。芝を慕う若い刑事・新條(千葉治郎)がふたりの間を取り持とうとしますが、頭の固い芝はKのことを仲間とは認めようとはしません。
Kは非常に優れた捜査能力を持っているのですが、芝刑事はKのことを「機械人形」「鉄クズ野郎」とディスりまくります。Kは愛車ジョーカーで芝刑事を自宅まで送るのですが、芝刑事はKを自宅には上げず、玄関先に立たせたままでした。Kは黙って耐えるだけです。そんななか、犯罪組織バドーが次々とロボットを使ったハイテク犯罪を起こし、Kと芝刑事は共に立ち向かうことになるのです。
のちに映画『麻雀放浪記』(1984年)の出目徳役で名演技を披露するいぶし銀俳優の高品格さんが、無表情のロボットと共演するという意外性が『ロボット刑事』にはありました。
■目の色の変化で、ロボットの感情を表現
石ノ森章太郎氏による原作マンガ『ロボット刑事1973』(復刊ドットコム)
ロボット刑事であるKは、いつもハンチング帽を被り、真っ赤なジャケットを羽織っていました。赤いジャケットは目立ちすぎで、尾行や張り込み、潜入捜査には適さないように思います。ロボットなので、そこは人間とファッションセンスが異なるのでしょう。
またKはロボットであるため、顔の表情が変わることがありません。ただし、バドーが送り込んだ悪いバドーロボットと戦うときは、通常は黄色い両目が赤色に変わり、戦闘モードに入ったことが分かります。その一方、芝刑事から怒られると、しゅんとして両目がブルーに変わります。顔の表情は変わらないのに、目の色が変わるだけで、Kが怒っていること、悲しんでいることが視聴者にはリアルに伝わってきました。
高性能ロボットであるKは、人間と同じように「心」を持っていたようです。人間やKに危害を加えようとするバドーロボットには怒りを爆発させ、芝刑事から冷たくされると両目をブルーにして黙ってしまいます。Kに対して相手がどのような対応を見せるかによって、Kの感情は変化するのでした。
子供向けの特撮ドラマではありますが、ロボットは人間と同じような感情を持ち得るのかという、興味深いテーマが盛り込まれた作品でした。
■巨大観音像を思わせた「マザー」
もうひとつ、『ロボット刑事』を語る上で忘れてはならないのが、「マザー」の存在です。Kは戦いに疲れてボロボロになったとき、芝刑事が家族との団欒を過ごしているとき、海に向かって「マザー!」と叫びます。すると水平線の彼方から巨大ロボット「マザー」が登場するのです。「マザー」はあまりに大きすぎて、現実味が感じられませんでした。慈愛に満ちた顔をしており、ロボットというよりは巨大観音像を思わせました。
2クール続いたシリーズ終盤は、石ノ森章太郎作品ならではの展開を見せます。「マザー」の内部には、Kを生み出した霧島サオリ博士(君夕子)がこっそりと暮らしていました。芝刑事に問い詰められた霧島博士は、犯罪組織バドーの首領は実の弟であることを告白します。人間社会を憎む弟の暴走を食い止めるために、霧島博士はKを開発したのです。自分の生い立ちを知り、複雑な想いに駆られるKでした。
暴走する弟を、優しい姉が思いやるというモチーフは、石ノ森章太郎作品ではたびたび描かれています。石ノ森氏の最愛の姉で、22歳の若さで亡くなった小野寺由恵さんへの消えることなき思慕を感じさせます。
芝刑事はKのことを相棒として認めずにいましたが、最終回では苦楽をともにしたKに対して打ち解けた表情を見せるようになります。頑固者の芝刑事が、ようやくKを相棒だと認めたのです。Kの顔が明るく笑っているように感じられる、心温まるラストシーンでした。
杉下右京の新しい相棒は、ロボット刑事……。そんな新シリーズがそう遠くない将来、検討される日が訪れるかもしれません。
(長野辰次)
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