大ヒットアニメ『赤ずきんチャチャ』 玩具事情で「大幅改変」されても名作になったワケ
マグミクス / 2020年10月25日 14時10分
■「少女マンガのアニメ化」促進したオモチャ事情
1990年代から、少女マンガのアニメ化が多くなりました。それには「週刊少年ジャンプ」のメディア戦略によるアニメ化成功の影響が少なからずあったと思われます。順調にアニメ化されて知名度が上がっていった少女マンガでしたが、ひとつだけ原作マンガとストーリー展開が大きく変わったものがありました。1994年1月7日からテレビ東京系列で放送開始した、『赤ずきんチャチャ』です。
筆者がマンガ『赤ずきんチャチャ』を知ったのは、連載されていた月刊誌「りぼん」を妹が定期購読していたからです。男性にとって少女マンガは苦手なところもありますが、ギャグマンガには男女の違いはあまり感じられませんでした。
ですから、後に国民的アニメとなるさくらももこ先生の『ちびまる子ちゃん』、実写ドラマ化された『お父さんは心配性』の岡田あーみん先生のギャグセンスには注目していました。
そんな時、彩花みん先生の『赤ずきんチャチャ』の連載が始まり、一瞬にして心奪われました。どれくらいファンになったかというと、筆無精な私がファンレターを送ったほどです(ちなみに、他の漫画家先生には送ったことはありません)。
そんなわけで、アニメ化の情報が発表されたときは大喜びでしたが、情報が解禁されて不安に思うことがあったのです。それは、番組紹介に書かれた「マジカルプリンセスに変身」でした。その意味不明な一文を不安に思ったものです。
このアニメオリジナル展開はスポンサーの意向でした。当時、女児向けオモチャとあわせてヒットしていたアニメ作品『美少女戦士セーラームーン』の影響で、バトル要素を盛り込みたかったのでしょう。
もともと少女マンガのアニメ化でネックとなっていたのが、メインスポンサーとなる玩具メーカーで販売するオモチャでした。
最初はあまりセールスが期待されていなかった『ちびまる子ちゃん』でしたが、バッジや小物などがヒット商品となっていました。このヒットが少女マンガのアニメ化が進んだ理由のひとつでもあります。しかし、少女マンガではオモチャにできるようなアイテムは少なく、逆にオモチャをアイテムとして作品に出すという方法が行われました。
この方法は、少女マンガがアニメ化される際の定番となり、後の少女マンガ原作のアニメ作品でもよく行われるようになります。みなさんも登場人物たちの持っている小道具がオモチャと一緒だと思ったこと、ありますよね?
■「オリジナル展開」への不安を吹き飛ばした、プロの仕事
こうして、マンガとは違った物語になるかと思った『赤ずきんチャチャ』でしたが、その不安はすぐに吹き飛びました。それは、原作マンガの流れ通りにギャグの連発だったからです。
てっきりバトルものの要素が強くなるかと思ったのですが、そんなことはありませんでした。しかも、マジカルプリンセスの変身バンクシーンから必殺技バンクシーンまでの流れは、『水戸黄門』でいう印籠が出てくる形式美のパターンを思わせる、物語の流れを壊さない絶妙なものだったのです。
たいへん優秀なアニメスタッフたちが、原作マンガへのリスペクトを込めて制作したことがわかる、クオリティの高さが光る作品でした。むしろ、アニメオリジナルのギャグの方がハチャメチャだった時があったくらいです。
その評判は瞬(またた)く間にアニメファンの目に留まり、放送前はあまり評判にならなかった作品だったにもかかわらず、アニメ雑誌の紙面で特集されることが増えていきます。
オモチャのセールスも好評でした。その結果、最終的には放送も半年ほど延長されて約1年半、全74話が放映されました。しかも放送終了後半年ほどでOVA(オリジナルビデオアニメ)が3巻発売されています。これは、それだけの人気があったアニメ作品だったという証明だったと思います。
追記することは原作マンガにもあります。アニメオリジナルキャラだったはずのキャラが、その後の原作で登場していることです。
アニメでは強敵として登場し、ギャグ要素のなかったしいねちゃんの父親アクセルですが、原作マンガではしいねちゃんが好き過ぎて騒動のもとになるトラブルメーカーとして描かれています。
また、マンガオリジナルキャラの大魔王の息子の平八が、魔王の仕事をするときに着替えるコスチュームがアニメ版大魔王となっています。もちろんギャグ演出です。
このように、原作とアニメが異なる方向に進みながらも、それぞれをリスペクトして双方を際立たせた『赤ずきんチャチャ』は、原作とアニメどちらも甲乙付けがたい名作だったと思います。
(加々美利治)
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