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夜道雪さん&平川新士さんに聞く『マロナの幻想的な物語り』の魅力と新人声優のお仕事

マグミクス / 2020年11月5日 17時10分

夜道雪さん&平川新士さんに聞く『マロナの幻想的な物語り』の魅力と新人声優のお仕事

■描かれているのは「人間の気持ち」

 東京アニメアワードフェスティバル2020(TAAF2020)でグランプリを受賞したのは、フランス発のアートアニメーション映画『マロナの幻想的な物語り』でした。動く前衛芸術とも評される不思議で優しい表現は、いつも見慣れた日本のアニメとは、ひと味もふた味も違います。日本語吹き替え版の主役を務めたのは、『この世界の片隅に』の演技でも高い評価を得た「のん」さん。一匹の犬の目を通して見つめたさまざまな人生を独創的な表現でつづった傑作として、今も全国各地でロングラン公開を続けています。

 主人公である犬のマロナの最後の飼い主となる女性・ソランジュと、優しくも哀しい男・イシュトヴァン。ふたりの日本語吹き替えを担当したのが、夜道雪さんと平川新士さんです。ふたりとも、声優としてはキャリアを踏み出したばかりですが、夜道雪さんはマルチタレントとしての芸歴を持ち、人気YouTuberとしても活躍されています。それぞれの仕事観や作品の魅力について聞きました。

* * *

──いわゆる深夜アニメなど日本の作品とは、まったく異なる表現で作られたアニメーション映画です。最初に映像をご覧になった時、どのような印象を抱かれましたか?

夜道雪さん(以下、夜道) 吹き替え前のセリフがフランス語ということもあって、最初はどこか「自分とは別の遠い国の話」のように感じました。でも、のんさんのお芝居など日本語で吹き替えられたものを観ると、それぞれの登場人物の生々しい気持ちが、この表現だからこそ伝わってくるようで……。たくさんの人たちとマロナという犬との関わり合いを感動的に描くというのだけでは終わらない、このアニメーションだからこそ伝わる「リアルさ」があると思います。

平川新士さん(以下、敬称略) 初見での視覚的な驚きは大きかったです。慣れ親しんだ主線やパースをしっかり取って人物を描くアニメとは、方法というか考え方というか、とにかく全く違っていますから。でも、描かれているのは人間の気持ちであって、そこは共通していますよね。

──見慣れたアニメやゲームの場合と、演じ方に違いはありましたか?

夜道 絵的な部分はもちろん、音楽なども、すべてが切り分けられることなくひとつの表現となっている作品のように思います。ですから、セリフを乗せる時は、キャラクターの声をキャラクターとして作りすぎて、それがアートとしての一体性や抽象性を崩すことのないようにと意識しました。

平川 声をあてる人物には何がどんなふうに見えていて、その人の肉体を通してどう感じられているのか。いつも収録で心がけていることを、この作品でも忘れないようにしたいと思いました。『マロナの幻想的な物語り』では、感情が人物の肉体をも超えて、世界と一体化するように動き出します。独創的な表現には、そういう意味があるんじゃないでしょうか。

■「心からの気持ち」が作品との出会いのきっかけ

犬のマロナと、マロナの最後の飼い主となる女性、ソランジュ(右)

──複雑でリアルな人間を演じている時には、役を担当する声優さん自身も、心を動かされたりするんでしょうか。

夜道 思春期に差しかかって家族やマロナに対してさまざまな感情を抱きはじめるソランジュには、本当に共感できるものがありました。その時期は、私も反抗期が激しかったりしましたから(笑)。

平川 老いて病んでいく親や、奔放で身勝手な妻との関係を背負って生きるイシュトヴァンに対しては、男性として身につまされるものがありますよね。

──今回のようなアートアニメーションへの出演もそうですが、いわゆる深夜アニメに限らない多様なお仕事に、おふたりも取り組まれているのですか?

夜道 声優のお仕事としては、とあるライブの会場で、場内放送や影ナレ(影ナレーション=観客の見えない「影」から音声を聞かせること)のお仕事をさせていただいたことがあります。

平川 ひと口にナレーションと言っても、さまざまな種類があったりしますよね。僕は、声優を本格的に始める前になりますが、再現VTRに俳優として出演させていただいたことがあります。

──もともと、声優に対する憧れがあって、この道に入られたんでしょうか?

平川 高校生の頃、声優希望者を募るコンテストのようなものがあったんです。それまでは、声優になりたいという気持ちを誰にも打ち明けられずにいました。どうしても諦めきれず、自宅のクローゼットに隠れて録音したボイスサンプルで、こっそり応募しました。それが最終審査まで残ったことが、地方から上京するきっかけになりました。

夜道 私は15歳くらいの時から、いわゆるマルチタレントとしてお仕事をいただいてきました。たまたま音響スタジオにお邪魔する機会がありまして、その時に「声優をやってみたら?」と誘われたのがきっかけです。レッスンを受けて勉強するうちに、もっとお芝居をしたいという強い気持ちが芽生えてきました。

──心からの気持ちがおふたりを声優の道へ導き、今回の『マロナと幻想的な物語り』にも出会わせてくれたというわけですね。

平川 一次審査と二次審査を通過して、最終審査のために東京に来てくださいと言われたのが、すべての始まりだったと思います。

夜道 平川さん、やりますねえ。

平川 夜道さんこそ(笑)。

■セルフプロデュースで自分の道を切り開く

犬のマロナは、歴代の飼い主によってさまざまな名前をつけられていた

──有名声優も続々と参入し始めているYouTubeという世界において、夜道さんは先駆者であり成功者でもあります。他のメディアとの違いやYouTubeならではの難しさは、どういったところにあるのでしょうか?

夜道 YouTubeで活動する場合に難しいのは、出演のみに注力すれば良いわけではなく、企画や撮影から編集まで、基本的に自分ひとりで担わなければならないことです。動画をアップロードする曜日や時間などにも、もちろん気をつかいます。例えば、モバイルを通した視聴者が多い場合、動画視聴は大容量通信になりますので、通信制限にかかりやすい月末に新作をアップロードすると、その分だけ不利になる可能性がありますよね。

──「ただ楽しそうな動画を上げる」のではなく、総合的なセルフプロデュースを行っていく必要があるというわけですね。

夜道 そうだと思います。いわゆるコンプライアンスの面でも、本当に気をつかいます。例えば、私はバイクが好きで、バイク関係のお仕事をいただいたりもしています。その私の動画に、ふとした油断であっても道路交通法に抵触する場面が映っていたりしたら、お世話になっている多くの方に御迷惑をおかけする結果にもなりかねません。

──若い声優さんにお話を伺う度に思うのが、これまでの年代の方にはあまり見られない、セルフプロデュースの巧みさです。

夜道 理詰めというか、なるべく客観的に自分を見つめながら、自分自身の頭で考えて道を切り開いていく必要があると考えています。私が一時期、髪の毛の一部を赤くしていたのは、青色がベースのSNSの画面上でなるべく映えさせるためだったんです。ネットでの活動は継続性も重要ですし、この先もできることをなるべく継続していきたいですね。

──おふたりの活動や映画に興味を持った方に、メッセージをいただけますか?

平川 犬の一生と人の一生、アーティスティックな映像とリアリスティックな脚本、この四つが絶妙に調和した作品です。幼い頃の僕に親友同様の犬がいたように、犬との想い出をお持ちの方が、皆さんの中にもたくさんいらっしゃると思います。そんな方の心には、より響く内容だと思います。ぜひ、ご覧になってください。

夜道 私は小さい頃に、大きな犬にお気に入りの赤い手袋を、片方食べられてしまいました(笑)。それでも、犬が嫌いだと思ったことは一度もありません。いつも親しんでいる日本のアニメとは全く違う表現ですが、同じように素晴らしい、犬を主人公にした映画です。『マロナの幻想的な物語り』を、これからもぜひよろしくお願いします。

※映画『マロナの幻想的な物語り』(吹替版、字幕版)は全国順次公開中です。

(C)Aparte Film, Sacrebleu Productions, Mind’s Meet

(取材/構成:香椎 葉平)

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