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『鬼滅の刃』炭治郎・善逸・伊之助の“ギャグ”役割分担 真のお笑い担当は冨岡義勇?

マグミクス / 2020年11月7日 14時10分

『鬼滅の刃』炭治郎・善逸・伊之助の“ギャグ”役割分担 真のお笑い担当は冨岡義勇?

■炭治郎の真面目さが引き起こすギャグ

 殺伐としたシーンが多い『鬼滅の刃』ですが、ギャグシーンもたびたび登場しています。とはいえただ笑わせるためにギャグシーンが入れ込まれているのではなく、シリアスな状況でのほんのわずかなズレがギャグとして機能しているのが本作の特徴となっているのです。

『鬼滅の刃』のギャグパートでメインとなるのは、通称「かまぼこ隊」と呼ばれる竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の3名です。

 この3人のギャグはそれぞれ持ち味が異なり、まず炭治郎は「本人はいたって真面目に考えて発言しているのにギャグになってしまっている」シーンが多くなっています。例を挙げれば、元・下弦の陸である響凱との戦いを終え、犠牲者を埋葬しようとするシーンで、「伊之助はけがをしているから手伝わないのだろう」と考えて発言し、結果として伊之助の負けん気に火を付けて埋葬させるシーンがそうでしょう。真剣に言っているのが結果的に挑発になっているという、際どいギャグシーンです。その他にも「長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった」というセリフは、これは長子相続が前提だった大正時代では当たり前の考え方かもしれませんが、現代人からすればギャグに聞こえなくもないというシーンになっています。

 これらのシーン以外にも炭治郎は総じてギャグとシリアスの境界線が極めてあいまいで、ギャグと考えるかどうかは読者の感性次第というものとなっています。逆に言えば、シリアスに読んでもギャグとして読んでも破綻せずに成立しているのが吾峠呼世晴先生の力量の高さを物語っているのではないでしょうか。

 3人のなかではっきりとギャグキャラクターとして使われるのが善逸です。たびたび登場する求婚シーンや、響凱の屋敷で鬼を討った後、助けたはずの子供である正一くんに守ってもらおうとするシーンなどは、作中では珍しく分かりやすいギャグとして演出されている場面でしょう。善逸のギャグシーンは動きがあるためアニメにした時にとても分かりやすく、楽しみやすいシーンとなっています。それでいて心のなかに秘めた闇は深いというギャップもあり、善逸の魅力をより高めているのでしょう。

■第4のギャグキャラクターは冨岡義勇?

クールな印象の義勇だが… 画像は『鬼滅の刃』Blu-ray 2(アニプレックス) (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 伊之助のギャグについては「無限列車編」では普段は強気一辺倒の伊之助が、初めて巨大な機関車を見て「こいつはアレだぜこの土地の主……」と怯えながらも体当たりをかけるなど、これから始まる激戦の前の一服の清涼剤となっているように思えます。他にもまだアニメ化がされていない「柱稽古編」で、過酷な柱稽古の開始を知らせる際に窓を割りながら飛び込んできて胡蝶しのぶに怒られるなど、「重要な局面に突入する前のほぐし」として使われているのではないでしょうか。

 そして3人以外にギャグを担当するキャラクターとして登場するのが、冨岡義勇です。ただ、義勇のギャグについては炭治郎以上にシリアス度が高い場面で繰り出されており、本人もいたって真面目に口にしている言葉が一周回ってギャグになってしまっています。例えば「那田蜘蛛山編」でしのぶを捕まえたとき「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」と言われ、「俺は嫌われていない」と返したシーンがその典型でしょう。

 原作コミックの「柱稽古編」では、炭治郎とのやり取りのなかで、義勇のセリフに対してナレーションが「誰か止めてあげてください」とツッコんでいます。ストーリー全体を見ても、ナレーションで直接ツッコミを入れられているシーンは極めて少なく、それだけ義勇というキャラクターは吾峠先生にとって、特別な存在であることが見て取れます。ギャグシーンでの使われ方が炭治郎と非常に似通っていることや序盤から最終局面までの両者の関わり方などから見ても、義勇は極めて主人公に近い扱いを受けているキャラクターなのでしょう。ちなみに、原作ではナレーションとして語られる部分は、アニメではキャラクターの心情としてセリフに代わっています。アニメ化された際にどう表現されるのかが見ものです。

 シリアスな場面が多い『鬼滅の刃』ですが、適度に軽いギャグを混ぜ込むことにより雰囲気が暗くなりすぎるのを防いでおり、結果として親しみやすさが増しているように思えます。本編以外にも、おまけとして吾峠先生の描く4コママンガやパロディマンガ『中高一貫!! キメツ学園物語』など、心を軽くしてくれるギャグ要素が多いことも、『鬼滅の刃』の重要な魅力なのではないでしょうか。

(早川清一朗)

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