巨匠漫画家・諸星大二郎氏の、見逃せないTV出演。『エヴァ』『ナウシカ』にも影響
マグミクス / 2020年11月11日 19時10分
![巨匠漫画家・諸星大二郎氏の、見逃せないTV出演。『エヴァ』『ナウシカ』にも影響](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_39454_0-small.jpg)
■Eテレ『浦沢直樹の漫勉neo』は必見
「浦沢直樹さん、ありがとう!」
思わず、そう叫びたくなります。2020年10月からスタートしたNHK Eテレのドキュメンタリー番組『浦沢直樹の漫勉neo』(22:00~22:49)に、カルトな人気を誇る漫画家・諸星大二郎氏が出演します。11月12日(木)の放送予定です。
諸星大二郎氏は1949年生まれ、1970年に短編マンガ『ジュン子・恐喝』でデビュー。考古学や民俗学に関する豊富な知識をベースにした『妖怪ハンター』や、パプア・ニューギニアを舞台にした神話的世界『マッドメン』などの異色ファンタジー作品を発表してきました。マスメディアにはあまり出ることがないため、知る人ぞ知る孤高の漫画家となっています。
10月22日放映された『漫勉neo』には、諸星氏と親交のある漫画家・星野之宣氏が出演し、浦沢氏との対談のほか、北海道のアトリエで星野氏が自作を執筆する様子がカメラに映し出されました。今週放送の『漫勉neo』も、諸星氏の仕事中の姿をカメラを通して見ることができる、貴重な機会となりそうです。諸星氏の独特のタッチのキャラクターたちは、どのような筆づかいから生まれているのか、気になるところです。
■「マンガの神様」も真似できない画風
諸星氏の描くマンガは非常に独創的であり、絵柄が流麗なわけではありません。でも、その筆づかいには、他の人には真似できない不思議な味わいが感じられます。恐ろしい闇の世界を描いていても、どこか人間くささやおかしみがにじみ出ています。
諸星氏がデビューを果たしたのは、手塚治虫氏が創刊したマンガ誌「COM」でした。さらに1974年にはSF短編マンガ「生物都市」で集英社主催の「手塚治虫賞」を受賞し、同年に『妖怪ハンター』を「週刊少年ジャンプ」で連載スタートすることになります。諸星氏を見出した手塚氏ですが、「あの絵だけは真似することができない」と語ったそうです。
「マンガの神様」でも真似できないほど、独特な画風が諸星氏の大きな特徴です。アシスタントに来てもらっても、鉛筆で描いた下絵を消しゴムで消すかベタ塗りくらいしか手伝ってもらうことがないそうです。
SFマンガを得意とする人気漫画家・高橋留美子さんも、諸星ファンとして有名です。『うる星やつら』の主人公・諸星あたるの姓は、諸星大二郎氏にあやかったものだそうです。
2008年に開催された「高橋留美子展」では、特別企画「my Lum」として他の漫画家たちの絵とともに、諸星氏が描き下ろしたラムちゃんのカラーイラストも展示されていました。オリジナルとはまるで似てない諸星流ラムちゃんでしたが、セクシーでいたずら好きそうな魅力的なキャラクターとして異彩を放っていました。
■多くのクリエイターたちを触発する諸星作品
諸星作品の面白さは独特なタッチの絵に加え、その奇想ぶりにあります。日常生活と異世界とが隣り合わせとなった短編集『ぼくとフリオと校庭で』、カオカオ様と呼ばれる巨人が現れる幻想紀行「遠い国から」を収録した『夢の木の下で』など、一度読むと諸星ワールドの虜になってしまいます。
アニメ界でも、諸星ワールドは非常にリスペクトされています。なかでも庵野秀明監督のSFアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』 は、諸星氏の代表作のひとつである『暗黒神話』や『ぼくとフリオと校庭で』に収録された「影の街」などに強い影響を受けていると言われています。
宮崎駿監督も、諸星作品の大ファンだそうです。宮崎監督の『風の谷のナウシカ』(1984年)や『もののけ姫』(1997年)が大好きな人なら、諸星氏の描く伝奇ファンタジーの世界にもきっとハマるのではないでしょうか。
■堺雅人さん主演で映画化された作品も
映像界にも諸星ファンは多く、これまでに諸星作品は何度か実写化されています。塚本晋也監督の『ヒルコ 妖怪ハンター』(1991年)では、沢田研二さんが異端の考古学者・稗田礼二郎を演じています。『妖怪ハンター』の人気エピソード「生命の木」は、阿部寛さん主演映画『奇談』(2005年)となっています。堺雅人さんが主演した映画『壁男』(2007年)、南沢奈央さんと前田敦子さんが共演した連続TVドラマ『栞と紙魚子の怪奇事件簿』(日本テレビ系)などもあります。
アニメ化されたオリジナルビデオ映画『暗黒神話』(1990年)もありますが、まだまだ映像化されていない諸星作品が多いのが実情です。『諸怪志異』や「徐福伝説」など、諸星作品のユニークな世界観を生かした本格的な映像作品が、いつか登場する日が訪れればいいなと思います。
2020年は諸星氏のデビュー50周年になることから、「諸星大二郎展 異界への扉」が11月21日(土)から北海道立近代美術館をはじめ、各地で巡回開催されます。「栞と紙魚子」シリーズの舞台となった井の頭町に近い、東京都三鷹市美術ギャラリーでは2021年8月~10月に開催予定となっています。
諸星作品のページをめくると、今まで知らなかった異世界のなかに迷い込んでしまったようなドキドキハラハラ感を楽しむことができます。ぜひ、この機会に異界の扉を開けてみてください。
(長野辰次)
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