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『鬼滅の刃』と子供たち…アニメ関係者はどう見る?思い起こされる「あの少年ジャンプ」

マグミクス / 2020年11月17日 11時50分

『鬼滅の刃』と子供たち…アニメ関係者はどう見る?思い起こされる「あの少年ジャンプ」

■今までにない異質な「子供たちからの支持」

『鬼滅の刃』がなぜ社会現象と言えるほどの人気を呼んでいるのか? さまざまな要因がからみ合っていますので、明確な答えは誰にも出せないでしょう。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のメガヒットに新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているというのは、一面的には正しいはずです。

 ハリウッド作品をはじめとした有力な新作映画の供給停止と観客自体の減少、そして利益率の高い飲食物の販売制限によって苦しむ興行側が、ここぞとばかりに多くのスクリーンを開けて上映回数も限界まで増やしたことが、当初の興行成績を押し上げ、その数字がさらなる話題を呼ぶ形になりました。

 ただ、興行側は必ず着席率(映画館の席数に対してどれだけのお客さんが座っているか)を見て、今後の上映館数や上映回数を判断します。極端に単純化した計算ですが、仮にふたつの上映館で同じ作品をかけていて平均着席率が50%だとすると、その作品を上映するのは1館に減らし、空いたもう1館では着席率50%以上を見込める別の作品をかけた方が、映画館側の儲けになる可能性が高いわけです。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』については、この着席率についても、今のところ非常に高い数字を維持したまま推移しています。したがって、仮にコロナ禍がなかったとしても、上映自体はいずれにせよロングランになるでしょうから、長期的には現状とさほど変わらない高い興行収入を叩き出していたと思われます。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』について、本当にスゴイと思うのは2点です。ひとつ目は、TVシリーズの続きのストーリーのうえ、コミックスを読んでいれば結末は分かるにも関わらず、そんなことはお構いなしにお客さんが来て熱狂していること。ふたつ目は、子供たちから絶大な支持を集めていることです。

 特に後者については、「子供がリアルタイムに視聴する放送枠で」「長期間アニメを流して作品に親しんでもらい」「オモチャで展開を拡大することで」人気作として根付かせる……という今までにあった(いわゆる子供向けアニメの)黄金パターンの要素が、見事にひとつも当てはまっていません。それだけ、ダイレクトに子供たちの心に届く魅力が作品にあるということなのでしょう。

■今の時代だからこそ輝く「あの少年ジャンプ」の志

 思い出されるのは、「あの少年ジャンプ」のことです。2011年の東日本大震災発生直後、東北地方では生活物資はもちろん娯楽関係の流通も完全にストップし、避難所の子供たちは携帯電話もろくに使えぬまま、テレビで流れる被災の様子を延々と見続けさせられるという苦境に追いやられていました。

 そんななか、仙台の小さな書店が、県外から訪れた人から1冊の「週刊少年ジャンプ」の最新号を譲り受けます。その2011年3月19日発売の16号は、無償で貸し出されるやボロボロになるまで回し読みされ、困難に立ち向かう子供をマンガの力で大いに勇気づけたのでした。

「あの少年ジャンプ」は、2012年4月12日に発表された第16回手塚治虫文化賞で特別賞を受賞。マンガの作り手としての志を象徴するものとして、発行元である集英社に今も大切に保管されているそうです。「俺たちはこういうふうに読まれるものを作っている、そして、こういうふうに読まれるものこそ作るべきなのだ」と。

 この志が原作にあったからこそ、『鬼滅の刃』のアニメはここまでヒットしたのかもしれません。

 アニメ視聴のためのファーストウインドウ(最初に使うツール)がテレビであろうがネットであろうが、作品人気の広がっていく本質的な要因は、近しい人同士の口コミであることに変わりはありません。そして、子供たちの間ですら、アニメ視聴のファーストウインドウがテレビからネットに移行した現状を、ポジティブにとらえることだって可能です

 テレビ放送枠や放送期間の長短やオモチャ展開の有無に関わらず、志が高く面白い作品であれば、どんなものであっても子供たちの人気も集められる時代になったのです。テレビシリーズの製作や今回の劇場版の共同配給として参加しているアニプレックスが、早い段階から『鬼滅の刃』の原作に目をつけていたのは、「少年ジャンプ作品らしい面白さと、それにとどまらない人間ドラマに惹かれたから」という話もあります。

 マーケティングを駆使したヒット要因の分析や、ビジネススキームのトレースは、もちろん重要です。しかし、業界の片隅にいる私のような人間や、檜舞台で活躍されている方も含め、ものづくりに携わる人間が真に見習わなければならないのは、数字を追いかけるあまり見失いがちになってしまう、「作品の面白さ」そのものを追求する情熱なのかもしれません。

 そして『鬼滅の刃』をメガヒットに導いた情熱の根源には、やはり「あの少年ジャンプ」があるように思うのです。

(おふとん犬)

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