GBA『スパロボ オリジナルジェネレーション』シリーズ史に残る“新路線”とは?
マグミクス / 2020年11月22日 17時10分
■『スパロボOG』がシリーズに新たな風
2021年でシリーズ生誕30周年を迎える「スーパーロボット大戦」(以下、スパロボ)は、ロボット好きのユーザーにとって夢のようなシミュレーションゲームです。『機動戦士ガンダム』に『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』などなど、数多のロボットが作品の垣根を越えて共同戦線を作り上げる。参戦作品こそタイトルごとに違いますが、ゲームボーイ用ソフトからスマートフォンアプリ版にいたるまで、シリーズに通底するコンセプトは元号をまたいだ今もなお変わっていません。
しかし2000年代前半になると、「スパロボ」シリーズに新たな風を吹き込む1本が誕生します。それが2002年11月22日に発売されたゲームボーイアドバンス(以下、GBA)用ソフト、『スーパーロボット大戦 ORIGINAL GENERATION(オリジナルジェネレーション)』(以下、スパロボOG)です。
当時の携帯ゲーム機向け「スパロボ」シリーズと言えば、ワンダースワン用ソフト『スーパーロボット大戦COMPACT』(COMPACT2含む)をはじめ、GBA向けにリリースされていた『スーパーロボット大戦A』と『スーパーロボット大戦R』が挙げられます。ところが『スパロボOG』の場合、そのどれとも被らないある特徴を備えていました。というのも本作は、それまでシリーズ全体が版権作品のコラボレーションを押し出していたのに対し、”オリジナルキャラ及びオリジナル機体のコラボレーション”を掲げたからです。
本作の物語は複数の媒体をベースにしているものの、基本となる軸は『第2次スーパーロボット大戦』や『スーパーロボット大戦α』のストーリーラインを採用。異星人の襲来に備えて設立された軍事結社「ディバイン・クルセイダーズ」と地球連邦軍との戦いは、どこか過去タイトルの流れを彷彿とさせます。ただしオリジナルキャラが参戦している都合により、主人公は「リュウセイ・ダテ」(初登場:新スーパーロボット大戦)と「キョウスケ・ナンブ」(初登場:スーパーロボット大戦COMPACT2)のふたりから選ぶ仕様へと変更。ストーリー中盤の一部マップは同一ながらも、選択した主人公によって異なる展開へ移行します。
■GBA用ソフトながらも卓越した戦闘アニメ
版権キャラの影に埋もれがちだった歴代シリーズの主人公が肩を並べ、言葉を交わし、共通の敵に立ち向かう。オリジナルキャラの抜擢によって生まれ変わった物語や掛け合いもさることながら、従来の”携帯ゲーム機用スパロボ”から進化した演出面も注目すべきポイントです。本作はGBA用ソフトという性質上、家庭用ゲーム機版と比べてさまざまな制約があったにも関わらず、戦闘アニメーションが滑らかに動作していました。特に筆者のお気に入り戦闘アニメは、キョウスケの愛機「アルトアイゼン」の”切り札”です。
「これで抜けない装甲はない!」とお決まりのセリフを放つキョウスケに続き、ショルダーに格納されたスクエア・クレイモアを全弾発射するアルトアイゼン。ベアリング弾の命中を見届けつつヒートホーンを直撃させると、右腕のリボルビング・ステークを敵機へ突き刺して天高く杭打ち。そして「ジョーカー……切らせてもらった……!」のキメゼリフを挟み、右腕から弾薬を手際よく排莢……。既に同名の技がプレイステーション2用ソフト『スーパーロボット大戦IMPACT』で実装されていましたが、それでも当時は「GBAのソフトなのにここまで動くのか!」と感心した記憶があります。本作の戦闘アニメを総じて鑑みるに、後に制作されたGBA用ソフト『スーパーロボット大戦D』と比較しても遜色ないクオリティに仕上がっていたように思えます。
戦闘デモの演出面に加え、GBAに合わせた操作方法の改善やインターフェース面の調整も行われました。本作ではゲームバランスを左右する熟練度の獲得条件が分かるようになり、ポイントを消費してパイロットを細かく育成できるようになったのです。こうした要素は本作を飛び出し、後続のシリーズ作品においてもしっかりと受け継がれています。
1本の単発タイトルから産声を上げ、年度を経るごとに新作を重ね、今や大勢のファンを巻き込む人気コンテンツへと成長を遂げたオリジナルシリーズ。その原点となった『スパロボOG』は、シリーズの新路線を打ち出した意欲作として、末永くスパロボ史に残り続けることでしょう。
(龍田優貴)
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