NHK放送のアニメ『子鹿物語』、心揺さぶる悲劇的な結末 もう見ることは難しい…
マグミクス / 2020年11月23日 7時10分
■アニメ『子鹿物語』のあらすじ
1980年代のTVアニメには、土・風・潮の香りが匂いたつ作品がたくさんありました。『ニルスのふしぎな旅』『ふしぎな島のフローネ』など多くの名作が存在し、今では配信やDVDなどで見ることができるようになっています。
しかしなかには、見るのが難しい作品も存在しています。1983年から85年にかけてNHKで放送された『子鹿物語』はその筆頭とも言えるでしょう。本作はアメリカの作家マージョリー・キナン・ローリングス氏が手掛けた、同名の小説を原作として制作されました。
舞台は、1807年のアメリカ・フロリダ州。イギリスとの独立戦争に勝利したアメリカは、ネイティブ・アメリカンの方々を排除しつつ西方、南方に向けて勢力を拡大し、多くの開拓者が生きる術を求めて入植していた時期に当たります。
主人公のジョディは、開拓者の息子として生まれた12歳の少年です。両親と共に大自然のなかで、それほど豊かとはいえませんが、同世代の体の弱い親友フォダウィングと穏やかな日々を過ごしていました。
そんなある日、父親が毒蛇に咬まれる事件が起こります。そのとき父親は応急処置のため手近にいた女鹿を殺して肝臓を引きずり出し、かまれた傷口に押し当てたのです。そのとき女鹿のそばにいたかわいらしい子鹿をジョディが飼うことになり、のちにフラッグと名付けられたのです。
ちなみにフロリダ州は現代でこそディズニー・ワールド・リゾートが存在する観光地ではありますが、今なお獣害は絶えません。2016年には2歳の子供がホテルの前の人工湖に住んでいたワニに水中へと引き込まれて死亡する痛ましい事件も発生しています。開発の進んでいない時代の危険性はどれほどのものだったのか、現代人には想像すら付かない危険に満ちていたのでしょう。『子鹿物語』でも巨大な熊「スルーフット」やオオカミとの、生存を賭けた厳しい戦いがしばしば描写されています。
ジョディと子鹿のフラッグはまるで兄弟のように仲良く暮らしていましたが、フラッグの成長と共に、貴重な食料を食べてしまうなど徐々に一家の生活を圧迫していきます。
■『子鹿物語』は、そして悲劇へ
特に中盤以降に大水害が発生し、ジョディの両親が20年かけて作り上げた家や畑が大きな被害を受けてから、ストーリーは徐々に厳しさを増していくのです。たったひとりのお医者さんは薬を残して姿を消し、フォダウィングのお兄さんは街の製材所に働きに出、フラッグの食害は大きな脅威となっていきます。
最終盤ではフォダウィングのところに遊びに行ったジョディは、親友の釣り竿だけを持ち、いつもふたりで釣りをしていた場所で、たったひとり釣りをすることになります。体が弱い人間にとって、水害で医者を失ったのは致命的だったのでしょう。
さらにジョディには大きな試練が立ちふさがります。かわいがっていたフラッグは大きく成長し、柵を飛び越え畑に侵入するようになってしまったのです。森の奥に置き去りにしても戻ってきてしまうフラッグをなんとかしなければ、一家は飢え死にしてしまいます。
追い詰められた両親が下した決断はフラッグの殺害でした。ジョディのお母さんがフラッグに銃口を向け発砲しますがとどめを刺すことはできず、フラッグは森へと逃げ込みます。
傷ついたままのフラッグをこれ以上苦しめないために、ジョディは銃を手に取りフラッグを追い、とどめを刺します。こうしてジョディは少年時代と決別し、ひとりの開拓者として生きる決意をしたのです。当時、リアルタイムで見ていた筆者は『あらいぐまラスカル』のようになんとかフラッグを森に返して終わるのだと考えていたので、まさかこのような終わり方をするとは想像もしておらず、しばらく呆然としていたのを覚えています。
名作でありながら1995年の再放送を最後に姿を見せていない『子鹿物語』ですが、作中でフォダウィング役を演じる戸田恵子氏が歌うオープニングテーマ「ハロー トゥモロー」は、2008年に発売された『決定盤 NHKみんなのうた』に収録されていたため、今でも聴くことが可能です。厳しい環境のなかでは、人も動物も明日を無事に迎えられるか分からない。しかしそれでも明日にたどり着くために全力で生きている。そんな切ない思いが刻まれた名曲です。もし機会があれば、一度聴いてみてはいかがでしょうか。戸田氏の澄んだ歌声が、あなたの心を癒やしてくれるでしょう。
(早川清一朗)
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