ゲーム版『仮面ライダーカブト』良い意味で期待を裏切られる「おばあちゃんが言っていた」
マグミクス / 2020年11月30日 16時40分
■良い意味で期待を裏切る『仮面ライダーカブト』のゲーム版
「おばあちゃんが言っていた……まずい飯屋と悪の栄えた試しはない」。
こちらは本当に筆者が祖母から教わったもの……ではなく、2006年1月から2007年1月まで放送された特撮番組『仮面ライダーカブト』の主人公、「天道総司」(演:水嶋ヒロ)が口にした名ゼリフです。上記のような発言は作中で何度も登場し、まとめて”天道語録”と称されるほど人気を博しました。当時リアルタイムで番組にのめり込んでいたせいか、放送終了から13年経った今もなお、筆者の脳内では数多くの天道語録がスペースを占有しています。
そんな『仮面ライダーカブト』がスタートから10か月ほど経過した頃。具体的に言えば、第42話「最凶vs最恐」が放映された4日後の2006年11月30日、同名タイトルのゲームソフトがPlayStation2(以下、PS2)向けに発売されました。いわゆる”キャラクターゲーム”というものですが、こうした商品は「テレビ本編と同じライダーが使える」、「テレビ本編を意識したストーリーモードで物語を体験できる」(以下、ライダーゲーム)といった点をウリにしていたように思います。
しかし当時の筆者は、『仮面ライダーカブト』のゲーム版が発売されると知っていても、あまり好感を持つことが出来ませんでした。理由は非常にシンプル。直近でリリース済みのライダーゲーム、特にPS2向けの作品は”お世辞にも完成度が高いとは言えなかった”からです。例えば「ストーリーモードが未実装」、「少なすぎるプレイアブルキャラクター」、「貧弱な戦闘システム」、「対戦時の駆け引きが皆無」等々、各所で作り込みの甘さが目立っており、小学生のユーザーが遊んでも「あれ?」と疑いたくなる出来栄えでした。テレビ本編に親しんでいただけに、ゲーム版を遊んで何だかむなしくなってしまう。そういった出来事が何度か起こり、次第にライダーゲームをどこか敬遠するようになっていました。
ところが『仮面ライダーカブト』のゲーム版には良い意味で期待を裏切られました。天道総司が雰囲気たっぷりに読み上げる”ゲーム開始前の注意書き”に驚かされたのは言わずもがな、実際の内容もそれまでのライダーゲームよりひとつ抜きん出たクオリティを誇っていたのです。
■本編未登場のライダーもそろった豊富な参戦キャラクター
細部が異なるとは言え、ライダーゲームにおける共通点と言えば「『ストリートファイター』のような対戦格闘アクション」が挙げられます。一方『仮面ライダーカブト』は、3Dアクションゲーム風の戦闘システムを採用。範囲の定まったフィールドを自由に動き回り、味方チームと敵チームが入り乱れながら戦いを繰り広げます。また『仮面ライダーカブト』の顔とも言える”クロックアップ”も取り入れられ、「フィールドを駆け巡って一方的に連撃を叩き込む」という風に、テレビ本編さながらの戦い方も行えるように。そのほか、ボタン入力とアナログスティックの倒し方で派生する攻撃アクションや技の組み合わせによる多彩なコンボなど、直近のライダーゲームと比べて明らかに戦闘システムが改善されていました。
なかでも目を見張るのは豊富な参戦キャラクター陣。天道総司が変身する「カブト」をはじめ、「ガタック」や「サソード」、「ドレイク」、「ダークカブト」など、キャストオフ可能な者やライダーフォームのみの者、敵である「ワーム」も含めて20体近くのライダー&怪人を操作できます。テレビ本編の後半に現れた人気キャラ「カッシスワーム」は残念ながら参戦していないものの、『劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE』のゲストライダー3体はしっかり収録済み。そして驚くべきは、テレビ本編に現れない「ガタック ハイパーフォーム」まで参戦を果たしている点。レギュラーメンバーは当然としても、サブレギュラーや主力怪人、一般戦闘員の「ゼクトルーパーシャドウ」、ワームが成体へ羽化する前の「サナギ体」、本編未登場ライダーに複数の装着者が存在する「ザビー」(矢車/加賀美/影山)のバリエーション違いまで抑えた本作のカバー範囲には、ただただ心打たれました。
もちろん、本作は全てを手放しで喜べるほど仕上がっていたわけではありません。難易度設定の粗さをはじめ、一部の技が優遇されすぎている、タッグバトル時の味方AIがお粗末、「バスターモード」の原作再現が不完全、ワームは必殺技が扱えない……。こうして思い返してみるだけでも、やはり不満点は多々挙がります。それでも従来作品を上回る面白さを秘めていたのは事実です。「豊富な原作キャラクター陣を思い通りに動かせる」、「クロックアップ&キャストオフを通して格好いいライダーごっこが楽しめる」、「天道語録の収録をはじめとしたネタ要素の強化」という3点の魅力は時を越えて通用するはず。まさしく「平成一期におけるライダーゲームの名作」と言って過言ではないでしょう。
(龍田優貴)
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