32年前、子供たちが熱狂した「カードダス」誕生の瞬間。店頭では「暗黙のルール」も…
マグミクス / 2020年12月6日 8時20分
■「ビックリマンチョコ」のブームと入れ替わるように登場
いまや誰もが知っているくらい当たり前となったカード販売機「カードダス」。今回はその歴史となつかしい思い出を振り返ってみたいと思います。カードダスが世に出たのは1988年のこと。その名前は当時、話題だったアメダス(地域気象観測所)にあやかって、子供たちの情報源を目指して名付けられたそうです。
最初は10円玉を2枚、合計20円でカードが1枚出てくるという「カードダス20」でした。その後、1991年に100円玉1枚を入れてカードが5枚セットで出てくるという「カードダス100」が登場します。その理由は、両替にかかるコストの軽減などと言われています。さらに、下敷きサイズのカードが1枚出る「ジャンボカードダス」という商品も販売されました。
発表された当時は、まだ「ビックリマンチョコ」をはじめとするお菓子おまけのシールが乱立していて一大ブームを巻き起こしていた真っ最中でした。しかし、アタリであるヘッドが欲しくて何個も買って、おまけのシールだけ抜いてお菓子を捨ててしまう……ということが以前から社会問題となっていました。そのため、公正取引委員会からの指示で、シールの材質価値及び混入率を均一化するという指導を受けたのが、この1988年でした。
このタイミングでリリースされたのがカードダス。それは、シールとカードという違いはあれど、お菓子を買わないで本命の商品が入手できるということで、子供だけでなく親も望んでいたシステムだったと思えます。
また、当時のSDガンダムファンが集めていたガシャポンのシリーズでは、ひとつのカプセルにメイン商品であるふたつの塩ビ人形のほかに、カタログとおまけのシールが封入されていました。
このおまけのシールはSDガンダムの生みの親である横井孝二画伯のイラストで、クスッとさせるひとコママンガのようなテイストが人気でした。このシールのほうをメインにコレクションしていた人もいたほどです。
つまり、カードダスの販売は、このSDガンダムのイラスト目当ての層も取り込んでいきました。そして、材質を変えたビックリマンチョコのシールと入れ替わる形で登場したカードダスのプリズムは、子供たちにとって新しくも望んでいた「キラ」だったというわけです。
■子供たちがカードダスに集まった理由
「データカードダス スーパー戦隊バトル ダイスオー」。カードからデータを読み込んで遊ぶことができる「データカードダス」で初となる、スーパー戦隊シリーズで、『ゴレンジャー』などの昭和戦隊から平成戦隊の『シンケンジャー』までの作品が競演した(画像:バンダイ)
こうして最初からラインナップされた『SDガンダム』は、メイン商品としてブームをけん引していきます。このヒットは「コミックボンボン」でのタイアップも要因でした。
そして、遅れて登場した『ドラゴンボール』が『ドラゴンボールZ』に変わるころ、売れ行きは『SDガンダム』と肩を並べるほどのヒット商品となります。その勢いは「ブイジャンプ(現在のVジャンプ)」創刊の後押しになりました。この2作品の人気から、カードダス自販機はその名の由来通り、子供たちの集まる場所となっていきます。
子供たちが集まる理由はほかにもありました。それは、アタリであるキラを待っていたからです。
補充されるカードを見た人は知っていると思いますが、カードは200枚単位でパッケージされていました。その中でキラは10枚。ほぼ均等に入っています。つまり20回も回せば出るという確率でした。
つまり子供たちは、キラが出るか確認してチャンスを狙うという側面があったのです。筆者の地域では「ハゲタカ」と言われていました(笑)。しかし、必ず20枚で出るというわけではありません。別のパッケージとの間では30~40枚くらい間が空くこともあったからです。これを筆者の地域では「谷間」と言われていました。
あと、暗黙のルールも地域ごとにあります。筆者の地域では、お金がある限りカードを引き続けることができますが、なくなって両替するまで待つというのは禁止でした。そのため、他者のお金切れを待つハゲタカさんたちが後を絶たないというわけです。これはどこでも同じようだったみたいですね。
たまにこの法則を壊すため、入れる前にカードをシャッフルする店舗がありました。しかし、子供たちには不評で、他の店舗を優先して回ることになります。
論外だったのは、アタリのキラを抜いて販売していた店舗です。ぜんぜんキラが出ないので不思議がっていると、店頭でキラを売っていたことがありました。
後にトレーディングカードブームの際にはブランド名として「カードダスマスターズ」と名付けられてトレーディングカードが販売されるなど、カードダスはバンダイのブランド名のひとつになります。
現在ではアーケードゲームと一体となった「データカードダス」が主流ですが、一方、昔ながらのカードダス自販機も健在で、たまに昔を思い出して買ってしまうこともあります。
あのダイヤルを回す時のカチカチという音が、たまらなくなつかしく思うことはありませんか?
(加々美利治)
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