登場から30年の『ガンダム0083』 重厚なメカ描写とリアルなドラマで、今も視聴者を魅了
マグミクス / 2020年12月16日 7時10分
![登場から30年の『ガンダム0083』 重厚なメカ描写とリアルなドラマで、今も視聴者を魅了](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_41831_0-small.jpg)
■それまでになかった重厚なメカ描写がファンの心をつかんだ
1990年12月16日。翌年の3月16日に劇場公開される『機動戦士ガンダムF91』の前売り券特典として、「G×G UNIT(ダブルジー ユニット)」というVHSテープが付属されたバージョンが発売されます。その内容は、OVAとして発売される『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(以下0083)の第1話が収録されていました。
ちなみに特典には低学年向けに「BB戦士ガンダムF91」が付属されたバージョンもあります。ともに後に販売された商品とは異なる仕様です。
この「第1話をプロモーションにする」という戦略が成功したのか、『0083』は当時から注目されました。オリコンランキングのビデオソフト、LD(レーザーディスク)、DVDの部門それぞれで1位を獲得し、トータルでのオリコン1位獲得数はガンダムシリーズでもっとも多いものとなっています。
とはいえ、作品そのものに魅力がなければこれほどの人気を得ることはできません。『0083』の魅力はどこにあるのでしょうか?
人によって、それぞれ魅力に思う部分は異なると思いますが、筆者が最初にひかれた部分は「メカ描写」です。OVAならではの作画レベルの高さ、兵器としての部分を強調しながらも、ロボットアニメ特有の見せる部分をしっかり描く演出など、30年前に作られたとは思えないほどの濃厚なテイスト、リアリティさを感じました。
また、作画レベルの高さの理由のひとつは、OVA制作中に総集編として劇場版製作が決まったことで、劇場の大画面に見合うクオリティを維持することになったからです。そして、現在ではver.Kaなどでガンダム作品の一大ブランドを生んだカトキハジメさんが、初めて本格的に参加したアニメ作品であるということでも有名です。
ザクやジムなど、それまでのモビルスーツをより重厚にデザインリメイクしたことが、本作品の魅力のひとつになったことは間違いありません。さらに、後半の主役機体であるガンダム試作3号機デンドロビウムは、それまでのリメイクされたモビルスーツにはない新しいデザインコンセプトが話題となりました。このオーキスとの合体という新しいコンセプトは、後のガンダム作品でもリファイン、オマージュされることになります。
また、メカ考証もしっかりしていました。後年の宇宙世紀に登場するモビルスーツより高性能なガンダムは、「本作品の最後で登録抹消されるため、一種のミッシングリンクとなった」という設定など、秀逸なものが多くあります。
■勧善懲悪でない現実感のあるドラマと、魅力的なキャラたち
「機動戦士ガンダム 0083 STARDUST MEMORY vol.3」DVD(バンダイビジュアル)。ジャケットに描かれるのはアナベル・ガトーとコウ・ウラキ、二ナ・パープルトン
作品的な魅力といえば、ガンダム作品共通の善悪二元論とは違った対立構図が、より強調された点でしょうか。
『0083』でも主役側は地球連邦軍、敵役としてジオン軍(デラーズ・フリート)が対立します。しかし、連邦軍だから正しいわけでなく、その盤石な体制に安穏として危機意識の足りない無能ぶりを終始見せています。さらに、己の利権のために敵と内通し、多くの命を犠牲にする行動を取る者もいました。作品中のセリフにもある「腐った連邦」という言葉通りです。
逆にジオン側は大儀や理想に殉じる潔さが描かれ、それまでの敵役にはない共感できる部分が演出されていました。ただし、自分の掲げる大儀のためにはどんな犠牲もいとわないという負の部分も描かれ、その行動をすべて支持できません。
「勝利者などいない」
前半オープニングの、この歌詞が作品の本質を物語っています。
それゆえラストはハッピーエンドとはいいがたいビターなテイストでした。納得できない歴史の1ページ。宇宙世紀の流れとしては、次の年代となる『機動戦士Zガンダム』での物語があるからこその結末です。その現実のような理不尽さに心ひかれるのかもしれません。
このほか、メカやドラマだけでなく、キャラにも魅力がありました。
『0083』で一番人気のキャラといえば、やはり「ソロモンの悪夢」アナベル・ガトーでしょう。まさしく武人といった行動と言動を多くのファンが支持しています。その人気はガンダムシリーズ全体で見ても高く、NHKで放送した『全ガンダム大投票』のキャラ部門では8位にランクインしていました。
常に暗躍していたイメージのシーマ・ガラハウですが、ファンが多いことで知られています。CDドラマなどで語られていた悲しい過去に魅力を感じる人も多いからでしょう。
ガトーの陰になってしまった感のある主人公のコウ・ウラキですが、その成長度はガンダム歴代主人公の中でもひけを取りません。立派に主人公しています。それにニンジン嫌いがネタにされるところが可愛いと思いませんか?
ほかにもバニング大尉たち「不死身の第四小隊」メンバーやシナプス艦長たちアルビオンクルー、デラーズ・フリートの面々など魅力的なキャラが多数いました。さまざまなキャラがひしめき合うリアルな人間ドラマを描く部分が、本作品の魅力のひとつになったことは間違いありません。
しかし、筆者の一押しヒロインの二ナ・パープルトンは、昔から悪評ばかりで悲しい思いをしています。
(加々美利治)
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